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10月, 2013の投稿を表示しています

脳卒中は高次脳機能障害の宝庫

臨床的に脳を知りたければ、脳卒中診療に触れること。 脳卒中は脳のあらゆるところに起き得るので、いろいろな脳の症状が出現し得ます。 当たり前。 患者さんはその症状で大変なのは百も承知ですが、 この仕事を生業としている以上、「おもしろい」と思いながら、やっているわけで、 毎度毎度、その症状に「不思議だ。なんでだ?面白いなぁ」 というかんじになることしばしばです。 患者さんの昼食現場を撮影したこの写真。 左半側空間無視の患者さんの食事です。 おかゆさんは、おそらく看護師の促しで食べてしまっています。 左側を無視してしまい、おかず左半分と、ゼリーを残してしまっています。 お盆の上の左側すべてを無視しますが、何かの拍子に少し見えると、食べ始めて、 その結果、お皿の上で左半分を無視して、左側を残してしまうという感じになります。 見えているのに、認識できない。 一体どんな感じなんでしょう。 なったことがないのでわかりませんが、 患者さんは気づいていないので、苦に思っていないことがほとんどです。 右大脳半球の病変で起きます。 脳卒中患者さんでよくある症状で、飽きるほど診させていただいていますが、 相変わらず、 「面白いなぁ」と思いながら、診療させていただいています。

tPAとペナンブラ

tPA静注療法で症状の改善が得られなかったので、カテーテルを使った脳血管内治療に移行。 Penumbra (ペナンブラ) systemを使って、血栓を除去し、部分再開通が得られました。 と、スマートにできたように書きましたが、 いつも実際は、そんなにスマートにことが進むわけではありません。 途中で、不穏状態になって、頭をしきりに動かすようになったので、鎮静剤を多く使わざるを得なくなりました。 それにより、呼吸状態が悪化したので、気管内挿管をせざるをえませんでした。 なかなかスパっとできずに、多少時間がかかりました。 いつも、実際の臨床は、いろいろあります。

救急外来で手術するは、脳外科医。

硬膜下血腫の穿頭血腫洗浄ドレナージ術。 硬膜下血腫、脳の表面の出血です。 救急外来の小手術室で行っています。 吸入麻酔(普通の手術の時に使う麻酔)もあります。 硬膜下血腫。緊急の場合は、救急外来で、ドリルでグリグリ頭蓋骨に穴を開けて、血腫を出すことがあります。 脳外科医にとったら、 「そんなの普通でしょ」 かもしれませんが、 内科から見ると、 「すっげー、やっぱ外科医はカッコイイ」 かっこいいし、患者さんは良くなるし、言うことなし。 脳外科の手術はいろいろあります。 予定手術はもちろんありますが、緊急の手術も多いです。 50歳男性!右被殻(脳の比較的深い部分)出血100cc!! --緊急開頭血腫除去術。昼だろうが、夜だろうが。緊急だから。 急げ、急げ。 しかし、手術自体がリスクになるような、手術を躊躇するような患者さんにも手術をしなければならないことがあります。 84歳女性。もともと心臓病でワーファリン内服中。透析中。PT-INR 2.0(ワーファリンがよく効いていて、血液が固まりにくい状態)、左に脳出血100cc。瞳孔、左散大、右4mm。 家族は手術を希望。 左の病変は言語障害になり、理解や表現がむずかしくなる。出血の量が多いと手術しても、症状は改善しにくい。透析で、ワーファリン内服していて、頭を開いたら、血がだらだら出て止まりづらくなる。左の瞳孔が散大し、右も散大しかけている(脳損傷の度合いが強い) 家族は手術を希望。 ですので、手術。 救えないことはある。 でも、救えることはある。 今、目の前で死にそうな人を助けることができる。 その右手で。 左利きなら左手で。 いつも、カッコイイ脳外科医に感謝しております。

International Stroke Conference 2014 in San Diego!!

