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ヘディングってたしかにガツーンて来る。そして、神経変性疾患になる、かも。

中学、高校とサッカーしてました。 ヘディングが一応武器でした。 背高い方だったし。 ヘディングでボールを跳ね返すとき、 結構「ガツーン」と来ます。 しばらくサッカーしてなくて、久しぶりにサッカーして、そのときになんとはなしにヘディングしたときの衝撃は びびります。 こんなことしてたんだ、俺。 って思うほどです。 私、今、幸せにも健康です。 将来的にも体的には元気だと思います。 でも、頭的には認知症になるかもしれない。 という論文。 The New England Journal of Medicine 元プロサッカー選手の神経変性疾患による死亡率が高い。 スコットランドの元プロサッカー選手7,676人と一般住民23,028人比較 後ろ向きコホート研究 一次エンドポイント:神経変性疾患死亡率 ※神経変性疾患:  原因が明らかでない認知症  アルツハイマー型認知症  アルツハイマー型以外の認知症  運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症など)  パーキンソン病 結論: 中央値18年の追跡で、いわゆる死亡診断書を見直してチェックしています。 すべての死亡は、 元プロサッカー選手 15.4%<一般住民 16.5% プロサッカー選手で、体は健康。 だから、一般人と比べて、70歳までの死亡は少ない。 でも、70歳を超えると、元プロサッカー選手の死亡率が高くなる。 なんでだろう。 死亡診断書に記載された直接死因は、 血管障害による死亡や肺癌死が少ない。 でも、神経変性疾患による死亡は高い。 ここらへんが関係ありそう。 (※ちなみに脳卒中死は差がありませんでした) 死亡診断書に記載された直接死因と、死亡に関連した原因をあわせてみると以下の表のとおりでした。 なんでこんな結果になったのか。 論文内では直接的には表現されていないけど、 次のサブ解析で、その意図は明らか。 ゴールキーパー vs フィールドプレイヤー ヘディングの頻度が大きく違う。 死亡は差はなかったが、 認知症薬処方率が、フィールドプレイヤーで多かった( OR:0.41、9

脳卒中センター開設8周年。

2011年10月1日に脳卒中センターが開設されてから8年経ちました。 おめでとうございます。 ありがとうございます。 個人的な話。 2011年3月19日クリーブランドでの留学のため、日本を発ちました。 ちょうど震災の年でした。 成田空港は省電力のため、薄暗く、 アメリカのトランジットの空港で、数人のアメリカ人から、 「まあ、日本から?地震は大変だったわね。あなたは大丈夫だったの?」 的な言葉を多くもらったのをよく覚えています。 本当は1年以上の期間留学する予定でしたが、脳卒中センター開設にあわせて早期帰国をする事になりました。 もっとアメリカで勉強したかったんですけど、そういう運命だったのだろうと思っています。 それから、脳卒中をする内科医は、2人から6人になりました。 思ったより増えてはいませんけど、 まあ、それも運命というか、そんなもんなんでしょう。 脳卒中を見る内科医を取り巻く問題はありますが、 現場での努力が足りなかったということでしょう。 魅力を伝える そのためには自分が魅力を感じていなければなりません。 ついつい、日常の診療に、忙しさにかまけて、新しい展開への挑戦が足りていない。 「いつもの」仕事に追われて、多忙にしていると、なんだか 「仕事したな!」 っていう感じになりますけど、 なんだか違う。 「多忙は怠惰の隠れみの」 だそうです。 あー、納得。 そうだったのか。なんか、生産性がないなあと思っていました。 新しい展開にチャレンジしよう。 脳卒中を見る内科医の魅力をひろげよう。 科研費締切まであと2週間をきりました。

