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脳・心・末梢血管

全身の血管はつながっています.

ですので,頭は頭の血管,心臓は心臓,・・・・

なんて分けて考えるのはナンセンス.


例えば,私たち脳卒中内科グループは毎日,カンファランス(みんなで患者さんの方針検討)をして,回診(患者さんを診て回る)をしています.

その毎日の記事に,「心・腎・末梢血管」という項目を設けて,その問題点や現状を記載するようにしています.できるだけその患者さんにおいて,血管病リスク管理の抜けがない様にしているわけです.

当たり前すぎて,抜け落ちると,「ぼんくら」ドクター.

今回の講演会は,

小倉記念病院循環器内科部長 横井宏佳先生

九州医療センター 脳血管内科 科長 矢坂正弘先生

お二人にご講演をいただくという,マニア垂涎の,ではなく,とても貴重でありがたい企画でした.

ありがとうございました.
とてもおもしろかったです.

横井先生の話.

脳血管障害からみると,末梢血管障害は20%ぐらいです.

ちなみに,末梢血管障害とは足の血管がつまってしまうことです.それで,ある程度歩くと,足が痛くなります.それで,歩けなくなる.傷ができると血管から栄養がいかないので,治りづらくなる.

血管病の末期像と私は判断しています.

それを裏付けるように,横井先生は,「重度の末梢血管障害患者は,大腸癌患者より,予後が悪い(平たく言うと,「死にやすい」ということ)」とおっしゃっていました.

これって,驚きです.癌じゃないのに.

また,足の血行障害で足の切断を余儀なくされるのは,4%以下とのことでした.

少ないです.意外と.

昔,といってもそんな大昔ではない昔.

演歌歌手の村田英雄さんは,糖尿病による足の動脈硬化で,足の切断をされています.

・・・・・,今だったら・・・・?

それはわかりませんが,足の血管治療も進歩しています.もしかしたら?という素人考えです.

足の血管治療は,つまった血管を再度通す(血管内治療)とつまったところの横にバイパスを通す(バイパス術),それと内科的内服薬治療があります.

内服治療は,もちろん外科的治療とセットになることもほとんどでしょう.

血管内治療は,ステントという血管を広げて保持する器具をいれることが主な治療です.

新しいステント(薬剤溶出ステント)が,なんとアメリカに先駆けて承認される予定とのことでありました.

世界的に行った臨床研究で登録施設トップ10に日本の病院が2つ(小倉記念病院ともう一つ)とのことでした.人口を考えるとすごいかもです.

足の切断4%未満,は治療のinnovation(技術革新)により得られているよい影響なのでしょう.

次に,そのinnovationにスポットライトをあてて,講演をされたのは矢坂先生です.

治療のinnovationが患者さんに福音をもたらす.

新規抗凝固薬の話.

前提の話.

脳出血の発症要因は,まず高血圧,そして高血圧,高血圧.

高血圧が最も重要です.

さらに,実は脳梗塞を起こしたことがある人の脳出血発症リスクも高い,ということが分かっています.

脳梗塞を発症したら,次の予防で血液サラサラ薬「抗血小板薬」や「抗凝固薬」を開始します.

・・・・,もしかしたらこれらの薬が脳出血を起こしているのかもしれないですし,少なくとも脳出血を止まりづらくしているでしょう.

実際,抗血小板薬や抗凝固薬を内服している人の脳出血は20%ぐらい?でした.

脳出血は脳梗塞より死にやすい病気です.

当院の死亡率.脳梗塞5%.脳出血13%.

で,新規抗凝固薬の話.

ダビガトランはワルファリンと同様の,非弁膜性心房細動患者の脳梗塞や全身塞栓症を予防します.

ワルファリンと同様か,もしくは少しいいようです.

さらに,脳出血リスクがワルファリンよりも低いことが分かっています.

脳には組織因子が多くて,この組織因子は第7因子と結合して,凝固カスケードが始まります.

ワルファリンはこの第7因子をかなり抑制します.

ダビガトランはまったく抑制しません.

それが,ワルファリンで脳内出血が多く,ダビガトランで少ない理由と考えられています.他の新規抗凝固薬も同様です.

新規抗凝固薬開発というinnovationで,ワルファリンによる二律背反構造(ワルファリンが効き過ぎると脳出血,効かな過ぎると脳梗塞)が打開された,と話されていました.

しかし腎機能の問題とか,日本人における適切な量の問題とか,いろいろまだまだ問題はあります.

とても勉強になりました.
今日は健康診断がありました.
左眼の視力が0.7から1.2にレベルアップしていました.
良い日でした.

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