今年もゲットしました。ISC 2014発表のチャンス。 サンアントニオ、ロサンゼルス、ニューオリンズ、ホノルル International Stroke Conference 2013 in Hawaii 1st day で、今回はサンディエゴ。 5年連続ゲットだぜ。 「口演とポスターどっちでもいいぜ」 をクリックしていたので、内心ドキドキしていましたが。 ポスターでした。 気が小さいので、ちょっとホッとしました。 日本の脳卒中野郎の皆さんはいかがだったでしょうか? サンディエゴで会いましょう。 サンディエゴといえば・・・、なんでしょう? とりあえず海に行っとく? 泳げないけど。 ブログ、しばらく更新できていませんでした。 なぜなら、 今は、脳卒中学会総会の準備中です。締切間近。 まだ、内容が決まってない! そんな締切間近の日曜日20時。しこしこ、画像と格闘中。 ブログの更新なんてしている場合じゃなくってよ。 今年は、すでの看護師から発表2つ。薬剤師から発表1つあり。 すでに登録済み。 偉そうに、指導なんてさせていただいている場合じゃなくってよ。

脳波と格闘する研修医

脳卒中センターとはいえ、脳卒中以外の患者さんも診ることが多いです。 脳卒中疑いに混じっていることがあります。 今回は、脳卒中じゃないのはわかっていながら、「意識障害の原因が脳っぽいから」ということで、他院からご紹介をいただきました。 頼っていただいて、ありがたいことです。 脳波。 まずは自分で調べて。 わかんなくたって、まずは自分で考える。 「この波は、この教科書に載っている、この波に似ている」 で、指導医に報告。 「それゃ、アーチファクト(接触不良などによって間違って異常に見えた)」 と、ばっさり。 なんてことはしばしば。 珍しいことではありません。 でも、しかし、 それは、とっても大事なことです。 自分で調べずに聞く、「そりゃ、アーチファクト」とは大きな違いがあります。 身に染みるぅ。 この繰り返しが、未来の「医師力」につながります。 頭を使って、体をつかって、日々の診療にあたりましょう。 と、自戒の念も込めて。   彼の今の脳波、   humpが出ていませんように。

DPP4阻害薬。いい薬なんでしょうけど・・・。

Dipeptidyl peptidase 4 inhibitor。 初めて本名を知りました。DPP-4 阻害薬。 インクレチンの分解を阻害する薬。 インクレチン。 ある一定以上に血糖値が高まると、小腸から分泌され、インスリン分泌を促す奴。 つまり、DPP-4阻害薬は、 ある一定以上に血糖値が高まって分泌されるインクレチンの分解を阻害することによって、インスリン分泌をさらに促す薬。 もちろん、糖尿病の人に使う薬。 血糖が上がったら作用する薬なので、より生理的。 スルホニルウレア薬(SU薬)は空腹時の血糖を下げるので、低血糖が比較的起きやすい。 そのDPP-4阻害薬はたくさんあります。 糖尿病の専門家じゃないので、詳しくは知りませんが、10個弱。 それぞれの特徴はありますが、あまり血糖降下作用に差はないようです。 前置きが長くなりました。 そもそも、なぜ糖尿病を治療するのか、なぜ血糖コントロールが重要か? 将来の糖尿病合併症を予防するため。 糖尿病合併症とは、腎臓病、網膜症、末梢神経障害など、古典的な合併症も大切ですが、心臓血管病(冠動脈疾患)、脳血管障害などのほうが重要かもしれません。 糖尿病治療薬研究のエンドポイントは、「心血管死、冠動脈疾患、虚血性脳血管障害」となることがしばしばです。 はい、脳梗塞は重要な病気の一つと考えられます。 Scirica et al. NEJM 2013 Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus Saxagliptin 商品名 オングリザ 7番目のDPP-4阻害薬。 目的:オングリザが心血管病のリスクを下げるのか? 方法:無作為ランダム化、二重盲検 対象:16492人。オングリザと偽薬。平均追跡期間2.1年。 一次エンドポイント:心血管死、冠動脈疾患、虚血性脳血管障害 二次エンドポイント:一次エンドポイント+心不全による入院、冠動脈治療、脳血管障害、不安定狭心症 安全エンドポイント:膵炎、癌、汎血球減少、腎障害、肝障害など。 (膵炎や癌はDPP-4阻害薬との関連があるかもしれないし、ないかもしれないし。と言わ

The 6th Korea Japan Joint Stroke Conference 於 大阪

韓国と日本の共同学会。 もちろん脳卒中の。 6回目にして初めて参加しました。 お隣ですが、医療のシステムが違うようで、それが垣間見えた気がしました。 それが、間違っているかもしれないので、書くことはできませんが。 ただ、脳卒中が来る病院には相当来るみたいです。 2年の期間で、脳梗塞が1500人も来る病院がありました。 本当か? まぁ本当なんでしょうけど。 脳梗塞一歩手前、崖っぷち状態の一過性脳虚血発作。 脳卒中症状が、1日以内に消失する。 この一過性脳虚血発作、何が問題かというと再発が問題。 起こってすぐに再発する可能性が高いです。 で、脳卒中専門の病院へ行くべきなんですが、症状がないからということで、一般病院からの専門病院への紹介が少ないことが問題です。 一過性脳虚血発作(TIA)クリニック と銘打って、地域の一般病院にビラを配り、一過性脳虚血発作患者さんを見ていくと、 ちゃんと増えていました。 大切なことです。 多分来年は韓国だから、また参加してみようかな。 焼肉食べたいし。 脳外科の先生の口演です。 もちろん英語です。 前日夜はキッシュとワイン。 一人飲みは飽きました。 もっと脳卒中内科スタッフが増えて、何人かで学会参加ができるようになりますように(祈)。