リスクを有する心房細動患者へのカテーテルアブレーション。そんなバカな、な結果なのかどうか、CABANA trial

心不全合併心房細動患者へのカテーテルアブレーションは、薬物療法に比べて、死亡または心不全を減らすという結果が、CASTLE-AF試験で得られました。 心不全合併心房細動患者に対するカテーテルアブレーションは有効。しかし脳梗塞の予防効果はまだわかっていない。 リスク低減効果は約40%。 個人的に興味があるのは、脳卒中をやっている身とすれば、アブレーションをすることによって脳塞栓症の発症を抑制できるかどうか、ということになるわけですが、 CASTLE-AF試験では、差は出ませんでした。 アブレーション: 5/179 (3%) vs. 薬物: 11/184 (6%) HR 0.46; 95%CI 0.16-1.33; p=0.15 そもそも脳塞栓症発生数が少なかったことも影響したかもしれません。 今回のCABANA試験 Packer et al. JAMA 2019 Effect of Catheter Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy on Mortality, Stroke, Bleeding, and Cardiac Arrest Among Patients With Atrial Fibrillation The CABANA Randomized Clinical Trial 登録症例数がアブレーション群、薬物治療群それぞれで1000例を超えており、期待が持てます。 更に期待が持てるのは、脳卒中リスクを1つ以上有する65歳以上の患者を登録していることです。 脳卒中リスク: 高血圧、心不全、脳卒中の既往、糖尿病、他の心疾患 んが、結果は微妙な感じになりました。 世界10カ国126病院 非盲検ランダム化試験 2204人の有症候性心房細動患者が登録されました。 ITT解析では、アブレーション1108人 vs 薬物治療1096人 Per-protocol解析では、アブレーション群987人 vs 薬物治療1096人 Primary end point 複合エンドポイント(死亡、重篤な脳卒中、重篤な出血、心停止) Secondary end pointは13項目 1. 全死亡 2. 全死亡 or 心血管病による入院 3. 全死亡, 脳卒中, or 心

発症時間が不明でもMRI画像次第でtPA静注療法が可能に。

tPA静注療法は脳梗塞発症から4.5時間以内の患者に施行できる点滴治療です。 脳梗塞急性期治療だけでなく、脳梗塞患者の治療・ケア全体においても、大きな転換点となった治療です。 その適応が拡大というニュース。 脳卒中学会から、 静注血栓溶解(rt-PA)療法適正使用指針 第三版が発表されました。 日本脳卒中学会HPより その中で、 発症時間不明でも、画像次第では、tPA静注療法を行うことが検討可能になりました。 具体的に、どういうことかと言うと、 ------------------------------------ 例: 前日の21時に普段どおり就寝。 翌朝6時起床時から、すでに右麻痺あり。 (21時から6時の間に発症しているが、発症時間を断定することは不可能。つまり、「発症時間不明」) 8時に救急外来に来院。 8時15分、頭部MRI撮影。拡散強調画像(DWI)で高信号が出現しているが、FLAIRではまだ高信号になっていない。 (DWI +/FLAIR -) tPA静注療法施行を検討可能! という流れ。 ------------------------------------- 今までは、発症時間不明のときは、tPA静注療法が施行できませんでした。 しかし2018年に、WAKE-UP trial WAKE-UP trialのメインの結果。発症時間不明、発見から4.5時間以内の 患者を二重盲検でtPA群とplacebo群に分け、3ヶ月後予後を評価 tPA群がPlacebo群より3ヶ月後予後が良好、という結果に。 MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset Thomalla et al. NEJM 2018. からポジティブな結果が出て、世界各地で進んでいた同様の研究も、その結果をもとに、研究を中止したほどでした。 日本では、対照群はPlaceboではなかったものの、同様のTHAWS trialが国立循環器病研究センター中心に行われており、2018年7月に早期終了の運びとなりました。 そして、2019年3月21日から23日に開催された脳卒中学会を機に、tPA静注療法の拡大が発表されたというわ

