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11月, 2012の投稿を表示しています

生体弁術後のワルファリン.3か月?6か月?それ以上?

生体弁の人が脳梗塞を発症して,あまりこれと言った原因がない人に抗凝固をすべきなのか,時々悩みます. この論文は,大動脈弁の生体弁術(Aortic valve replacement: AVR)後に開始したワルファリンをいつ中止したかで, ”塞栓症”,”出血合併症”,”心血管死” に影響があるか調べています. Longer Warfarin Tx Helps After Biologic Valve 方法 期間は1997年から2009年. デンマークのレジストリーからAVRを施行した4075人を検討しています. 特徴は,術前にワルファリンを内服していた684人と術後30日以内に心房細動が検出された1215人は除外されていること. つまり,心房細動の関与を可能な限り除外していることが,この検討により得られたデータの有意性を高めています. 心房細動があれば,塞栓症のリスクは高まりますので,純粋に生体弁だけのデータではなくなります. よく考えています. ワルファリンをやめた群と比べて, ”30-89日は続けている群” ”90-179日は続けている群” ”180-364日は続けている群” ”365-729日は続けている群” ”730日以降は続けている群” の ”脳卒中リスク”, ”塞栓症リスク” ”心血管死リスク” ”出血合併症リスク” を調べました. 脳卒中は最初の3か月はワルファリン継続群のほうが良かったです (Event rate 7.00(ワルファリン中止群) vs. 2.69(ワルファリン継続群); p=0.03) ですが,それ以降は有効ではなくて,むしろ2年以降まで使っていると,リスクが高まります (Event rate 1.61(ワルファリン中止群) vs. 2.45(ワルファリン継続群); p=0.06) これは出血リスクが高まることを反映しているのかもしれません. 全身塞栓症は6か月までワルファリン継続群が良い結果でした. 30-89日:(Event rate 13.07(ワルファリン中止群) vs. 3.97(ワルファリン継続群); p<0.00

全人工股関節置換術と脳卒中の濃密な関係.

全人工股関節置換術(Total Hip Replacement: THR)を受けた人は,虚血だろうが出血だろうが脳卒中になりやすい. しかも,かなり. 時々,経験しますが,こんなに多いとは思いませんでした. Lalmohamed et al. 2012 Stroke Timing of Stroke in Patients Undergoing Total Hip Replacement and Matched Controls A Nationwide Cohort Study 対象:デンマークで1998年から2007年までにTHRを受けた66,583人 コントロール:199,995人.THRを受けた人1人に対して3人抽出.抽出のルールは”同い年”,”同性”,”同じ地域”ということ. 数,多! THR後2週間以内: 虚血性脳血管障害 26/1000人 vs 5.6/1000人, HR 4.69 (3.12-7.06) 出血性脳血管障害 6.7/1000人 vs 1.6/1000人, HR 4.40 (2.01–9.62) THR後2-6週間: 虚血性脳血管障害 14/1000人 vs 6.2/1000人,HR 2.12 (1.53-2.93) 出血性脳血管障害 3.8/1000人 vs 1.7/1000人,HR 2.16 (1.14–4.06) THR後6-12週間: 虚血性脳血管障害 7.0/1000人 vs 5.7/1000人,HR 1.12 (0.80-1.58) 出血性脳血管障害 4.3/1000人 vs 1.7/1000人,HR 2.17 (1.32–3.57) 2週間以内のリスク高すぎ. 虚血性脳血管障害が増える理由は,完全にはわかっていません. 1:術中低血圧による低灌流. --この手術に特別なことではないので,納得しがたい. 2:marrow embolization(骨髄成分の塞栓) --”右左シャント”があれば可能性はある. 3:右左シャントの関与. --深部静脈血栓か,脂肪か?手術の特徴として,深部静脈血栓が他の手術よりはおきやすいので可能性はある. バイアスピリン内服は,術後6週間の虚血性脳血管障害リスクを70%減らします. バイアスピリン程度で効果