ゆけ!ベッドサイドへ

ある日のこと。 脈拍150/分の頻脈になっていた患者さん。 主治医は研修医。 頓服でワソランを内服しましょう。脳梗塞急性期だからストレスもかかっているし、それで様子を見て、脈拍調節は検討しましょう。 処方して、看護師さんにお願いして、早めに内服してもらっておいてください。 と、朝のラウンドで決定。研修医よろしく。 1時間ぐらいして。この患者さんがいる病棟とは違う病棟にて(大きな病院なので結構離れています)。 私「脈拍どうなった?」 研修医「あっ、見てないです。」 私「うーん。自分がした治療を見届けたほうがいいよ。どうなったか気にならない?」 研修医「すいません。見てきます。」 ・・・3分後。 研修医「見てきました。内服が8時30分で、10時の脈拍はまだ150でした。」 私「??早いですね。もしかして電子カルテで確認しただけでは?」 研修医「はい・・・、?」 私「ベッドサイドに行って、患者さんを診て、評価しなさい。そんな確認の仕方はよくないです」 電子カルテって便利です。色んな所で患者さんの状況がわかるようになりました。 アメリカでは、病院外でもカルテを閲覧することができます。 便利なものには、必ず、いいこととわるいことがあります。 電子カルテを見たって、患者さんを診たことにはならない。 もう、ぜんぜん違う。 ベッドサイドで患者さんに触れて初めて、「診た」ことになります。 現れる数字を、医師の診察を介して、医療の数字にしなければなりません。 診察技量もその積み重ねで上達していきます。 積み重ねです。 最初から、スーパードクターにはなれません。 どんな神の手ドクターも、最初は糸結びから始めたはずです。 「ベッドサイドに、おいきなさい」 この写真は関係ありません。

脳卒中ナースの臨床研究

本日は時々開催の脳卒中カンファレンスの日。 脳卒中内科医、脳神経外科医、看護師、リハビリテーションスタッフが集まって、脳卒中診療に関して、教えつつ、教えられつの会。 今日も楽しかったです。 まずは、脳神経外科の若い先生から、脳外科術後の髄液鼻漏について、教育講演をいただきました。 内科医にとっては、わからないところなので、非常に勉強になりました。 術後早期の髄液鼻漏は様子観察。数日後の髄液鼻漏は要注意。 頭蓋底の孔を筋肉片も使って埋めるなんて知らなかった。 若い先生なのにわかりやすい発表でした。 次はリハビリテーションスタッフから。 脳卒中急性期患者さんは、飲み込みが悪いことがよくあります。 飲み込みも片方が麻痺しちゃう。 しかし、だからといって食べさせないのは、非人間的。 食べられる人と食べられない人を確実に分ける必要がある。 (食べられないのは最初だけで、基本的には後日食べられるようになることが多いです) 最初から食べられるかどうか判断する方法は、基本的には水飲みテスト。 水を飲ませてみて、その時の状態をいくつかの項目でチェックします。 一番信頼度が高いのは、評価者の「経験」です。 ちゃんと、たくさん、患者さんを診させていただいていると、だいたい食べられそうか、そうでないかわかります。 うちの看護師たちは、だいぶ経験を積んだので、よくわかっています。 とはいえ、そんなに経験者でなくても、問題なく、食べられるかそうでないかを判断する評価法が必要、という話をしてもらいました。 そりゃそうだ。 今度、話し合いましょう。 脳卒中病棟看護師からは、脳卒中患者の生活の質について。 救命ナースからは、来院からtPA静注療法(脳梗塞の治療薬)開始までを、これまで以上にスピードアップ。そのために看護師ができること。 を話してもらいました。 どちらも、とてもおもしろいです。脳卒中病棟看護師の研究は特に看護師特有の目線が重要な研究なので、我々医師にとって、勉強になりました。 Let's go 脳卒中学会総会。 この結果から興味深い発見があったので、続きの研究をしようかなぁと画策しています。 救命ナースの研究は、早速効果が出ていま