スキップしてメイン コンテンツに移動

MRIから出てきたら心不全になってました

ある土曜日の夜のこと.

脳卒中発症から2時間ということで,琥珀エビスを開けようとしていた私は,自宅から病院へ.

tPAかも
(※tPA静注療法:発症4時間30分以内にのみ行うことができる脳梗塞の点滴治療)

自宅から病院が早足10分という中途半端な距離で,ちょっと歩けば残り8分になるから,タクシー捕まえずじまいになりがち.

この件はどうでもよくて.

救急外来に到着すると,比較的若年の方で,来院時は症状がなくなっていたということでした.

心臓弁膜症と心房細動をずいぶん以前に指摘され,その後病院受診をしていないとのことでした.

心臓精査は必要ですが,神経症状がなくなってよかった,よかった.

「治療の重要性とかわかってもらわんばいけんですねぇ」とか偉そうなことを話しながら,

「じゃぁ,私はMRIが終わったら頸部血管エコーして帰ります.心臓は問題ありそうだから,今回は循環器内科の先生に心エコーをしてもらっとってください.」

と,患者さんのMRIからの帰りを待ってました.

こんな感じで.
Vivid スタンバイ.

15分ほど待って,自動ドアの開く電子音と共に,ガタガタガタっと,ストレッチャーベッドが入ってくる音.そして,脳外科UG先生の声

「リザーバーマスクで10リットル酸素投与!」

頭をよぎった.

「確かにMRI中SpO2が94%と低めだった.まさか」

そのまさかでした.

起座呼吸で頻呼吸,SpO2 89%.

急性心不全.

すぐにフロセミドを静脈注射.尿バルーンを入れようとしましたが,「この向きがいい」と座って右向いたまま.この姿勢だとちょっと入れられないです.

どうしたもんかと,思案していると,発汗が著明に.

「点滴ルートのテープが汗でとれちゃってますね」

と,看護師がテープを直しているうちに,患者さんの意識が低下・・・・.

座位のまま,バックバルブマスク.

座位のまま,BB先生が気管内挿管.人口呼吸器管理.

で,やっとレントゲン.


立派な,肺うっ血と肺水腫でした.

心不全ということで来院した人をむやみに,臥位にすると心不全を悪化させるから,点滴の針を刺したり,いろいろ検査する時は座位のままでやる,ってことはわかってました.

でも,まさか歩いてきた脳卒中患者さんが,ここまで急激に心不全を悪化させるとは思っていませんでした.

点滴は1時間で100mlから200mlぐらい入っていました.MRI検査中は仰臥位でした.来院時の血液ガスでPaO2 67torrでした.若干,太めの方だったので,この値は弁膜症もあり許容範囲かな?と思ってました.

複合的要素でしょうか?

いろいろなことがあります.

コメント

  1. すみません。久々の投稿します。
    チェックしてました…書く余裕がなかったです…

    まさかでした…
    そんなギリギリの心不全が隠れているとは露も思わず。
    たしかにSpO2はちょっと低いなとは思ってましたが…

    ほんとにMRIの中で急変しなくてよかったです。
    勉強になりました。
    来ていただいてて助かりました。
    おつかれでした。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます.

      患者さんは大変ですけど,我々医師はいろいろなところに顔をだしていると,いろいろな経験ができます.

      次の患者さんでは,こうしよう.とか考えます.

      経験できてよかったです.

      おつかれさまでした.

      削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

NIHSSスコアの基本を再確認。

※付録 NIHSSスコア NIHSSスコアを作ったLyden先生がNIHSSスコアについて書いています。 NIHSSスコアを評価すると、ときどき、 「これ、何点にすべきですか?」 なんて、看護師や、研修医から聞かれて、 「まぁ、1点と2点の間って感じかな?」 と、ぼかしたり、 「思うとおりに評価していいよ。それが、大切だ!」 と、妙に「お前を信頼しているぜ」感を醸し出したりして、 その場を切り抜けていました。 それも、間違いだとは思いませんが、「もっとスッキリしたい」とみんな思っていたのだと思います。 で、このもやもや感を少しでも解消できるかと思って、 Lyden et al. Stroke. 2017;48:513-519 Using the National Institutes of Health Stroke Scale を読んでみましたが、 基本、NIHSSスコアが作られた歴史 的な話ばかりで、 スッキリせず。 期待がずれていたのは、こっちの問題です。 それでも、2つ再確認出来たことがありました。 NIHSSスコアを評価するときのルール すべての項目で、Score what you see, not what you think (診たものを評価する。検者が考えたものではない) すべての項目で、Score the first response, not the best response, except item 9 best language (最初の反応を評価する。ベストの反応ではない。でも、言語の評価はベストの反応で) すべての項目で、Do not coach (コーチしちゃだめ) 項目1aで、May be assessed casually while taking history (会話している間に評価可能でしょう) 項目2で、Only assess horizontal gaze (水平方向の眼球運動のみ評価) 項目5 and 6で、Count out loud and use your fingers to show the patient your count (声を出して数字をカウントし、患者の前で指を折ってカウントすることもす