アッピーもEUの表舞台に登場

本日のBreaking news. アピキサバン(apixaban: Eliquis)がEUで承認されました. というニュース. アメリカに続き,EUでダビちゃん,リバ子,アッピー3姉妹がそろい踏み. 日本でもそろそろ. 12月か? アメリカのガイドラインの話は前回,しているので,今回はさらっと. 「 ついに抗凝固3姉妹そろい踏み 」 アピキサバンの研究ARISTOTLE trialの結果で,ダビガトランやリバーロキサバンと違ったのは, ワルファリンに比べて死亡が減るというところ. 全死亡:3.52%/年 vs. 3.94%/年; hazard ratio, 0.89; 95% CI, 0.80 to 0.99; P = 0.047). 血管病死(出血性脳卒中含む):1.80%/年 vs. 2.02%/年(hazard ratio, 0.89; 95% CI, 0.76 to 1.04) 血管病以外による死亡: 1.14%/年 vs. 1.22%/年(hazard ratio, 0.93; 95% CI, 0.77 to 1.13). ダビガトランと同様でリバーロキサバンと違ったのは, ワルファリンよりも優位性を示したこと.(リバーロキサバンはリスクが高い人が多く含まれていることも影響して,非劣性までしか示せなかった) 肝代謝 ということも,ダビガトランやリバーロキサバンと違うところ. 実際の研究では,血清クレアチニン<2.5mg/dl,Ccr<25ml/minは除外され,1.5mg/dl以下は2.5mg1日2回で登録されています.つまり,腎機能を一応考慮したのです(※80歳以上,体重60kg未満も2.5mg). しかし,eGFR =< 50ml/min患者をみてみると,大出血発症率はアピキサバン投与による影響が大きかった.(3.21/年(73例) vs. 6.44/年(142例), HR, 0.50; 98%CI 0.38 - 0.66) 腎機能障害患者にも使いやすい可能性があります. このサブ解析の結果から,高度腎機能低下症例(透析含む)に対するアピキサバンの検討がなされてもいいのかもしれません.

昨晩の研究会

昨晩はダビガトラン会社主催の研究会. 大学病院循環器内科教授前村先生が座長で,講演は脳神経外科教授永田先生. 「心原性脳塞栓症における脳外科の役割」 その後,私は「ワルファリンの問題点」と題して, 虹が丘病院迫先生はダビガトランの使用経験, そして,原爆病院芦澤先生は,患者さんにダビガトランの説明をして,ダビガトラン内服を開始するかワルファリンのままか,それぞれを選択した患者さんの背景を話されました. 自分の話. ワルファリンと相互作用を示す薬.こんなにたくさんあったんですね.すべては知りませんでした. 今回困ったのは,ロスバスタチン(クレストール)かベンズプロマロン(ユリノーム)の影響でPT-INRが急激に上がったこと. 内科医たるもの,薬を使う者たるもの,知っとかんばいかんことです. お恥ずかしい限り. ところで,長崎の人って,あんまりお金をまあまあ持っている人はいない,と私は思っています. 新規抗凝固薬. 値段が高いです. 月に,3割負担で5000円弱,1割負担で2000円弱. ワルファリン 月に,3割負担で300円弱,1割負担で100円弱. こんな話を,脳梗塞になった当院入院中の患者さんにすると, 今までワルファリンを内服していた人は, 「今までのままでいいです」 と言う人が結構います. 今までワルファリンを内服していなかった人も, 「今回はワルファリンでいいです」 と言う人が結構います. 他の病院では結構すんなり,ダビガトランを処方しているようでした. 大学病院に来る患者さんの背景がちがうのかな? 確かに原爆病院を受診する人は「原爆手帳」を持っている人が多いようですが. 話題になったこと. 心房細動を有する患者さんにおけるステント留置後の抗血栓療法. このブログでも先日,話題にしました. triple, mono mono, dual どれにする? tripleは出血のリスクが高くて,こわいです. 循環器内科の中でもしっかりとしたコンセンサスはないように,昨日の会では思いました. 先日,このブログをある有

