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コロナ禍で、脳卒中患者さん、減ってるような気がしていましたが、これ、私だけが思っていたわけじゃないようです。

5月から6月、脳卒中患者さんが少なくて、もうどうしようかと思っていました。 患者さんが少ないことはいいことです。 しかし、発症した患者さんがちゃんと搬送されていないのではないか? このままだと、患者さんもそうですが、研修医や臨床実習の学生にも良くないなぁ などと思っていました。 他の脳卒中を診療する病院ではどうなんだろう。。。 これ、世界目線でも見てみると、 やっぱり、減っている! らしいんです。 アメリカオハイオ州北西部の患者データで、 緊急事態宣言が出てから、 脳卒中患者さんも、脳卒中telemedicineも、tPAも 有意に減少していました(脳血栓回収術は有意差なし。) Uchino et al. Stroke 2020 Decline in Stroke Presentations During COVID-19 Surge 内野先生は、私のクリーブランドクリニック留学時の上司です。 長くアメリカにいるので、アメリカ人気質と日本人気質を両方持つ、尊敬する人です。 Uchino et al. Stroke 2020改変 これは、オハイオ州だけではなく、ブラジルでもドイツでも同様の報告がなされています。 Diegoli et al. Stroke 2020 Decrease in Hospital Admissions for Transient Ischemic Attack, Mild, and Moderate Stroke During the COVID-19 Era Hoyer et al. Stroke 2020 Acute Stroke in Times of the COVID-19 Pandemic A Multicenter Study 感染を恐れ、軽症脳梗塞が受診していない可能性が考えられています。 Social distancingやStay-at-home、Telework が脳卒中の発症率を減らしていたりして、、、。 そんなことは、ない、とは思いますが、、、。 SARSやMERSのときも同じように脳卒中の減少傾向があったそうです。 しばらく、COVID-19問題は続きます。 患者さんの来院は増えるのだろうか。 今は、デスクワークや、未来に備える地道な仕事をしっかりこなしておこう。

COVID-19パンデミック状態での脳卒中急性期ケア

当院は西の果てにあり、2020年4月5日現在、コロナウイルス感染が問題となっていることはあまりありません。 しかしながら、小さな問題はちょこちょこあったりして、 嵐の前の静けさ 感が強いです。 関東、関西、では脳卒中ケアをどうしていくか、目前に迫った問題として、たくさんの脳卒中専門医がメーリングリスト内で情報共有を行っています。 そのおかげで、この西の果てでも前もって準備しなくては。 という気持ちになっています。 そんな中、Stroke誌から、COVID-10パンデミック状態における急性期脳卒中ケアにおける指針が発表されました。 Protected Code Stroke. Khosravani et al. Stroke 2019;51:00-00. Protected CODE STROKE (PCS) とネーミング 大切なことをまとめると、以下のようになると思います。 (1) 来院前に救急隊や転送してくる病院から、発熱などの情報を得ておく。 ここが一番大切!!と繰り返し強調しています。 (2) PCS対応患者とわかれば、個人防護服 (PPE)。エアロゾル発生の可能性があれば、さらにN95マスク。PPE後に患者にsurgical maskをつける。 (3) FiO2<0.5状態はできるだけ早めに気管挿管。移動前に集中治療医や救急救命医に呼吸管理を相談。 (4)  慌てない 。ウイルスを撒き散らさないために。 -- 必要ならば救命室への搬入はゆっくり。 -- PPEの脱いだり着たりは他の人にチェックしてもらう(チェックリスト利用) -- PPEの脱いだり着たりは練習しておく。 -- 他病院のものを持ち込まない。 PCS適応になる患者は?--------------------------------------------------- 大きく3つのパターン。 1. 現場から救急搬送される患者で、Infection control screen陽性または、感染流行地域への移動歴あり。 Infection control screen: 発熱, 咳, 胸痛, 呼吸困難, 頭痛, 筋痛, 嘔吐や下痢 2. 他院からの搬送患者で、infection contr...

