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8月, 2012の投稿を表示しています

安定した冠動脈狭窄病変をどうする?

脳梗塞で入院された方で,頸部から脳血管に狭窄病変(動脈硬化で狭くなった)が見られた場合は,循環器内科にお願いして,冠動脈CTか心筋シンチを施行していただいています. これがまた,所見がある率が高いのです. 「心臓は人間のエンジンだから,しっかり診てもらいましょう」 かくして,脳梗塞で入院した患者さんのうちの一部が心臓の評価,冠動脈カテーテル検査に進んでいくのであります. そこから先は,循環器内科の先生方に治療方針を丸投げしているわけですが,丸投げしても,その後の治療について知っておくと,いい医者になれるだろうということで,ちょこっと勉強. American Heart Associationの雑誌Circulation: Cardiovascular Interventionから, "Percutaneous coronary intervention versus optimal medical therapy in stable coronary artery disease. A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials" Pursnani S, et al “Percutaneous coronary intervention versus optimal medical therapy in stable coronary artery disease. A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials” Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 476-490. 安定した冠動脈疾患患者に対して,インターベンション(ステント留置とかバルーン拡張)すべきなのか,それとも内服治療だけでいいのか. 定義:「安定した冠動脈疾患患者」=「すくなくとも1週間以内に急性冠症候群をおこしていない患者」 過去の12トライアルをレビューしています. 日本の研究"JSAP (Japanese Stable Angina Pectoris)も含まれています. 結論: 狭心症状消失はインターベンション群の勝

血栓抜きとる.next generation.

血栓除去新時代の幕開けを感じる二つの論文がLANCETに掲載されました. 脳血管に詰まった血の塊を器具で抜き取る. 基本的に,適応は発症8時間以内です. Solitaire Saver, JL et al "Solitaire flow restoration device versus the Merci Retriever in patients with acute ischaemic stroke (SWIFT): A randomised,parallel-group, non-inferiority trial" Lancet 2012; DOI: 10.1016/ S0140-6736(12)61384-1. TREVO Nogueira, RG et al "Trevo versus Merci retrievers for thrombectomy revascularisation of large vessel occlusions in acute ischaemic stroke (TREVO 2): A randomised trial" Lancet 2012: DOI: 10.1016/ S0140-6736(12)61299-9. 私の過去ブログも. John TREVOlta どちらも,MERCI retriverとガチンコ勝負. これがMERCI retriever Solitaire,TREVOともにMERCIに勝利. MERCI2連敗. これ,すごいことです. 例えば,Solitaire vs Merci SWIFT studyから. 私が,再構成したスライドで少し見にくいですが. 裏話かもしれないこと. 世に出た順は,MERCI, Solitaire, TREVO それぞれの会社は,Stryker, Covidien, Stryker 私が思うに, 1 SolitaireがMERCIを打ち負かしてしまった 2 あせったStryker社は似ているけどちょっと違う,TREVOを世に送り出し, 3 本

The Mt. Fuji workshop on cerebrovascular disease

今日は大阪で学会でした。 研修医の先生に発表してもらいました。 今学会のテーマは 「妊娠分娩と脳卒中」 。 レアだなぁ~と,侮っちゃいけません。 とても面白かったです。 また,「なぜ,Mt Fuji?」というつっこみも不要です. 知りません. 他領域のテーマが混じるとこんなにも面白くなるんだなぁと勉強になりました。 うちの研修医の発表は、反省点もあったけど、たんたんと発表をすすめて、1発表1テーマでわかりやすかったと思います。聞きやすかったです。 さて,今回は,都合により1セッションのみの参加となりました. でも内容が濃かったです. 静脈洞血栓症は初期と産褥期におおい D-dimer は後期に向けて上昇して行く。 どうしてか?どうせならD-dimerも初期と産褥期に多くあってほしい・・・.なにか,別の因子が関連する?ホルモン? ワーファリンは15週から使っていい。弁置換術後の患者 。 でも, 2012年1月1日から高リスク妊婦にはヘパリン皮下注が保険適応になった. ワーファリンの催奇形性(思ったほど多くない?5mg以下ではまれ?)を考慮するとへパリンの方が安全ですかね. プロテインS欠乏症も原因になりうる。しかし,妊娠時は低値になるので,出産後しばらくしてからも採血して評価が必要. もちろん,アンチトロンビンⅢ欠損症も注意. 分娩後脳アンギオパチーは血管攣縮をきたす。まれ。血圧正常のことも。激しい頭痛。 Reversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS) 一部。 注意すべき点は,「産婦人科からみると、頭痛少ない。痙攣、意識障害がおおい。」印象があること. 一つの疾患にも,いろいろな側面があることのいい例. RCVSは頭痛が起こってから1週間ぐらいで血管攣縮、虚血。虚血をきたした時には頭痛がないことがある。 最近のStroke誌にも載っている。 Fugate et al. Various Presentations of Postpartum Angiopathy Stroke 2012;43: 670 分娩後脳アンギオパチー. 脳梗塞やら脳出血,reversi

