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2月, 2019の投稿を表示しています

ある患者さんの話。シベリアと、長崎と。

「良子さん、昨晩は眠れましたか?」 山下良子さん(仮名)83歳女性。 脳梗塞で、1週間前に入院したが、幸い症状は消失し、そろそろ退院間近。 笑顔がチャーミングな女性。 私は、せっかく長崎で医師をしているので、戦争当時の話を、とりわけ原爆投下当時の話を、時間と、本人の症状、が許せる範囲で聞くようにしている。 終戦から74年。 もうじき、この世代の方々もいなくなる。 もちろん、本人に断りを入れてから当時の話を聞くようにしているが、案外、拒否されることはない。 多くの方が、 「話そうとは思っていたんだけど、自分から話すようなことでもないし」 と言った返答がほとんどである。 今回の話も、良子さんは、やはり自分の子供にはほとんどしていなかった。 また、 「誰にも話していないんだけど」 という内容まで聞かせていただいた。 私は、単なる一医師なので、作家や記者ではない。 突っ込んで聞けないことが多々あった。 それでも、平和な時代だからこそ、そして、世界の情勢が目まぐるしく変わる、こんな時代だからこそ、 私たちは、戦中戦後の、あの時の話を知っておくべきなのかもしれない、と思います。 少なくとも、私は自分の子供には伝えたい。 話の最後に、良子さんが漏らした一言は、当時を経験した彼女だからこその言葉だと思いました。 「もし、総理大臣が「戦争をする」と言ったら、真っ先に(首相のもとに)駆けつけて、乗り込んで、やめさせます」 -------------------------------------------------------------------- 良子さんの話 1945年、おそらく満州の北の方に住んでいました。 満州に移住したのは、他の家族と同様、父の仕事の為でした。 父は当時45歳で、銀行の支店長をしてました。 母は移住して一年目に病気をして、病弱な人でした。 私は、1945年の終戦前に先に帰国して、長崎に戻っていました。 自分では覚えていないのですが、いとこが言うには、私が「早く帰りたい」と言ったから、らしいです。 私は、長崎で、 両親と妹と弟は満州で 終戦を迎えました。 父は帰国の途中で、ロシアの人に捕まり、抑留されました。 母と妹、弟はそのことは知

論文がpublishされました。

論文がギルガメッシュされました。 いや、パブリッシュ。 Journal of the Neurological Sciencesへ Pubmedへ 投稿から採択まで、長かった・・・。 major revisionで帰ってきてから、約3ヶ月かかりました。 はっきり言って、私は”粘り勝ち”だと思っています。 4人の査読者からの膨大な質問事項。 査読者の皆さんは「まさか、この膨大な量に対応してくることはないだろう」と思っていたのではないかと、思っています。 そこに対応することで、「人情を動かす」 妄想:査読者A「まさか、この難題に対応してくるとは、感動したぜ。ACCEPT!!」 みたいな。 査読者の感動した顔を妄想しながら、意地でも、頑張りました。 査読していただいた、世界の先生方、 ありがとうございました。 ------------------------ 論文の概要 ほぼ、入院時のデータで脳梗塞患者の90日後の予後を予測することが可能かもしれません。 "DONE score" (最低スコア21.5、最大スコア83) ちょっとややこしいのですが、このtabel 3に従って、計算していきます。 脳梗塞90日後死亡の独立した因子を4個採用しています。 本論文のポイントは、心臓の拡張障害が含まれていることです。 64点以上だと 31%が死亡。 82%が歩けない、寝たきり、死亡。 という結果。 問題点は 単施設のデータであること。 計算がちょっとややこいこと。 脳神経内科、脳神経外科、循環器内科、そして統計解析のお手伝いを頂いた先生方のサポートのおかげです。 また、看護師や放射線技師、リハスタッフ、薬剤師、歯科医師 言ってしまえば、メディカルソーシャルワーカー、救急隊 さらには90日後の予後を評価しているので、回復期リハビ病院や、かかりつけの先生方も、 この1本の論文作成に寄与していただいています。 臨床データの論文って、そんな感じですね。 そして、1208人の患者さんからデータを頂い

International stroke conference 2019 @ Hawaii

今年のInternational stroke conference はメインの発表がなく、静かです。 その分、ちょっとした、niche な話を聞く事に気持ちが向いて、それはそれで良かったです。 これは、やるべきでは?と思ったのは、眼科領域のOptical Coherence Tomography のAngiography (OCTA) 眼科の先生に教えてもらって、検討してみたい。 血流の多寡を非侵襲的に評価できる、らしい。 ------------------------------------------------------ Intensive insulin therapy SHINE trial Intensive IV 80-130mg/dL, standard 皮下注射 <180mg/dL Outcome Intensive group: Severe hypoglycemia 2.6% しかし、予後は有意差なし、というかほぼ同じ。 血糖管理はふつうに皮下注射で、いい感じでいい、というnegativeな結果も大切な結果。 まあ、そうです、よね。 ---------------------------------------------- CHANCE trial (ASA+clopidorel vs. ASA alone)とPRINCE trial (ticagrerol +ASA vs. clopidogrel + ASA)のDr. Wang Minor strokeに対する抗血小板療法は24時間以内に開始して、21日以内まで Large artery disease も含んでいる。 PRINCE trial の結果は、ticagrerolはclopidgrelに比べて血小板表面に発現するP2Y12 reaction unitの減少が迅速かつ安定しており、90日後の血小板反応性も低下していた。 CYP2C19 のloss of functionの影響を受けないticagrerolが使いやすい可能性がある。 ----------------------------------------------- ENCHANTED trialの血圧