ヘディングってたしかにガツーンて来る。そして、神経変性疾患になる、かも。

中学、高校とサッカーしてました。 ヘディングが一応武器でした。 背高い方だったし。 ヘディングでボールを跳ね返すとき、 結構「ガツーン」と来ます。 しばらくサッカーしてなくて、久しぶりにサッカーして、そのときになんとはなしにヘディングしたときの衝撃は びびります。 こんなことしてたんだ、俺。 って思うほどです。 私、今、幸せにも健康です。 将来的にも体的には元気だと思います。 でも、頭的には認知症になるかもしれない。 という論文。 The New England Journal of Medicine 元プロサッカー選手の神経変性疾患による死亡率が高い。 スコットランドの元プロサッカー選手7,676人と一般住民23,028人比較 後ろ向きコホート研究 一次エンドポイント:神経変性疾患死亡率 ※神経変性疾患:  原因が明らかでない認知症  アルツハイマー型認知症  アルツハイマー型以外の認知症  運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症など)  パーキンソン病 結論: 中央値18年の追跡で、いわゆる死亡診断書を見直してチェックしています。 すべての死亡は、 元プロサッカー選手 15.4%<一般住民 16.5% プロサッカー選手で、体は健康。 だから、一般人と比べて、70歳までの死亡は少ない。 でも、70歳を超えると、元プロサッカー選手の死亡率が高くなる。 なんでだろう。 死亡診断書に記載された直接死因は、 血管障害による死亡や肺癌死が少ない。 でも、神経変性疾患による死亡は高い。 ここらへんが関係ありそう。 (※ちなみに脳卒中死は差がありませんでした) 死亡診断書に記載された直接死因と、死亡に関連した原因をあわせてみると以下の表のとおりでした。 なんでこんな結果になったのか。 論文内では直接的には表現されていないけど、 次のサブ解析で、その意図は明らか。 ゴールキーパー vs フィールドプレイヤー ヘディングの頻度が大きく違う。 死亡は差はなかったが、 認知症薬処方率が、フィールドプレイヤーで多かった( OR:0.41、9...

リスクを有する心房細動患者へのカテーテルアブレーション。そんなバカな、な結果なのかどうか、CABANA trial

心不全合併心房細動患者へのカテーテルアブレーションは、薬物療法に比べて、死亡または心不全を減らすという結果が、CASTLE-AF試験で得られました。 心不全合併心房細動患者に対するカテーテルアブレーションは有効。しかし脳梗塞の予防効果はまだわかっていない。 リスク低減効果は約40%。 個人的に興味があるのは、脳卒中をやっている身とすれば、アブレーションをすることによって脳塞栓症の発症を抑制できるかどうか、ということになるわけですが、 CASTLE-AF試験では、差は出ませんでした。 アブレーション: 5/179 (3%) vs. 薬物: 11/184 (6%) HR 0.46; 95%CI 0.16-1.33; p=0.15 そもそも脳塞栓症発生数が少なかったことも影響したかもしれません。 今回のCABANA試験 Packer et al. JAMA 2019 Effect of Catheter Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy on Mortality, Stroke, Bleeding, and Cardiac Arrest Among Patients With Atrial Fibrillation The CABANA Randomized Clinical Trial 登録症例数がアブレーション群、薬物治療群それぞれで1000例を超えており、期待が持てます。 更に期待が持てるのは、脳卒中リスクを1つ以上有する65歳以上の患者を登録していることです。 脳卒中リスク: 高血圧、心不全、脳卒中の既往、糖尿病、他の心疾患 んが、結果は微妙な感じになりました。 世界10カ国126病院 非盲検ランダム化試験 2204人の有症候性心房細動患者が登録されました。 ITT解析では、アブレーション1108人 vs 薬物治療1096人 Per-protocol解析では、アブレーション群987人 vs 薬物治療1096人 Primary end point 複合エンドポイント(死亡、重篤な脳卒中、重篤な出血、心停止) Secondary end pointは13項目 1. 全死亡 2. 全死亡 or 心血管病による入院 3. 全死亡, 脳卒中, or 心...

