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安定した冠動脈狭窄病変をどうする?

脳梗塞で入院された方で,頸部から脳血管に狭窄病変(動脈硬化で狭くなった)が見られた場合は,循環器内科にお願いして,冠動脈CTか心筋シンチを施行していただいています.

これがまた,所見がある率が高いのです.

「心臓は人間のエンジンだから,しっかり診てもらいましょう」

かくして,脳梗塞で入院した患者さんのうちの一部が心臓の評価,冠動脈カテーテル検査に進んでいくのであります.

そこから先は,循環器内科の先生方に治療方針を丸投げしているわけですが,丸投げしても,その後の治療について知っておくと,いい医者になれるだろうということで,ちょこっと勉強.

American Heart Associationの雑誌Circulation: Cardiovascular Interventionから,

"Percutaneous coronary intervention versus optimal medical therapy in stable coronary artery disease. A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials"

Pursnani S, et al “Percutaneous coronary intervention versus optimal medical therapy in stable coronary artery disease. A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials” Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 476-490.

安定した冠動脈疾患患者に対して,インターベンション(ステント留置とかバルーン拡張)すべきなのか,それとも内服治療だけでいいのか.

定義:「安定した冠動脈疾患患者」=「すくなくとも1週間以内に急性冠症候群をおこしていない患者」

過去の12トライアルをレビューしています.

日本の研究"JSAP (Japanese Stable Angina Pectoris)も含まれています.

結論:

狭心症状消失はインターベンション群の勝ち.(RR 1.20; 95% CI. 1.06-1.37)

しかし!!

primary endpoint である,「あらゆる原因の死亡」をふくめて,インターベンション群は優位性は示されなかった.

--あらゆる原因の死亡(RR 0.85; 95%CI. 0.71-1.01)

--心臓死(RR 0.7; 95%CI. 0.47-1.06), 5年以上経過観察(RR 0.70; 95%CI. 0.46-1.08)

--致命的でない心筋梗塞(RR 0.93; 95%CI. 0.70-1.24), 5年以上経過観察(RR 0.92; 95%CI. 0.67-1.27)

meta-analysisなので,いろいろ制限はあります(インターベンション施行決定の基準が違う,狭心症状の有無を明らかに示した研究は少ない)が,それらは結果に大きく影響は及ぼさないでしょう.


無症候性内頸動脈狭窄も内科的治療の進歩により,外科的治療の優位性がかなり低くなりました.

これもイノベーションの一つの形かもしれません.

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