3度めの正直。日本神経学会専門医合格。

第40回神経専門医試験に合格しました。 合格をいただきました。 3度めの正直なのです。 第38回☓、第39回☓、で今回。 試験結果が出るまで、 「3度目の正直」:「2度あることは3度ある」=1:5 ぐらいの心境でした。 2回不合格だったことは、少しだけ恥ずかしいですが、仕方ありません。 それが、現実ですし、逆に、得られたことも大きかったです。 神経診察を基本からやり直すと、より深く、それぞれの診察の意味と、的確な総合的診断に結びつくことを理解することが出来ました。 疾患についても勉強しなおしました。 あたり前ののことですが、でもそのあたり前(基本)が重要なんですね。 多くの神経内科医は知っていることなのでしょうけど。 今回も試験当日は20分ずつ2部屋で面接試験がありました。1つ目の部屋では、診察の実技です。 面接官の先生はiPadを見ながら、どれを質問しようか考えていらっしゃいました。 おそらく、神経診察の到達目標みたいなのがあって、そのうちの1つか、2つを受験者にさせているのだと思います。 「右麻痺があって、複視がある人の診察をしてください。あっ、意識障害も有るということで」 横に座っている若いお兄ちゃんを診察させていただくことになります。 いつも(3回目なので)思うのは、この普通の人を、病気の人としてイメージしながら診察することの難しさです。 診察しても、麻痺の症状をしてくれるわけではありません。「ものが二重に見える」と訴えてくれるわけではありません。もちろん、意識清明です。 脳神経の2番から順に診察をしていくと、省くことができず、そのまま脳神経診察終了。 ベッドに寝かせて、運動の診察をして、チラッと試験管をみても、何もおっしゃらないので、そのまま感覚、協調運動の診察。チラっと試験管をみても、何もおっしゃらないので、そのまま腱反射、病的反射の診察。そこで、試験管から一言。 「あのー、意識障害もありましたよね」 「あっ。」 かるく、混乱して、最後まで意識障害の診察をせずに終わってしまいました。 やってしまった~と思いつつも、意識の診察を「わかりますか〜」なんて、質問したところで、 「ま、それはいいので」「意識障害があれば、髄膜刺激徴候も必ず診ますよね」

足モミモミポンプ.あれ,意味あるの?

足の静脈にできる血栓.深部静脈血栓症. これが,流れて肺の血管に詰まると, 肺塞栓症. 命にかかわる病気です. 救急で入院すると,看護師に聞かれます. 「フットポンプつけますか?」 また,その書類ももろもろあります. これがフットポンプです. これで静脈血栓を予防します. これって,意味あるんですか? 意味あります.手術後の患者さんに. これまで20以上のランダム化比較試験があり,手術後にフットポンプをつけることは,明らかに静脈血栓の発生率を減らします. じゃぁ,他の状態では? 例えば・・・, 脳卒中. 麻痺があったら,静脈血栓は出来やすいです.静脈の流れが悪くなるから. これまで,急性期脳卒中における,この足モミモミフットポンプの有効性を調べたの研究は2つぐらいしかなくて,しかも有効性を見出すことができませんでした. でも,やっぱり,フットポンプつけています. 良さそうだから. ということで,それを調べている今回の論文. CLOTS (Clots in Legs Or sTockings after Stroke) trial Lancet 2013 CLOTS Trial Collaboratrion. Effectiveness of intermittent pneumatic compression in reduction of risk of deep vein thrombosis in patients who have had a stroke (CLOTS 3): a multicentre randomised controlled trial 多施設ランダム化比較試験です. 対象患者: 急性期脳卒中 .トイレまで自分で歩いていけない人. インターネット登録すると,足モミモミフットポンプグループと,しないグループに分けられます. この2つのグループで Primary outcome: 30日以内の深部静脈血栓(大腿,膝窩静脈) Secondary outcome: 30日以内の死亡,深部静脈血栓(大腿,膝窩,下腿の静脈),肺塞栓,足モミモミフットポンプの合併症(傷,転倒) 結果 Primary outcome 足モミモ