論文がpublishされました。

論文がギルガメッシュされました。 いや、パブリッシュ。 Journal of the Neurological Sciencesへ Pubmedへ 投稿から採択まで、長かった・・・。 major revisionで帰ってきてから、約3ヶ月かかりました。 はっきり言って、私は”粘り勝ち”だと思っています。 4人の査読者からの膨大な質問事項。 査読者の皆さんは「まさか、この膨大な量に対応してくることはないだろう」と思っていたのではないかと、思っています。 そこに対応することで、「人情を動かす」 妄想:査読者A「まさか、この難題に対応してくるとは、感動したぜ。ACCEPT!!」 みたいな。 査読者の感動した顔を妄想しながら、意地でも、頑張りました。 査読していただいた、世界の先生方、 ありがとうございました。 ------------------------ 論文の概要 ほぼ、入院時のデータで脳梗塞患者の90日後の予後を予測することが可能かもしれません。 "DONE score" (最低スコア21.5、最大スコア83) ちょっとややこしいのですが、このtabel 3に従って、計算していきます。 脳梗塞90日後死亡の独立した因子を4個採用しています。 本論文のポイントは、心臓の拡張障害が含まれていることです。 64点以上だと 31%が死亡。 82%が歩けない、寝たきり、死亡。 という結果。 問題点は 単施設のデータであること。 計算がちょっとややこいこと。 脳神経内科、脳神経外科、循環器内科、そして統計解析のお手伝いを頂いた先生方のサポートのおかげです。 また、看護師や放射線技師、リハスタッフ、薬剤師、歯科医師 言ってしまえば、メディカルソーシャルワーカー、救急隊 さらには90日後の予後を評価しているので、回復期リハビ病院や、かかりつけの先生方も、 この1本の論文作成に寄与していただいています。 臨床データの論文って、そんな感じですね。 そして、1208人の患者さんからデータを頂い...

週4時間は体を動かして余暇を楽しもう。脳卒中発症しても症状軽く済みます。

週4時間仕事以外の時間で、体を動かすこと (light physical activity: light PA)と、 もしくは 週2,3時間、ランニング等、少し負荷の強い運動 (moderate physical activity: moderate PA)をすること(もっと負荷のある競技スポーツも含めて)は 脳卒中発症時に軽症であることに関連していた、 という論文。 カウチポテト族やっぱだめだね、という論文。 Reinholdsson et al. Neurology 2018. Prestroke physical activity could influence acute stroke severity (part of PAPSIGOT) light PA 体を動かすことは、そこまで頑張らなくてもOK。 通勤時に自転車使うとか、歩くとか、家族とのウォーキングでも可。 卓球、ボーリングも含めています。 ガーデニングや釣りもOK、って、それもいいのかな。 4時間は結構長いですが。 moderate PA 週2,3時間 ランニング、水泳 テニス、バドミントン(卓球より負荷強いってことですね) そして、ヘビーなガーデニング。 ヘビーなガーデニング? 畑耕す程ってことか? (一番下にスケールの説明を載せています) --- 対象 スウェーデンのSahlgrenska University Hospitalに入院した患者2233人の脳卒中患者を対象とし、後ろ向きに検討しました。 inclusion criteria: 初発の脳卒中、脳卒中ユニットに入室、NIHSS scoreとPAを評価している患者 exclusion criteria: 以前に脳卒中の既往あり、データ不十分。 評価するのは来院時の神経症状(NIHSS score) mild: NIHSS score 0-5 moderate: NIHSS score 6-14 severe: NIHSS score (15-24) very severe: NIHSS score >=25 mild と moderat...

リベンジ、地中海食。脳卒中予防に効いてるぜ!

だいぶブログ休んでました。 他の仕事をしなければならないので、あまりブログに時間をさけない。 世の中の、仕事しながらブログ書いている人というのは、すごい能力があるんだろうなぁ、 と、ものすごく実感として感じています。 時折、 「ブログ見てます」 と声掛けをしてくださる方がいるので、何かしらの影響を及ぼしていると考えるとやめられない。 いつも、「いや、最近書いていないから、恐縮です」って梨本さんばりに返事するというパターンも飽きたので、 今後もブログ続けていきます。 今日は、気になる論文チェック、ということで、始めます。 地中海食の心血管病一次予防効果は? Estruch et al. NEJM 2018. Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts スペインでの多施設共同研究 対象: 7447人(男性55-80歳、女性60-80歳)。 心血管病リスクが高い人(心血管病を起こしていない)  ― 糖尿病あり  or  ― 以下のうち3つ該当  喫煙、高血圧、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、肥満、  若年の虚血性心疾患の家族歴(一等親血縁者。男性: 55歳以下, 女性: 65歳以下) 3群比較 -- エクストラヴァージンオリーブオイル強化地中海食 (オリーブオイル提供あり) -- ナッツ強化地中海食 (ナッツ提供あり) -- 低脂肪食を指導された通常食 (オイルもナッツも提供無いけど、small nonfood giftsあり) 年4回の教育セッション 一次エンドポイント:心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死、全死亡) 2013年にこの研究は一度NEJMに掲載されましたが、 プロトコール逸脱 -- 非無作為化の家族が登録されたこと -- ランダム化する前に登録された人がいたこと -- 11地域中1地域でランダム化がちゃんとされていない地域があったこと があったので、自主的に取り下げられていました。 私もブログしてたんですね。 5年前...