九州で脳卒中を診る内科医は悩みながら日々診療してる

毎年、神経学会九州地方会が福岡で行われる3月に、 脳卒中診療を行う内科医があつまって、研究会を行っています。 今年は、九州の脳卒中診療の現状と課題を各県の先生方に話していただき、情報共有を行う形をとりました。 1. 各県とも、脳卒中診療が充実していない地域がある。 -- 県庁所在地から離れている、山間部(必然的に県境が多い)などでその傾向あり。 そこで発生した急性期脳卒中をどう診療するか。 ヘリコプター? 確かに、一つの方法だが、夜間や天候不良は運用できない。 そんなときは仕方ない、陸路で運ぶしかない。 2. 現状では、九州すべての地域で、均てん化された(どこの地域でも、同質の)脳卒中診療を提供できているとは到底言えない。 -- それならば集約化。 しかし、搬送手段の問題が生じる。 地域での足並みの揃い具合の問題もあり、各県ともに最も悩んでいる問題の一つ。 熊本や鹿児島は、組織的に、そして、現場の先生の継続的な努力で、現状の把握に取り組んでいました。 詰まった脳血管を再開通させるカテーテル治療。 集約化だけでは、カバーできない現実に、均てん化の要素も取り入れようとしている現状が見えてきました。 日本全国のデータ( RESCUE-Japan project )では、各県の脳血管内カテーテル治療の充実度の差を明らかにしたデータが提示されています。 しかし、各県の"中"での地域格差は示されていません。 九州から、各県内の脳卒中診療充実度の地域格差を出して、さらに地域に即した提言を行っていき、改善していくことは、住民の安心につながるはずです。 3. 脳卒中診療を行う内科医が、順調に増えているか、というとそうではない。これは各県で格差あり。 一部の県では危機的な状況にあります。 脳外科の先生方が頑張っているわけですが、脳外科の先生には手術を頑張ってほしい、と多くの人が思っていると思います。 脳梗塞の多くは手術が不要です。脳出血も手術になることは10−20%程度でしょう。 脳卒中診療は歴史的に脳神経外科の先生方が頑張ってきた歴史の上に成り立っています。 そろそろ内科、がんばらんばでしょう。 3. 基礎研究を脳卒中の領域で行っている内科医が限られている。 -- これは、脳卒中診療の忙しさが

ある患者さんの話。シベリアと、長崎と。

「良子さん、昨晩は眠れましたか?」 山下良子さん(仮名)83歳女性。 脳梗塞で、1週間前に入院したが、幸い症状は消失し、そろそろ退院間近。 笑顔がチャーミングな女性。 私は、せっかく長崎で医師をしているので、戦争当時の話を、とりわけ原爆投下当時の話を、時間と、本人の症状、が許せる範囲で聞くようにしている。 終戦から74年。 もうじき、この世代の方々もいなくなる。 もちろん、本人に断りを入れてから当時の話を聞くようにしているが、案外、拒否されることはない。 多くの方が、 「話そうとは思っていたんだけど、自分から話すようなことでもないし」 と言った返答がほとんどである。 今回の話も、良子さんは、やはり自分の子供にはほとんどしていなかった。 また、 「誰にも話していないんだけど」 という内容まで聞かせていただいた。 私は、単なる一医師なので、作家や記者ではない。 突っ込んで聞けないことが多々あった。 それでも、平和な時代だからこそ、そして、世界の情勢が目まぐるしく変わる、こんな時代だからこそ、 私たちは、戦中戦後の、あの時の話を知っておくべきなのかもしれない、と思います。 少なくとも、私は自分の子供には伝えたい。 話の最後に、良子さんが漏らした一言は、当時を経験した彼女だからこその言葉だと思いました。 「もし、総理大臣が「戦争をする」と言ったら、真っ先に(首相のもとに)駆けつけて、乗り込んで、やめさせます」 -------------------------------------------------------------------- 良子さんの話 1945年、おそらく満州の北の方に住んでいました。 満州に移住したのは、他の家族と同様、父の仕事の為でした。 父は当時45歳で、銀行の支店長をしてました。 母は移住して一年目に病気をして、病弱な人でした。 私は、1945年の終戦前に先に帰国して、長崎に戻っていました。 自分では覚えていないのですが、いとこが言うには、私が「早く帰りたい」と言ったから、らしいです。 私は、長崎で、 両親と妹と弟は満州で 終戦を迎えました。 父は帰国の途中で、ロシアの人に捕まり、抑留されました。 母と妹、弟はそのことは知