失語症患者さんの涙

失語症とは,「頭に浮かんだ言葉話せない,口までこない」という "output" の問題だけではなく, 「言葉や状況を理解できない」という "input" の問題もあります. その程度は,人それぞれで, output,input どちらもまったくだめな人もいれば, inputはかなり良いが,少しダメで,outputはまったくだめ, など,まちまちです. 60歳台の男性 脳梗塞で失語症と右麻痺があります. 当初は,"input"も"output"もどちらもまったくだめである「全失語」の状態でしたが,次第に改善し,"input"は6-7割までに改善していました.しかし,"output"は1割程度の改善. 会話の理解は,その場の雰囲気もあり,ある程度できるが,言葉を発することはほとんどできない状態. 難しい話は理解できないぐらい. 普段,私がベッドサイドに行っても,あまりコミュニケーションはできず,表情もほとんど変わりません. 脳梗塞の原因検索の途中で,肺癌らしきものが見つかりました. リンパ節転移もありそうです. 家族には説明しました. 本人には,確定診断できておらず,詳しく説明すると理解が難しいだろうし,混乱するだけだろうから,「肺の病気を調べている」とだけ言っていました. ただ,もともとヘビースモーカーなので,もとから癌のリスクは知っていて,現在もどうも理解しているようだ,とは家族の意見でした. ある日,ベッドサイドにあるお孫さんの写真について,会話しました. めちゃくちゃかわいい.二重がうらやましい なんて,一重'sである私の家系からみたうらやまし話をしました. ふふふっ,と相好を崩していらっしゃいました. その感情の表出の後に,流涙. 何を思われたのでしょうか. そんなことを直接ずけずけ聞けるほど,礼儀をわきまえていないことはないですし,解脱していないので,言葉なしに理解もできず,よくわかりませんでした. どういうことが頭に浮かんだのでしょうか. 自分は脳梗塞で,もしかしたら癌で,孫がいて・・・・,そういう「生」につ

triple, mono mono, dualどれにする?

心房細動をもっている患者がステント留置を受けたら,その後の抗血栓薬はどうしますか? 1 triple: ワルファリン+アスピリン+クロピドグレル 2 mono mono: ワルファリン+アスピリン or ワルファリン+クロピドグレル 3 dual: アスピリン+クロピドグレル 一般的には Bare-metal stent: 1カ月はtriple.12か月までmono mono.それ以降はワルファリンのみ. 薬剤溶出ステント:3~6カ月はtriple.12カ月まではmono mono.それ以降はワルファリンのみ. でしょうか.(CHEST 2012; 2012; 7-47) tripleって・・・. こわい. tripleはできるだけ短期間にしましょうってことになっていますが, 実際の出血リスクについては不明な点が多い. 本日は,Circulation 2012 Sep 4; 126(10); 1185-93  Bleeding after initiation of multiple antithrombotic drugs, including triple therapy, in atrial fibrillation patients following myocardial infarction and coronary intervention: a nation wide cohort study. http://circ.ahajournals.org/content/126/10/1185.long デンマークから.国をあげてのデータ収集. 2001年から2009年まで,心房細動をもっていて,心筋梗塞による,または待機的にステント留置をした患者11,480人を検討. アスピリンのみ:3388人 クロピドグレルのみ:768人 ワルファリンのみ:848人 dual:アスピリン+クロピドグレル 3144人 mono mono:ワルファリン+アスピリン 1310人,ワルファリン+クロピドグレル527人=1837人 triple:ワルファリン+アスピリン+クロピドグレル 1495人 指標は,以下の通り. primary end point:致命的な出血または致命的でない

オマーン戦に思う

中東でW杯やっちゃダメ。 暑すぎです。 サッカーにならないです。 みんな1歩目がでなかったですね. そんな中でも長友選手はよく走っていました. そして,長友選手にパスを出すと,チャンスにつながると,みんなが認識しているので,そのフリーランニングにパスが出てました. おとりになるフリーランニングは大切ですけど,やっぱりパスが出てこないと続けるのはきついですね. 右サイドの酒井宏樹選手は,フリーランニングを繰り返して,すごく頑張ってました.まだ,代表では信頼度が高くないので,簡単にパスが出てきませんでしたけど.その影響で,ディフェンスの裏に出たパスに1歩目の躊躇があって,チャンスにならなかったことが1回だけありました. あの暑さなので,仕方ないです.それでも,彼の飛び出して,走って,ボールに追いついて,きれいにトラップして,もしくはダイレクトでの折り返しは,すごくきれいなので,次に期待です. 本田選手の存在感はすごかったですね. ボール持ってぱっと前を見たら本田選手がいる.他パスコースがないから,そこに出す.って感じのことが多くありました. 暑いので,あまりパスコースをすぐ作れないときは,有りがたいです. パスのリズムとか独特で,なかなか間合いを詰めにくい選手ですね. 清武選手は非凡な選手で,期待大です.後は,1対1の勝負強さと凄味がでると恐ろしい選手になりそうです. で,やっぱり2点目. 酒井高徳選手のまたぎからの、ポーンと出しての、トップスピードがすごかったです。途中出場の利点を生かしたプレーでした。 なんだかんだいって,やっぱり日本代表は強くなりました.アジアでは. 松木さんも言っていましたが,次の試合ではなく,この試合で逆転して,けりをつけたのがよかったです.強くなったもんです. ドーハの悲劇があり,今の日本代表がある. と,個人的には思っています. 偉そうで,すみません. 以上,本日は脳卒中と関係なしで,失礼しました.