癌関連静脈血栓塞栓症。エドキサバンは悪くない選択肢。(でも本当かなぁ。本当だろうけど)

大学病院で診療していると、癌関連の脳梗塞患者さんを診療させていただくことは比較的多くあります。 癌細胞が血栓形成を誘発する物質を出しているから。 特に静脈血栓が多いことは知られています。 これまで、ヘパリンは有効かもしれない、とされていましたが、明らかなエビデンスではありませんでした。 癌は、 凝固カスケードを開始させる「組織因子(Tissue factor)」を放出したり、 ムチンがL-セレクチンやP-セレクチンと結合して、微小血栓を作ったり、 低酸素が内皮や血小板を活性化したり、 システインプロテアーゼが第Ⅹ因子を活性化したり、 いろいろ、血栓傾向に寄与しています。 ヘパリンは、そのいろいろに作用するので、効く、という理屈。 Varki etal. Blood 2007 Trousseau's syndrome: multiple definitions and multiple mechanisms 抗血小板薬やワルファリンは「いろいろ」には作用しないので、 効かない、という理屈。 海外では低分子ヘパリンの皮下注射 Dalteparin(自己注射)が使われますが、 日本ではDalteparinは保険適応ではないので、仕方がないので バイアスピリンを使ったり、ワルファリンを使ったり、使わなかったり、注射するのにコツ(エア抜き)がいるけどヘパリン皮下注を患者さんが自己注射したり。 このような状況で、 みんな思います。 なんか突破口はないかなぁ。 経口直接抗凝固薬DOAC、どんどん使われてるけど、癌関連静脈血栓塞栓症にはどうなんだろ。 理屈では効かないけど・・・。 経口直接抗凝固薬DOACが、幅を利かせて、5年強。 非弁膜症性心房細動の塞栓症予防や、静脈血栓塞栓症、心房細動合併冠動脈形成術後の塞栓症予防など、徐々に適応を広げて来ましたが、 今回は、さすがに だめじゃないかなぁ、と個人的には思っていました。 だって、DOACはちょーピンポイントに作用する薬だから。 ダビガトランは第Ⅱ因子にピンポイント リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンは第Ⅹ因子にピンポイント (ピンポイントっていっぱい書いていると、ルー大柴さんの植毛のCMを思い出しました) 癌による血栓...

心不全合併心房細動患者に対するカテーテルアブレーションは有効。しかし脳梗塞の予防効果はまだわかっていない。

循環器専門ではないので、正確にはわかりませんが、この5年ぐらいで心房細動に対するカテーテルアブレーションの適応が広がり、治療を受けている患者も増えているなぁという印象を身近に感じています。 心房細動を有する患者の問題の一つは脳梗塞。 なので、カテーテルアブレーションの有効性に大いに興味があります。 脳梗塞予防効果はあるのか? しかし、その問いに対する答えはまだありません。 Marrouche et al. NEJM 2018 Catheter Ablation for Atrial Fibrillation with Heart Failure 今回は 心不全を有する心房細動患者にカテーテルアブレーションをすることは、「実際に」いいことかどうか? を調べた論文です。 いままで、「実際に」いい、という結果を出した検討はありませんでした。 たぶんよかろうもん、 という風には思っていたのだろうとは思いますが。 CASTLE-AF試験。 多施設、非盲検、ランダム化比較試験 ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの33施設。 対象は、心不全を有する心房細動患者。 363人(アブレーション群179人、薬物療法群184人) left ventricular ejection fraction (LVEF)<35% 。 LVEFの中央値は32%ぐらい。 かなり心臓の動きが悪い人が対象になっています。 観察期間は60カ月(中央値は37.6±20.4カ月) primary end point: 死亡または心不全入院 約40%のリスク低減効果! これは、特筆に値する結果です。 今後は、LVEF<35%で心房細動がある人には積極的にカテーテルアブレーションが行われていくのでしょう。 現在、心不全を合併していない心房細動患者の予後を検討する研究が遂行中です。 では脳塞栓症はどうだったかというと その予防効果における有効性を示すことが出来ませんでした。 (「脳血管障害 (Cerebrovascular accident)」とありますが、出血はなかったようです(supplementary appendixより)) 差が出なかったのは、サンプルサイズが小さく脳梗塞の発症率が低...