論文がpublishされました。

論文がギルガメッシュされました。 いや、パブリッシュ。 Journal of the Neurological Sciencesへ Pubmedへ 投稿から採択まで、長かった・・・。 major revisionで帰ってきてから、約3ヶ月かかりました。 はっきり言って、私は”粘り勝ち”だと思っています。 4人の査読者からの膨大な質問事項。 査読者の皆さんは「まさか、この膨大な量に対応してくることはないだろう」と思っていたのではないかと、思っています。 そこに対応することで、「人情を動かす」 妄想:査読者A「まさか、この難題に対応してくるとは、感動したぜ。ACCEPT!!」 みたいな。 査読者の感動した顔を妄想しながら、意地でも、頑張りました。 査読していただいた、世界の先生方、 ありがとうございました。 ------------------------ 論文の概要 ほぼ、入院時のデータで脳梗塞患者の90日後の予後を予測することが可能かもしれません。 "DONE score" (最低スコア21.5、最大スコア83) ちょっとややこしいのですが、このtabel 3に従って、計算していきます。 脳梗塞90日後死亡の独立した因子を4個採用しています。 本論文のポイントは、心臓の拡張障害が含まれていることです。 64点以上だと 31%が死亡。 82%が歩けない、寝たきり、死亡。 という結果。 問題点は 単施設のデータであること。 計算がちょっとややこいこと。 脳神経内科、脳神経外科、循環器内科、そして統計解析のお手伝いを頂いた先生方のサポートのおかげです。 また、看護師や放射線技師、リハスタッフ、薬剤師、歯科医師 言ってしまえば、メディカルソーシャルワーカー、救急隊 さらには90日後の予後を評価しているので、回復期リハビ病院や、かかりつけの先生方も、 この1本の論文作成に寄与していただいています。 臨床データの論文って、そんな感じですね。 そして、1208人の患者さんからデータを頂い

International stroke conference 2019 @ Hawaii

今年のInternational stroke conference はメインの発表がなく、静かです。 その分、ちょっとした、niche な話を聞く事に気持ちが向いて、それはそれで良かったです。 これは、やるべきでは?と思ったのは、眼科領域のOptical Coherence Tomography のAngiography (OCTA) 眼科の先生に教えてもらって、検討してみたい。 血流の多寡を非侵襲的に評価できる、らしい。 ------------------------------------------------------ Intensive insulin therapy SHINE trial Intensive IV 80-130mg/dL, standard 皮下注射 <180mg/dL Outcome Intensive group: Severe hypoglycemia 2.6% しかし、予後は有意差なし、というかほぼ同じ。 血糖管理はふつうに皮下注射で、いい感じでいい、というnegativeな結果も大切な結果。 まあ、そうです、よね。 ---------------------------------------------- CHANCE trial (ASA+clopidorel vs. ASA alone)とPRINCE trial (ticagrerol +ASA vs. clopidogrel + ASA)のDr. Wang Minor strokeに対する抗血小板療法は24時間以内に開始して、21日以内まで Large artery disease も含んでいる。 PRINCE trial の結果は、ticagrerolはclopidgrelに比べて血小板表面に発現するP2Y12 reaction unitの減少が迅速かつ安定しており、90日後の血小板反応性も低下していた。 CYP2C19 のloss of functionの影響を受けないticagrerolが使いやすい可能性がある。 ----------------------------------------------- ENCHANTED trialの血圧