師匠

昨日,私の中ボスであるY先生の教授就任壮行会がありました. 感動です. Y先生から教わったことは,数えきれないほどあります. 3,4年目の研修医上がりぐらいで,脳卒中の「いろは」はもとより,論文作成についてもご指導いただきました. あの時代があり,今の私がいる. どんな人にも過去があり,すべてのことが今に続いているわけではありますが,今,目標をもって仕事ができているというありがたい環境は,医師3,4年目の2年間があったからこそです. あの時,違う道を選んでいたらどうなっていたのでしょう. ピザ屋さんになっていたかも. んなこたない. Y先生の言葉. 「この世界は,1に師匠,2に師匠,3,4がなくて,5に師匠」 どんな師匠について,学んだかがその人を決める. 尊敬できると感じた師匠について行くことが,いい医師になる近道であり,また王道でもあると私も思います. 師匠を崇め奉るわけではなく,尊敬し,その能力を盗めばいいのです. 私も,3,4年目に「脳卒中診療をここで学ぼう」と決めたのは,施設のアメニティとか給料とか,町の雰囲気とかではなく,「人」でした. 大ボスの元に,有能な先生方が集まっていました.そんな大ボスが,へなちょこなはずがない. 時代が変わり,医療の雰囲気も変わり,患者の考え方も変わっている現代において,今までの対応では乗り越えにくい場面に遭遇することもしばしばです. 中間世代であるわれわれも,悩むことが多いです. それでも,立派な師匠になりうる先生は,その柔軟な思考力と対応力で乗り越えていらっしゃると思います. 若い先生方や医学生の皆さんには,ぜひ教えてもらうであろう「人」を観察することも自分の進路を決める,一つの指標にして欲しいと思います. 今の臨床研修システムの利点の一つだと思います. 手が写り込んでますが. その年に,いい仕事をした先生に贈られる賞です.特に論文. 他の人にはわからないかもしれませんが,またこれをいただくことが,私の密かな目標です.

腎保護が,脳を守る,心臓を守る,命を守る.

本日はNew England Journal of Medicineから. Olesen J, et al "Stroke and bleeding in atrial fibrillation with chronic kidney disease" N Engl J Med 2012; 367: 625-635. 腎臓病と心房細動をもつ患者の脳卒中リスク. Danish national registryに登録された患者を解析した観察研究. Danish・・・・・,ってどこだっけ. デンマークらしいです. 背景: 心房細動を有する透析患者にワーファリンを内服させると,意外と脳梗塞を増やしてしまう,かもしれない. 心房細動を有する慢性腎臓病患者にワーファリンを内服させると,出血性合併症が増えてしまう,かもしれない. しかし,たくさんの患者を登録して行う心房細動と脳梗塞の研究から,腎機能障害患者は除外されがち. 目的: Danish national registryに登録された患者で,中等度から重度の腎臓病をもっていて,かつ心房細動も持っている患者において,脳梗塞や出血性疾患を発症するリスクが高まるかどうかを調べること. 3群に分けています. 1 心房細動のみ 2 心房細動+透析や移植をしていない腎機能障害(末期じゃない腎障害) 3 心房細動+透析もしくは移植腎患者(末期腎障害) 全例心房細動を有することを忘れないように. 結果: ●脳梗塞や全身塞栓症は,腎機能障害がない心房細動患者の約2倍. 心房細動のみ:3.61/100人・年 心房細動+末期じゃない腎障害:6.44/100人・年 心房細動+末期腎障害:5.61/100人・年 ●ワーファリンはやっぱり有用. 全体:ハザード比0.59, 95%CI 0.57-0.62 心房細動+末期腎障害:ハザード比0.44, 95%CI 0.26-0.74 しかし,心房細動+末期じゃない腎障害は統計学的有意差を得られませんでした. ハザード比0.84, 95%CI 0.69-1.01 ●腎障害があると出血のリスクはやっぱり高かった. 心房細動のみ:3.54/100人・年 心房細動+末期じゃない腎障

かなり細長い写真です. これ,7月の書かなければならないサマリーの数です. これは,その一部です. サマリーとは入院患者さんのまとめで,すべからくすべての患者さんにおいて作成をしなければなりません. この表. つまり,診た入院患者さんの数. 各科の小計があって,各医師ごとの数字が出ています. 21人 私. 7月,全内科医中,第1位でした!! がんばった,のかもしれない.あんまり,そんな感じはしませんが. ちなみに,外科の先生を入れると,トップ10から漏れて,15-20位ぐらいです. 外科の先生すごいなぁ. しかし,私たちが若い人を育てるためには,もっと患者さんを診させてもらわないといけません. そして,「質」も大切です. ちゃんと診療して,地域に貢献できるように頑張ります. また,明日からがんばろう. ぼちぼち.

