大学病院で診療していると、癌関連の脳梗塞患者さんを診療させていただくことは比較的多くあります。
癌細胞が血栓形成を誘発する物質を出しているから。
特に静脈血栓が多いことは知られています。
これまで、ヘパリンは有効かもしれない、とされていましたが、明らかなエビデンスではありませんでした。
癌は、
凝固カスケードを開始させる「組織因子(Tissue factor)」を放出したり、
ムチンがL-セレクチンやP-セレクチンと結合して、微小血栓を作ったり、
低酸素が内皮や血小板を活性化したり、
システインプロテアーゼが第Ⅹ因子を活性化したり、
いろいろ、血栓傾向に寄与しています。
ヘパリンは、そのいろいろに作用するので、効く、という理屈。
Varki etal. Blood 2007 Trousseau's syndrome: multiple definitions and multiple mechanisms
抗血小板薬やワルファリンは「いろいろ」には作用しないので、
効かない、という理屈。
海外では低分子ヘパリンの皮下注射 Dalteparin(自己注射)が使われますが、
日本ではDalteparinは保険適応ではないので、仕方がないので
バイアスピリンを使ったり、ワルファリンを使ったり、使わなかったり、注射するのにコツ(エア抜き)がいるけどヘパリン皮下注を患者さんが自己注射したり。
このような状況で、
みんな思います。
なんか突破口はないかなぁ。
経口直接抗凝固薬DOAC、どんどん使われてるけど、癌関連静脈血栓塞栓症にはどうなんだろ。
理屈では効かないけど・・・。
経口直接抗凝固薬DOACが、幅を利かせて、5年強。
非弁膜症性心房細動の塞栓症予防や、静脈血栓塞栓症、心房細動合併冠動脈形成術後の塞栓症予防など、徐々に適応を広げて来ましたが、
今回は、さすがに
だめじゃないかなぁ、と個人的には思っていました。
だって、DOACはちょーピンポイントに作用する薬だから。
ダビガトランは第Ⅱ因子にピンポイント
リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンは第Ⅹ因子にピンポイント
(ピンポイントっていっぱい書いていると、ルー大柴さんの植毛のCMを思い出しました)
癌による血栓形成いろいろ作用には対処できないでしょう。
しかし、結果はそこそこGOODでした。
エドキサバンはDalteparinに非劣性を示しました。
抗凝固薬の「血栓形成予防」と「出血」というTrade-offの関係が、非劣勢という結論を導き出した感じです。
Raskob et al. NEJM 2018 Edoxaban for the Treatment of Cancer-Associated Venous Thromboembolism.
非盲検ランダム化比較試験。
対象:膝窩静脈より近位の静脈血栓が見つかった癌患者(症候性、無症候性どちらも)
エドキサバンはDalteparinに対して非劣性を証明できるか。
522人はエドキサバン vs 524人はDalteparin
primary outcome:静脈血栓再発 or major bleeding
secondary outcome:
1. 静脈血栓再発
2. major bleeding など
APTTの値がよくわからないのですが、Dalteparinは通常用量だろうと思います。
Dalteparinの量を増やしても、理屈では、結局、
Dalteparin群で静脈血栓塞栓症再発のリスクが減り、出血が増えて
やはりエドキサバンと変わらない
という結果になるのでしょう。たぶん。
個人的には驚きました。
癌関連血栓症にはピンポイントで抗凝固に作用するDOACには不利だと思っていました。
この結果から、癌があっても、静脈血栓にDOACはいいのかもしれないと認識を改めました。
ただし、私達が診療させていただくのは
脳梗塞を起こした癌患者さんです。
散在性の動脈塞栓を起こす狭義のTrousseau's syndromeと解釈しています。
(勝手に狭義と言っています。定義があるわけではありません。)
癌が、動脈内でも血栓形成に関与している可能性があるので、
ピンポイントのDOACは不利なのかもしれません。
そうじゃないかもしれません。
私達が「狭義のTrousseau's syndrome」と判断する患者さんは、基本的に、生命予後がかなり厳しい人ですので、前向き研究は難しいところがありますが、後ろ向き研究ででもデータが必要と思います。
癌細胞が血栓形成を誘発する物質を出しているから。
特に静脈血栓が多いことは知られています。
