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静脈血栓症にアピキサバン

アッピーの話.

深部静脈血栓症や肺塞栓再発または予防に有効か?

New England Journal of Medicineから
Agnelli G, et al "Apixaban for extended treatment of venous thromboembolism" New Engl J Med 2012; DOI: 10.1056/NEJMoa1207541.

深部静脈血栓症や肺塞栓を起こした人でワルファリンを中止すると6-10%が再発します.
さらに心筋梗塞や脳卒中,血管死を起こしやすい・・・.

でも,ワルファリンを続けるのは大変.採血による継続的なPT-INRチェック(月1回ぐらい)

出血を嫌って,ワルファリンを減らすと,あたりまえだけど,効果が下がる.


ワルファリン治療6~12カ月が終了した人にアッピー,2.5mgまたは5.0mgをためしてみよう.

controlはプラセボ(偽薬).

Intention to treatで有効性を検証しています.
最初に割り振った患者すべてを母数として検討.途中で除外された患者もひっくるめて.

主要「有効性」アウトカム:症候性の再発性静脈血栓またはあらゆる原因の死亡

主要「安全性」アウトカム:主要な出血
(ヘモグロビン2g/dl以上下がる,輸血が2単位以上必要,臨床的問題になる場所,死因となる)

12か月内服を継続します.

結果

アッピー2.5mg, 5.0mg, プラセボそれぞれ800人ぐらい.

再発性の静脈血栓またはあらゆる原因の死亡

2.5mアッピー:3.8%,5.0mgアッピー:4.2%,プラセボ:11.6%

プラセボと比べて,相対危険度(relative risk: RR)は・・・・,

2.5mgアッピー:0.33 (95%信頼区間(95%CI) 0.22 - 0.48)
5.0mgアッピー:0.36 (95%CI 0.25 - 0.53)

再発性の静脈血栓または静脈血栓が原因の死亡


2.5mgアッピー:1.7%,5.0mgアッピー:1.7%,プラセボ:8.8%

プラセボと比べて,RRは・・・・,

2.5mgアッピー:0.19 (95%CI 0.11 - 0.33)
5.0mgアッピー:0.20 (95%CI 0.11 - 0.34)


再発性の静脈血栓または静脈血栓が原因の死亡,心筋梗塞,脳卒中,心血管死


2.5mgアッピー:2.1%,5.0mgアッピー:12.3%,プラセボ:10.0%

プラセボと比べて,RRは・・・・,

2.5mgアッピー:0.21 (95%CI 0.13 - 0.35)
5.0mgアッピー:0.23 (95%CI 0.14 - 0.38)



出血

2.5mgアッピー:主要な出血 0.2%,主要でない出血 3.0%
5.0mgアッピー:主要な出血 0.1%,主要でない出血 4.2%
プラセボ:主要な出血 0.5%,主要でない出血 2.3%


ちなみに12ヶ月経って薬をやめた後の30日間の間に,静脈血栓をきたした人,
2.5mgアッピー:3人
5.0mgアッピー:5人
プラセボ:2人



アッピー低用量のほうがいい.

日本人はさらに少ない方がいい??


次に期待される検討は,

さらに延長して使用していいかどうかということ,

ワルファリンとガチンコ勝負.



静脈血栓の患者さんって結構いますね.
ワルファリンをずっと続けている人います.

いつか,日本でも新規抗凝固薬が静脈血栓に適応をとるとおもいますので,その時は変更を考えます.

本人の収入の問題もありますが.

コメント

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