今晩のSCU

Stroke Care Unit: SCU = 脳卒中集中治療室 服を脱ぎたがる80歳台女性とViPAPをつけた心不全男性。 女性は,いわゆるせん妄というやつです. そもそも,せん妄とは? 1 注意を維持できない. 2 記憶がごちゃまぜになったり,場所が分からなくなる. 3 短期間で出現し,1日でも変動する.やっぱり夜が多い. こんな感じだそうです. 看護師さんから,「それは危ないので,触ったらだめですよ」 なんて,言われて,最初はやめても,すぐにまた同じことをやってしまう. こういうことが繰り返されるのです. 今回は,看護師から相談があって,病棟に赴きました. ほとんど裸でした. 脱ぎたがる人って結構いらっしゃって,何か人の潜在意識の中に,服を脱ぎたい,裸でいたい,という欲求があるのかなぁ,なんて思っています. 原始に帰りたい? さて,この方にはちょこっとお薬を使ってみました. その間,ベッドサイドにいて,様子観察. 30分ぐらいで,少し落ち着いたようです. おやすみなさい. その奥にはViPAPといって,簡便な人工呼吸器をつけた心不全の方がいます. このSCUの外には,一般病棟があります. そこでも,脳疾患をもちながら,ふらふら一人で歩きがちな患者さんが数人いらっしゃるようです. 病棟もSCUも,看護師がんばれー. 問題なく夜を乗り切りますように. 肌が出ている部分は,見えてはいけないところではありませんので.悪しからず.

ワイハーで会いましょう.

International Stroke Conference 2013 in HAWAII です. 毎年,アメリカの決まった土地を順繰りで回っていたのに,なぜか来年はハワイ. まぁ,粋な計らいであることは間違いないですが. いや,私,そこまでハワイが好きなわけではないです. どちらかと言うと,ヨーロッパの歴史ある街並みに憧れます. でも,なんかバカンスっぽくていいじゃないですか. 単純に. 抄録の締め切りが,アメリカ中央時間8月14日12時です. 脳卒中野郎のみなさんは準備できましたか? ワイハー,キキワイチービーで会いましょう. でも,毎年採択率20%ぐらい?らしいです. 5年連続で,抄録を出して,最初の2年はダメで,そこから3年連続フィーバーしています. 今年も確率を上げるために2演題登録しました. 1回目は夏休み返上で,何十冊と言うカルテと格闘して,データを見直していました.半泣き. でも,今思い出すと,そのアイデアは面白かったと思うのでちょっとやりなおしてみようかな?

脳・心・末梢血管

全身の血管はつながっています. ですので,頭は頭の血管,心臓は心臓,・・・・ なんて分けて考えるのはナンセンス. 例えば,私たち脳卒中内科グループは毎日,カンファランス(みんなで患者さんの方針検討)をして,回診(患者さんを診て回る)をしています. その毎日の記事に,「心・腎・末梢血管」という項目を設けて,その問題点や現状を記載するようにしています.できるだけその患者さんにおいて,血管病リスク管理の抜けがない様にしているわけです. 当たり前すぎて,抜け落ちると,「ぼんくら」ドクター. 今回の講演会は, 小倉記念病院循環器内科部長 横井宏佳先生 九州医療センター 脳血管内科 科長 矢坂正弘先生 お二人にご講演をいただくという,マニア垂涎の,ではなく,とても貴重でありがたい企画でした. ありがとうございました. とてもおもしろかったです. 横井先生の話. 脳血管障害からみると,末梢血管障害は20%ぐらいです. ちなみに,末梢血管障害とは足の血管がつまってしまうことです.それで,ある程度歩くと,足が痛くなります.それで,歩けなくなる.傷ができると血管から栄養がいかないので,治りづらくなる. 血管病の末期像と私は判断しています. それを裏付けるように,横井先生は,「重度の末梢血管障害患者は,大腸癌患者より,予後が悪い(平たく言うと,「死にやすい」ということ)」とおっしゃっていました. これって,驚きです.癌じゃないのに. また,足の血行障害で足の切断を余儀なくされるのは,4%以下とのことでした. 少ないです.意外と. 昔,といってもそんな大昔ではない昔. 演歌歌手の村田英雄さんは,糖尿病による足の動脈硬化で,足の切断をされています. ・・・・・,今だったら・・・・? それはわかりませんが,足の血管治療も進歩しています.もしかしたら?という素人考えです. 足の血管治療は,つまった血管を再度通す(血管内治療)とつまったところの横にバイパスを通す(バイパス術),それと内科的内服薬治療があります. 内服治療は,もちろん外科的治療とセットになることもほとんどでしょう. 血管内

Accepted!