NGK48論文。掲載されました。

NGK48の期間はそれ以前の期間(pre-NGK48) と比べて、来院から治療開始までの時間が短縮 56分 vs. 48分、p<0.001 図ったように48分。 怪しいデータにみえてしまいますが、 真実ですので。 N urse of emergency department G uides stro K e team to early thrombolytic treatment within 48 hours: NGK 48 study という研究名。 ONYANKO studyだと、ちょっと違う。 医師と看護師の協同とStroke Code の導入が来院からtPA 静注療法開始時間を短縮する可能性がある 名付けておきながら、毎度、毎度、講演や学会などでこの名前を言うときには、恥ずかしさで 妙に早口になったり、 「いや、キャッチーな名前のほうが、看護師だけでなく、検査技師さんとかが気にしてくれるので・・・」 などと言い訳がましくなったりします。 英語の論文で投稿すると、よっぽど日本のポップカルチャーに詳しい人が査読してくれない限り、 「なんで48分やねん」 って、突っ込まれる可能性が高いので、 日本語で書きました。 この度、脳卒中2018年1月号(48巻1号)に掲載をいただきました。 査読してくださった先生、ありがとうございました。 ・・・、それでも、NGK (長崎空港の空港コードと一緒)と 48分って言う絶妙な時間、 気に入っています。 研究テーマはtPA静注療法の来院から治療開始までの時間短縮を目指す研究です。 ポイントは、救急外来の看護師が、tPA静注療法適応の可能性がある患者の診療に大きく関わることです。 具体的には、看護師の中で勉強会をしたり、看護師が脳神経内科医や脳神経外科医、また放射線技師と勉強会をしたりして、前準備しました。 研究期間においては、 実際の診療の現場で、これまで医師がやっていた仕事(MRI検査室に連絡し、時間調整をする。tPAの投与量を計算し、開始する)を能動的に行うようにしてもらいました。 特に重要視したのは、「時間を意識すること」です。 それを看護師に伝えると、いつの間にか、 来院時間をチェックし、「来院後、5分で画像検査のた...

穴があったら塞ぎたくなる。卵円孔開存の話。

これまで、 「穴(卵円孔開存)があるけど、塞ぐ方法は、全身麻酔で心臓をあけることになるから、薬の継続ですね」 ということで、 脳梗塞患者で、かつ、他の明らかな原因 (心房細動や動脈狭窄など) がないとき、 1) 卵円孔開存あり、かつ、静脈血栓なし ならば、基本的に、抗血小板薬(バイアスピリンなど) 2) 卵円孔開存あり、かつ、静脈血栓あり ならば、基本的に、抗凝固薬(ワルファリンなど) でした。 「基本的に」としたのは例外もあるので。 1)の場合で、若年だったり、大きな卵円孔開存だったりしたときに抗凝固薬を使う 2)の場合、再発性ならば、開胸術で卵円孔開存を閉じる というようなこともあります。 私は、お二人の患者さんで、心臓血管外科にお願いし、開胸による卵円孔開存閉鎖術をしていただきました。 今回は、2017年9月13日のNew England Journal of Medicineで3つの卵円孔開存閉鎖術の効果を検討した論文が掲載されたので読んでみます。 2013年に私が読んだ論文をがあり、その他にもこれまで2つ、卵円孔開存閉鎖術の有効性を検討した論文があります。 卵円孔開存閉鎖の有効性.基本的には”questionable”ですが・・・ 2013.04.03 基本的には ”限定的には有効” という内容であったと認識しています。 今回の3つの論文は、これまでの論文の弱い点を補ったところがポイントだと思います。 1つは、「経過観察をより長期間にした」ということ。 もう1つは、Mas先生の論文のように、リスクが高いことが予想される「大きな卵円孔開存や心房中隔瘤の患者のみを登録した」ということ。 Mas et al. Patent Foramen Ovale Closure or Anticoagulation vs. Antiplatelets after Stroke NEJM 2017 Mas先生が主著 フランス32施設。ドイツ2施設。 対象は 脳硬塞があり、 かつ 「大きな卵円孔開存」 、もしくは 「卵円孔開存+心房中隔瘤」 のある患者を登録。 これがポイントです。 ※大きな卵円孔開存:バルサルバ負荷解除後、3心拍内で、左房内にbubbleが30個以上み...