MRIから出てきたら心不全になってました

ある土曜日の夜のこと. 脳卒中発症から2時間ということで,琥珀エビスを開けようとしていた私は,自宅から病院へ. tPAかも (※tPA静注療法:発症4時間30分以内にのみ行うことができる脳梗塞の点滴治療) 自宅から病院が早足10分という中途半端な距離で,ちょっと歩けば残り8分になるから,タクシー捕まえずじまいになりがち. この件はどうでもよくて. 救急外来に到着すると,比較的若年の方で,来院時は症状がなくなっていたということでした. 心臓弁膜症と心房細動をずいぶん以前に指摘され,その後病院受診をしていないとのことでした. 心臓精査は必要ですが,神経症状がなくなってよかった,よかった. 「治療の重要性とかわかってもらわんばいけんですねぇ」とか偉そうなことを話しながら, 「じゃぁ,私はMRIが終わったら頸部血管エコーして帰ります.心臓は問題ありそうだから,今回は循環器内科の先生に心エコーをしてもらっとってください.」 と,患者さんのMRIからの帰りを待ってました. こんな感じで. Vivid スタンバイ. 15分ほど待って,自動ドアの開く電子音と共に,ガタガタガタっと,ストレッチャーベッドが入ってくる音.そして,脳外科UG先生の声 「リザーバーマスクで10リットル酸素投与!」 頭をよぎった. 「確かにMRI中SpO2が94%と低めだった.まさか」 そのまさかでした. 起座呼吸で頻呼吸,SpO2 89%. 急性心不全. すぐにフロセミドを静脈注射.尿バルーンを入れようとしましたが,「この向きがいい」と座って右向いたまま.この姿勢だとちょっと入れられないです. どうしたもんかと,思案していると,発汗が著明に. 「点滴ルートのテープが汗でとれちゃってますね」 と,看護師がテープを直しているうちに,患者さんの意識が低下・・・・. 座位のまま,バックバルブマスク. 座位のまま,BB先生が気管内挿管.人口呼吸器管理. で,やっとレントゲン. 立派な,肺うっ血と肺水腫でした. 心不全ということで来院した人をむやみに,臥位にすると心不全を悪化させるから

メルシーボク

今日はMerci retrieverによる血栓除去がうまく行きました. なかなか日本人はPenumbraあがりませんね. どうなんでしょうか? 今回は,幸い1回のattemptで完全再開通TICI3でしたが,やっぱりSolitaireやTREVOが安全そうです. なんだ,この白いの.

脳卒中内科医の忙しい一日

押し寄せる波のごとく 急患. 昨日は脳みそdayでした. 救命センター看護師のみなさんありがとうございました. 途中,病院全体の災害医療訓練で救急外来が使えず,血管造影室に行って,なんて,ごちゃごちゃが多少ありましたが,皆さんの助けで対応することができたのでした. 病棟の看護師も,仕事待たせてすいません. 頭部画像検査の技師さんがた. 割り込み検査,ご迷惑をおかけしました. 脳外科入院4人と脳卒中センター入院4人で合わせて, 8人. 内,tPA静注療法患者1人. でした. その前の日の,午後からも3人ぐらい入院していたので, もう大変. でも,まぁこういうことがあって,仕事のキャパシティがアップしていくし, 脳卒中は,やっぱり来るときゃ来る ってことを,みんなが再認識できていいことでした. 師長さん,おつかれさまでした.