症例報告が掲載されることになりました. チェックしていただきましたH先生ありがとうございました. H先生の指摘の元,題名もインパクトあるものに変更いたしました. "Snake fang” sign without carotid stenosis on duplex ultrasonography indicates high risk of artery to artery embolic stroke いかがでしょうか. 蛇の牙サインって,おもしろそうでしょ? 内容は,機会があれば. まだまだ,書かなければならないネタがたくさんあるので,一つずつクリアします. その前に,International Stroke Conference in HAWAIIに参加するためのネタを準備しなければ.あと,1週間しかない.

ついに抗凝固3姉妹そろい踏み

ダビちゃん(ダビガトラン:商品名プラダキサ) リバ子(リバーロキサバン:商品名イグザレルト) アッピー(アピキサバン:商品名エリキス) アッピーが,再修業を命じられていましたが,先日アメリカで,「非弁膜症性心房細動に対する脳梗塞発症の一次予防および二次予防」に対して,そろい踏みが認められました. ガイドラインです. Stroke誌から. http://my.americanheart.org/professional/ScienceNews/Oral-Antithrombotic-Agents-for-the-Prevention-of-Stroke-in-Nonvalvular-AF_UCM_442162_Article.jsp 悪ファリンと,いい戦いをしたことが認められた結果です. それぞれの推奨度 悪ファリン:Class 1, A ダビちゃん:Class 1, B アッピー:Class 1, B リバ子:Class 2a, B ちょっと,リバ子の戦いは厳しかった. もちろん,3姉妹の出番に制限はあります. ダビちゃんの記述 悪ファリンと同様に,ダビちゃんは非弁膜症性心房細動に対する脳梗塞や全身の塞栓症予防に有効だけど,機械弁や重度の弁膜症を合併している人には,基本的に使っちゃだめ. Ccr < 15ml/minや重度の肝障害の人にもだめ. 言及すべきこと. 1 3姉妹の直接対決はまだない. 2 高いから,ちゃんと継続して内服していけるのか不安 3 はっきりとしたリバース薬(抗凝固が効きすぎているのを効かなくする薬)がない. このガイドラインでの特徴は,「量」に対して言及してあること. ダビちゃん75mg1日2回はCcr 15-30ml/minの人に対して,有効かもしれないけど,よくわかんない. ちなみにアメリカで認められているのは150mg1日2回だけ.日本もそうですですが,110mg1日2回処方もよくされています. アッピー5mg1日2回はいいけど,80歳以上のご高齢の方や,体重60kg未満,Cr1.5mg/dl以上の人では,悪ファリンの方がいいのでは? そんな時は,2.5mg1日2回も選択肢ですが,よくわかんない. 日本人は60kg未満たくさんいるんですけど.私は使え

医療はラーメン屋といっしょ.

以前,私の大ボスがおっしゃっておられました. 正確な真意は違うかもしれないので,私の解釈を言うと, 「口コミって大切」 ってこと. 真面目に仕込みして,丁寧な接客をして,お店を奇麗にして,おいしいラーメンを出す. お客さんがお客さんを呼び,繁盛する. 簡単には繁盛しませんが. 長崎で脳卒中内科やるぞーっと,小さい声で宣言してから5年がたちました. 先日ご入院された患者さんの話. 「最近,長崎に引っ越してきました.子供の小学校に,お父さん,お母さんが病院の先生という子が結構います.その方と話す機会があり,自分が脳梗塞を以前起こしたことがあると話をすると,「大学にはいい脳卒中チームがあるから,何かあったら大学に行った方がいいですよ」と言われました.」 と言われました. なかなかこっそりうれしいです. 同業者に認められるというのは,本当にちゃんとやっている(つもりです)ことを表していることが多いと思います. 中からみると,いろいろ見えますからね. 言っておきますが,これは私たち内科医だけのことではないです. 脳神経外科医,看護師,検査技師,リハビリスタッフ,ソーシャルワーカー,脳卒中チームの中核があってこそ,こういう言葉をいただけたわけです. ぼちぼち,がんばるぞー,と思った一日でした. 毎回一写真を目標にやっていたのに,今回写真がないのがいやだったので,じぶんの机を写真にとってみましたが,見栄えの悪さに,どうしようか悩みつつ,掲載.