to drip tPA, or not to drip tPA, それが問題だ

脳血栓回収術の前にtPA静注療法をすべきか、すべきでないか。 現在のところ、そのデータは無いので、 「tPA静注療法の適応が有るならば、する」 ということになっています。 本当に必要でしょうか? 現状では、 「(まだ)わからない」 将来的にはランダム化試験が必要になります。 MT + IVT vs. MT alone ※1 MT, mechanical thrombectomy (機械的血栓回収術) ※2 IVT, IV thrombolysis (tPA静注療法) 現在はメタ解析の段階です。 メタ解析2論文。 その結果、 「(それも、まだ)わからない」 Stroke誌の結果は -- MT + IVTに軍配。 JAMA neurology誌の結果は、 -- MT alone に軍配。 で、現時点での臨床現場での方針は、 「これまで通りtPA静注療法をやって血栓回収術へ。将来的にはランダム化試験の結果を待ちましょう」 と、いつも通りの流れ。 実は、残念ながら、長崎大学はJAMA neurologyが閲覧できない、という寂しい状態。 なので、JAMA neurologyはアブストラクトのみ。 Coutinho et al. JAMA neurol. 2017 Combined Intravenous Thrombolysis and Thrombectomy vs Thrombectomy Alone for Acute Ischemic Stroke A Pooled Analysis of the SWIFT and STAR Studies JAMA Neurologyのメタ解析は SWIFT trial と STAR trialをメタ解析。 ちょっと古め。 MT + IVT 160人 平均年齢67歳 MT alone 131人 平均年齢69歳 全体的に若い。とても。 発症から鼠径穿刺まで、 254 vs 262 min 差なし。 何Pass施行したか、再開通率、90日後自立、90日後死亡 差なし。 症候性頭蓋内出血 1% vs 4 % 差なし 血管攣縮 27% vs 14%, p=0.06 なぜか差あり。MT +...

脳卒中急性期は0°?それとも30°?

Anderson et al. NEJM 2017 Cluster-Randomized, Crossover Trial of Head Positioning in Acute Stroke 脳卒中急性期に、 「何が何でも、頭をあげずに、フラットで安静」にするのは、脳灌流にはいいかもしれないけど、肺炎のリスクは増えるのでは? とは言え、 「頭を上げていい」というと、脳浮腫にはいいかもしれないけど、やっぱり灌流が落ちるのでは? ということで、これまで 考えつつも、エビデンスがなく、 脳梗塞患者入院時の指示で、 「ギャッジアップ〜〜度」を (※ちなみにギャッジアップって英語、ないですから。伝わりませんから。Gatch先生の論文らしいですので、グググってみてください。) 常識の範囲内で、適当に、記載してきました。 しかし、この論文のお陰で、それとも、おさらば! というわけにはいかないのでした。 そんな簡単には行きません。 いや、むしろ、はっきり言って、脳卒中の臨床をやっている医師の疑問には答えきれていない。 脳梗塞85%, 脳出血8%ぐらい、TIA2%ぐらい、脳卒中もどき5%ぐらい。 で、登録した患者を細かく分類していないのでしかたないか。 また、その安静度の持続時間が24時間だけなので、出づらいのでは? 私が、知りたいのは、 脳主幹動脈が閉塞している患者は0°がいい? 重症なら30°がいい? など。 でも、数が多いので、すごくなくはない。 オーストラリア ブラジル 中国 チリ コロンビア インド スリランカ 台湾 イギリス 全体で1000例ぐらい。 クラスターランダム化:「個人」単位でランダム化するのではなく、今回は、「国」単位でランダム化。 さらに、それぞれの国で、前期と後期で、フラット群、30°アップ群をクロスオーバーする方法を取っています。 ---------------------------- ---------------------------- 結果 両群で差なし primary outcome -- 3カ月後の状態(予後, mRSを順序変数として扱う) 0° vs. 30° オッズ比:1.01 (0.92-1...