これまで、ヘパリンは有効かもしれない、とされていましたが、明らかなエビデンスではありませんでした。
癌は、
凝固カスケードを開始させる「組織因子(Tissue factor)」を放出したり、
ムチンがL-セレクチンやP-セレクチンと結合して、微小血栓を作ったり、
低酸素が内皮や血小板を活性化したり、
システインプロテアーゼが第Ⅹ因子を活性化したり、
いろいろ、血栓傾向に寄与しています。
ヘパリンは、そのいろいろに作用するので、効く、という理屈。
Varki etal. Blood 2007 Trousseau's syndrome: multiple definitions and multiple mechanisms
抗血小板薬やワルファリンは「いろいろ」には作用しないので、
効かない、という理屈。
海外では低分子ヘパリンの皮下注射 Dalteparin(自己注射)が使われますが、
日本ではDalteparinは保険適応ではないので、仕方がないので
バイアスピリンを使ったり、ワルファリンを使ったり、使わなかったり、注射するのにコツ(エア抜き)がいるけどヘパリン皮下注を患者さんが自己注射したり。
このような状況で、
みんな思います。
なんか突破口はないかなぁ。
経口直接抗凝固薬DOAC、どんどん使われてるけど、癌関連静脈血栓塞栓症にはどうなんだろ。
理屈では効かないけど・・・。
経口直接抗凝固薬DOACが、幅を利かせて、5年強。
非弁膜症性心房細動の塞栓症予防や、静脈血栓塞栓症、心房細動合併冠動脈形成術後の塞栓症予防など、徐々に適応を広げて来ましたが、
今回は、さすがに
だめじゃないかなぁ、と個人的には思っていました。
だって、DOACはちょーピンポイントに作用する薬だから。
ダビガトランは第Ⅱ因子にピンポイント
リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンは第Ⅹ因子にピンポイント
(ピンポイントっていっぱい書いていると、ルー大柴さんの植毛のCMを思い出しました)
癌による血栓形成いろいろ作用には対処できないでしょう。
しかし、結果はそこそこGOODでした。
エドキサバンはDalteparinに非劣性を示しました。
抗凝固薬の「血栓形成予防」と「出血」というTrade-offの関係が、非劣勢という結論を導き出した感じです。
Raskob et al. NEJM 2018 Edoxaban for the Treatment of Cancer-Associated Venous Thromboembolism.
非盲検ランダム化比較試験。
対象:膝窩静脈より近位の静脈血栓が見つかった癌患者(症候性、無症候性どちらも)
エドキサバンはDalteparinに対して非劣性を証明できるか。
522人はエドキサバン vs 524人はDalteparin
primary outcome:静脈血栓再発 or major bleeding
secondary outcome:
1. 静脈血栓再発
2. major bleeding など
Primary outcome、非劣性を証明 |
静脈血栓再発予防効果はエドキサバンに軍配 |
Major bleedingのリスクについてはDalteparinに軍配 |
APTTの値がよくわからないのですが、Dalteparinは通常用量だろうと思います。
Dalteparinの量を増やしても、理屈では、結局、
Dalteparin群で静脈血栓塞栓症再発のリスクが減り、出血が増えて
やはりエドキサバンと変わらない
という結果になるのでしょう。たぶん。
個人的には驚きました。
癌関連血栓症にはピンポイントで抗凝固に作用するDOACには不利だと思っていました。
この結果から、癌があっても、静脈血栓にDOACはいいのかもしれないと認識を改めました。
ただし、私達が診療させていただくのは
脳梗塞を起こした癌患者さんです。
散在性の動脈塞栓を起こす狭義のTrousseau's syndromeと解釈しています。
(勝手に狭義と言っています。定義があるわけではありません。)
癌が、動脈内でも血栓形成に関与している可能性があるので、
ピンポイントのDOACは不利なのかもしれません。
そうじゃないかもしれません。
私達が「狭義のTrousseau's syndrome」と判断する患者さんは、基本的に、生命予後がかなり厳しい人ですので、前向き研究は難しいところがありますが、後ろ向き研究ででもデータが必要と思います。
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