心房細動が原因の脳梗塞.
その予防に,心房細動のリズムコントロール(不整なリズムを起こさないようにする)がいいのか,レートコントロール(心拍数を調整する)がいいのか.
Tsadok et al. Circulation 2012 Rhythm versus rate control therapy and subsequent stroke or transient ischemic attack in patients with atrial fibrillation.
この結果,個人的にはびっくりでした.
心房細動のリズムコントロールは,脳梗塞予防において,効果がないと思っていたから.
実際,短期死亡率や脳卒中発症においては差がないことが報告されていました.
AFFIRM (Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Sinus Rhythm Management)
対象:
ケベックに住む65歳以上.1999年~2007年までに心房細動と診断された人
個人的にケベックに憧れがあります.理由は自分でもわかりません.カナダなのにフランス語の町.
エンドポイント:
脳梗塞,一過性脳虚血発作発症率をリズムコントロールとレートコントロールで調べた.
結果:
リズムコントロール群(16,325人)
レートコントロール群(41,193人)
平均追跡期間は2.8年(最長8.2年)
両群ともワーファリンを内服していたのは約59%,抗血小板薬は30%ぐらいで差はなかった.
※CHADS2 score: うっ血性心不全=1, 高血圧=1, 75歳以上=1, 糖尿病=1, 脳梗塞もしくはTIAの既往=2
つまりリズムコントロールをされた人たちはリスク低めってことです.
多変量解析の結果,
考察:
なぜこれまでの報告と違って,リズムコントロール群における脳梗塞またはTIA発症予防における優位性が示されたか.
-今までの研究はランダム化コントロールstudy.今回は,population-based 観察研究.
-今回の観察期間は長い.
-今回の研究でワーファリン内服はリズムコントロール群,レートコントロール群変わらず60%ぐらい.
--過去の研究では2群間で少し差があったりする.
今回の結果は,実際の臨床の場でのデータを示したという点において,大きな意義のあるものだと思います.
患者さんの治療は研究を前提としていないので,その点のバイアスが排除されています.
でも,根本的なことを知りたい.
なぜ,リズムコントロールがよかったのか?
薬剤単体の影響ではないと思われます.
心房細動が続けば続くほど,左心耳が良からぬことになるような気がする.
その予防に,心房細動のリズムコントロール(不整なリズムを起こさないようにする)がいいのか,レートコントロール(心拍数を調整する)がいいのか.
Tsadok et al. Circulation 2012 Rhythm versus rate control therapy and subsequent stroke or transient ischemic attack in patients with atrial fibrillation.
この結果,個人的にはびっくりでした.
心房細動のリズムコントロールは,脳梗塞予防において,効果がないと思っていたから.
実際,短期死亡率や脳卒中発症においては差がないことが報告されていました.
AFFIRM (Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Sinus Rhythm Management)
対象:
ケベックに住む65歳以上.1999年~2007年までに心房細動と診断された人
個人的にケベックに憧れがあります.理由は自分でもわかりません.カナダなのにフランス語の町.
エンドポイント:
脳梗塞,一過性脳虚血発作発症率をリズムコントロールとレートコントロールで調べた.
結果:
リズムコントロール群(16,325人)
レートコントロール群(41,193人)
平均追跡期間は2.8年(最長8.2年)
両群ともワーファリンを内服していたのは約59%,抗血小板薬は30%ぐらいで差はなかった.
- CHADS2 score >=2 は,リズムコントロール群で少なかった(58.1% vs 67.0%, p<0.001)
※CHADS2 score: うっ血性心不全=1, 高血圧=1, 75歳以上=1, 糖尿病=1, 脳梗塞もしくはTIAの既往=2
つまりリズムコントロールをされた人たちはリスク低めってことです.
- 補正前における脳梗塞またはTIAの発症率はリズムコントロール群で低かった.(100人当たり1.74/年 vs 100人当たり2.49/年, p<0.001)
- その傾向はCHADS2 score >=1において顕著であった.
多変量解析の結果,
- すべての患者において,脳梗塞またはTIA発症リスクは,リズムコントロール群で有意に低かった.
- CHADS2 score =1または>=2の患者においては,リズムコントロールが脳梗塞またはTIA発症リスクを低減した.(CHADS2 score =1, ハザード比 0.80, 95%CI 0.68-0.93; CHADS2 score >=2, ハザード比 0.84, 95%CI 0.77-0.93)
考察:
なぜこれまでの報告と違って,リズムコントロール群における脳梗塞またはTIA発症予防における優位性が示されたか.
-今までの研究はランダム化コントロールstudy.今回は,population-based 観察研究.
-今回の観察期間は長い.
-今回の研究でワーファリン内服はリズムコントロール群,レートコントロール群変わらず60%ぐらい.
--過去の研究では2群間で少し差があったりする.
今回の結果は,実際の臨床の場でのデータを示したという点において,大きな意義のあるものだと思います.
患者さんの治療は研究を前提としていないので,その点のバイアスが排除されています.
でも,根本的なことを知りたい.
なぜ,リズムコントロールがよかったのか?
薬剤単体の影響ではないと思われます.
心房細動が続けば続くほど,左心耳が良からぬことになるような気がする.
AFFIRMでの結果は短期予後エンドポイントを死亡としていましたが、今回の研究は脳血管イベントとしているとことが、非常に参考になります。心臓外科としての、経験的な印象と機序を考えると、1.af による心房筋のdistension, remodeling で心房径が拡大してくること 2.心房拡大により心室の拡張の低下、心室流入効率、速度の低下 3.af, 心房拡大による血液移動のムラにより同じINRコントロールでもSRと比較すると効果に差が出る可能性が考えられます。
返信削除今回の研究からはリズムコントロールが良いように思いますし、経験的にも抗不整脈剤を使用してもSRを維持する方が生活の質という面で良い印象です。ただし、AFFIRM の結果からは、抗不整脈剤の副作用としての不整脈によるイベントが増えており、総死亡という意味では、必ずしもリズムコントロールが良いとは言えないと思います。特に心機能低下、腎不全例では抗不整脈剤投与は非常に危険です。CHADS2でC,Aは要注意ですし、Kも必要かもしれません。毎度、エビデンスのない話で申し訳ありません。
ありがとうございます.
削除エンドポイントを脳血管イベントとしているところが「みそ」ですね.
エンドポイントが死亡となると少し違ってきます.
そうなんですね.やっぱり,抗不整脈は催不整脈性があったり,で問題もありますね.
この論文でリズムコントロールがいいなら,長期予後をみているのに,どうしてリスクの低いCHADS2 0で有意差がでなかったのでしょう.
CHADS2 0なら,「若くて,血圧も高くなくて,心不全になったこともない」人です.
そんな人にこそ,長い期間心房に負担をかけないようにするリズムコントロールが脳梗塞予防にいいような気がします.
でも差がありませんでした.
全体の10%ぐらい(1000人vs 4000人)という数が少ないからでしょうか?
なぞ,だけど,考えることはおもしろいですね.
みる側面を変えると結果も変わってくる.
って感じでしょうか.
コメントありがとうございました.とても,とても,勉強になりました.
こちらこそ、色々考える機会を頂き、有難うございます。毎回勉強になります。
返信削除いつもありがとうございます.
削除考察が鋭くて面白いです.エビデンスレベル"Z"ですが.
それは冗談として,
考えることが大切だな,といつも考えさせられます.
これからもよろしくお願いします.