明日の外来に役立つ脳卒中の話。アメリカ人って、食事のとき、「飲み物は?」って聞かれたら、「diet coke」って言う人多いけど、脳卒中に気をつけてね、っていう話

ダイエットコーラなどの、人工甘味料入りドリンクと 脳卒中 認知症 発症と関連していた。 砂糖入り飲料の摂取とは関連がなかった。 そうです。 Pase et al. Stroke 2017. Sugar- and Artificially Sweetened Beverages and the Risks of Incident Stroke and Dementia: A Prospective Cohort Study 結果は、もちろん 「そうなんだー」 って言う驚きなんですが、 Disccusionで 人工甘味料入りドリンクがなぜ、脳卒中発症や認知症発症に関連するか についてどう考えているか知りたかった。 しかし、 「よくわからない。」 って言う感じでした。 たしかに観察研究だけでは、言えないですよね。 脳卒中発症に関して -- 45歳以上、2,888人(平均62歳) 認知症に関して -- 60歳以上、1,484人(平均69歳) 食品摂取頻度調査票に3項目を加えて調査 (1) total sugary beverages (combining sugar-sweetened soft drinks, fruit juice, and fruit drinks (2)  sugar-sweetened soft drinks (high-sugar carbonated beverages, such as cola (3) artificially sweetened soft drinks (sugar-free carbonated beverages, such as diet cola (3)が人工甘味料入りドリンク (※食品摂取頻度調査票:食べる頻度を7段階、一回の量を6段階にわけて調査。結構多い) 人工甘味料入りドリンク (1単位は、1杯, 1瓶, 1缶のこと) 飲まないをreference (基準)にして、 -- 1単位を週に6回以下 -- 1単位を毎日飲む の脳卒中、認知症のハザード比を調べた。 人工甘味料入りドリンクと脳卒中...

NIHSSスコアの基本を再確認。

※付録 NIHSSスコア NIHSSスコアを作ったLyden先生がNIHSSスコアについて書いています。 NIHSSスコアを評価すると、ときどき、 「これ、何点にすべきですか?」 なんて、看護師や、研修医から聞かれて、 「まぁ、1点と2点の間って感じかな?」 と、ぼかしたり、 「思うとおりに評価していいよ。それが、大切だ!」 と、妙に「お前を信頼しているぜ」感を醸し出したりして、 その場を切り抜けていました。 それも、間違いだとは思いませんが、「もっとスッキリしたい」とみんな思っていたのだと思います。 で、このもやもや感を少しでも解消できるかと思って、 Lyden et al. Stroke. 2017;48:513-519 Using the National Institutes of Health Stroke Scale を読んでみましたが、 基本、NIHSSスコアが作られた歴史 的な話ばかりで、 スッキリせず。 期待がずれていたのは、こっちの問題です。 それでも、2つ再確認出来たことがありました。 NIHSSスコアを評価するときのルール すべての項目で、Score what you see, not what you think (診たものを評価する。検者が考えたものではない) すべての項目で、Score the first response, not the best response, except item 9 best language (最初の反応を評価する。ベストの反応ではない。でも、言語の評価はベストの反応で) すべての項目で、Do not coach (コーチしちゃだめ) 項目1aで、May be assessed casually while taking history (会話している間に評価可能でしょう) 項目2で、Only assess horizontal gaze (水平方向の眼球運動のみ評価) 項目5 and 6で、Count out loud and use your fingers to show the patient your count (声を出して数字をカウントし、患者の前で指を折ってカウントすることもす...

ロートル診療とデジタル診療

7:20 朝カンファランス前の病棟。 デジタル研修医:カタカタカタ(タイピング音)、、、カチッカチッ(クリックの音) ロートル医師「状態イマイチのあの患者さん、どう?昨日と比べて」 デジタル研修医:「えーっ、おしっこは出ていて、血圧も変わりないみたいです。脈は・・・」 ロートル医師:「ちょっとちょっと、患者さん診たの?」 デジタル研修医:「いや、まだです(何か問題?)」 ------------------------- 電子カルテになってから、幾度となく繰り返されるダイアログ。 「患者さんのことを五感で感じて(ときに第六感も使って)、評価しないと、医師としての臨床能力は養えないのになぁ。」 と、研修医と接しながら思いつつ、 「これも時代の流れだし、電子カルテを先に見て、情報を得た上で、診察することも、全く悪いわけではないし・・・」 とも思いながら、 かれこれ10年近く。 診療現場は、変化し続けています。 実は、これって、世界的なことなんです。 私のクリーブランドクリニックのボスも言っていました。 「今のレジデントは守られているから、時間外労働の問題があって、早く帰ったり、呼び出しが全くできなかったりして、大変。昔は、しばらく泊まり込んでたのにね」 変化しているのはアメリカも一緒。 この変化は 良いこと? 悪いこと? 仕方ないこと? 皆さんはどう思われますか? NEJM 2016; 375: 1813-1815 に興味深い寄稿がありました。私の適当な訳なので、著者の意図からずれているところはあると思いますので、その程度の気楽感じで、読んでください。 Meaning and the Nature of Physicians’ Work 一日の仕事時間のうち、40-50%はコンピューターの前にいて、カルテを見たり、オーダーを立てたりしている。 他の時間は、看護師、栄養士、患者家族、他院の先生(※)との電話対応に時間をとられ、face-to-faceの話し合いはほとんどない ※原文:specialists, pharmacists, nutritionists, primary care offices, family members, social worker...

Journal of the Neurological Scienceに論文が掲載されました。

tPA静注療法患者において、発症から1週間後ぐらいの虚血巣体積が、90日後の予後を予測する。 って言う論文が Journal of the Neurological Science に掲載されます。 Tateishi et al. JNS 2016 Subacute lesion volume as a potential prognostic biomarker for acute ischemic stroke after intravenous thrombolysis 来院時の虚血巣体積も重要だけど、最初の数日で、再発したり、虚血巣が増大したりします。 つまり、症状も悪化することがある。 ということで、 『1週間後ぐらいの虚血巣体積が、90日後の予後を予測するのにちょうどいいのでは?」 と考えて、研究してみました。 そうすると、やはり、来院時の虚血巣体積よりも、よく予後を予測していました。 カットオフ値は以下のとおりでした。 90日後mRS 0-1は 15 ml以下 90日後mRS 4-6は 30 ml以上 90日後mRS 6 (死亡)は 100 ml以上 きりがよくて、わかりやすい感じ。 患者説明に使えるかもしれません。 これは、すでに、tPA静注療法を施行した患者に限らず、「脳梗塞患者」で調べている研究があって、 Tourdias et al. AJNR 2011. Final cerebral infarct volume is predictable by MR imaging at 1 week. それをconfirm (確認する)した形になります。 最初は、「自分は新しい発見をした」的な感じに思っていましたが、 査読者から2回査読を受けて、指摘を受けて、納得しました。 よく読んで、ちゃんと査読していただいて感謝です。 勉強になりました。 臨床研究の論文は、まさしく臨床の現場で要られた情報をもとに、書き上げられています。 日々の診療の積み重ねです。 つまり、診療させていただいた患者さん、共著者の先生方、看護師、検査技師、薬剤師MSW、病院事務、救急隊、 すべてのみなさんのおかげです。 臨床論文を書くということは、 自分たちのチーム力を世に示す...

アジア人が多く含まれた脳出血急性期の研究。厳格降圧のエビデンスは出ず。

脳出血超急性期(発症4.5時間以内)患者の降圧療法 通常降圧 (140-179mmHg) vs 厳格降圧 (110-139mmHg) 500例 vs 500例 有益性のなさから早期終了。 両群で有効性に差がなかった。。。。 ◆Trial design ランダム化、多施設、オープンラベル。 降圧療法は、発症から4.5時間以内に治療が開始、24時間までは継続 特発性、テント上 ◆対象: 発症4.5時間以内(当初は3時間以内) 18歳以上 Glasgow Coma Scale >= 5 血腫60cc以下。 ◆除外: ランダム化する前に140mmHg以下に下がった症例 ◆降圧剤 ファーストライン:ニカルジピン静注 セカンドライン:Labetalol (未承認ならばジルチアゼム、Urapidil) ◆画像 来院時と24時間後単純CT(場所、容積、脳室内血腫の有無) ◆評価 1か月後電話。3か月後外来。 3か月後mRS 4 to 6 European Wuality of Life-5 Dimensions (EQ-5D) questionnaire ※safety outcome GCS2以上またはNIHSS score 4以上の悪化。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 結果 アジア人:562人(56.2%) 日本人もたくさん登録されています。 (長崎人はおそらくゼロですが、たぶん、この結果を長崎人に当てはめてもいいでしょう。) 両群間で(通常降圧 vs 厳格降圧)、 来院時の 血圧(200mmHgぐらい) 重症度(NIHSS score 11ぐらい) 脳室内出血の有無(25%ぐらい) など、差はなかった。 結果のまとめ 差なし。 厳格降圧 N=500 通常降圧 N=500 RR (95%CI) P value mRS 4 to 6 186/481  (38.7%) ...