一般の人に聞きました。
tPA静注療法が必要になったら、その治療を受けたいですか?。
答え:はい。心肺蘇生が必要になったら、心肺蘇生をしてほしい、と思うのと同じくらい、そう思っています。
Chiong et al JAMA 2014 Testing the Presumption of Consent to Emergency Treatment for Acute Ischemic Stroke
脳梗塞のシナリオと心肺停止のシナリオ
この2つのシナリオを、絵付きで見せて、「(tPAまたは心肺蘇生)受けたい」、「どちらかと言うと受けたい」「どちらかと言うと受けたくない」「受けたくない」
を選んでもらいました。
tPA治療を受けたい人76.2% vs心肺蘇生を受けたい人75.9%, p=0.93。
必要があれば受けたいと思う人が多いという印象は、臨床の現場にいるとよく感じます。
時間以外の理由で、tPAを受けられなかった人やその家族が、
「どうして、その治療ができなかったのですか?」
とお聞きになられることを時々経験します。
特に院内発症の患者さんで。
私達は、常に、脳梗塞超急性期治療の適応を考慮して、行動しなければなりません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、脳卒中専門医は、そのスピードアップに気を配らなければなりません。
2013年にJournal of the American Medical Association: JAMAという雑誌に掲載された論文。
Savar et al. JAMA 2013 Time to Treatment With Intravenous Tissue Plasminogen Activator and Outcome From Acute Ischemic Stroke
tPA静注療法のより早い投与が、やっぱり前から言われていたように、より良い効果と、より少ない合併症につながる。
この論文以降、さらにtPA静注療法の早期開始が注目されているような気がします。
アメリカ。
国単位でtPA静注療法を早く行うシステムが、「来院-治療開始」時間を短縮する、予後(効果)を改善する。
Fonarow G, et al JAMA 2014; 311: 1632-1640. "Door-to-needle times for tissue plasminogen activator administration and clinical outcomes in acute ischemic stroke before and after a quality improvement initiative"
primary outcome: 「来院-治療開始」時間60分以内を50%以上に。
脳梗塞患者対応、10のこと。を使って、診療を行う。
1: 救急隊も脳卒中発見を頑張る。
2: 素早い評価と脳卒中チームへコール。
3: 1回のコールですべての脳卒中診療チームが活動を開始する。画像解析も。
4: 特別な脳卒中対応マニュアルやその冊子などを使う。
5: 画像を急ぐ。
6: 血液検査を急ぐ。
7: 可能性が高い患者の時は、前もってtPAを溶かしとく。
8: tPAスタートは救急外来か画像診断エリアで。
9: チーム医療!
10: 来院-治療開始時間をすぐにアナウンスする。
"2"と"3"はアメリカらしいです。
最初に対応するのはナースか救急のドクターであることが多いので。
日本のほとんどは、最初から脳神経内科か脳神経外科が対応しています。
"7"はデータが揃ってから、素早くということ。
データが揃う前に溶かしてしまい、実は適応がなかったとなると、20万円ぐらいの損失になります。
はい、一度か二度あります。
ごめんなさい。
面白いのは"10"です。
確かに、陸上とか、水泳とか、タイムが指標であるスポーツは、ゴールした時に「◯分☓秒〜〜!!」って、可愛いマネージャーが教えてくれます。
そのタイムが次の目標になります。
早速、次から当院でもやってみよう。
脇道にそれました。内容をみてみます。
tPA対応そこそこの2003年から2009年:27319人
vs
tPA対応10のことを使った2010年から2013年:43859人
来院-治療開始時間:77分 vs 67分、p<0.001
来院-治療開始時間<60分:26.5 % vs 41.3%, p<0.001
来院-治療開始時間<60分、それぞれの期間最後の方:29.6% vs 53.3%, p<0.001
入院中死亡:9.93% vs 8.25%, 調整オッズ比 0.89 (0.83-0.94), p< 0.001
自宅退院: 37.6% vs 42.7%, 調整オッズ比 1.14 (1.09-1.19), p< 0.001
退院時自立 42.2% vs 45.4%, 調整オッズ比 1.03 (0.97-1.10), p=0.31
36時間以内症候性脳内出血:5.68% vs 4.68%, 調整オッズ比0.83 (0.76-0.91) , p< 0.001
そして、興味深いことに、
「tPA対応10のこと、を使ってがんばろー」っとやった期間は、
”tPA治療をしていない脳梗塞患者”や
”脳出血患者”
の予後も改善していた。
=全体的なクオリティーが上がる
ってこと。
=急いだからといって、ミスが増えたり、合併症が増えたりするわけではない
ってこと。
来院-tPA治療開始時間は60分以内にしましょう。
というのが、American Heart Association/American Stroke Associationの提言です。
しかし、まだ、それでも半数近くは60分以内に開始できていません。
日本は、全体的にもっと早いです。
当院の去年の8月までのデータでも、60分以内60%でした。
看護研究をやっていて、今ではもっと早くなっています。
そして、近々、
救急外来近くにMRI室が堂々オープン(実は前からあって、諸事情あり、緊急では使えなかったんですけど)
するので、もっと早くなります。
現在、MRI室まで、エレベータ2回乗り換え、ヘアピンカーブ3回曲がって、地下室まで行っています。
日本の医療のほうが、tPA静注療法においては優れている、かもしれません。
日本の看護師が優秀、ってことのほうが正しいかもしれません。
tPA静注療法が必要になったら、その治療を受けたいですか?。
答え:はい。心肺蘇生が必要になったら、心肺蘇生をしてほしい、と思うのと同じくらい、そう思っています。
Chiong et al JAMA 2014 Testing the Presumption of Consent to Emergency Treatment for Acute Ischemic Stroke
脳梗塞のシナリオと心肺停止のシナリオ
この2つのシナリオを、絵付きで見せて、「(tPAまたは心肺蘇生)受けたい」、「どちらかと言うと受けたい」「どちらかと言うと受けたくない」「受けたくない」
を選んでもらいました。
tPA治療を受けたい人76.2% vs心肺蘇生を受けたい人75.9%, p=0.93。
必要があれば受けたいと思う人が多いという印象は、臨床の現場にいるとよく感じます。
時間以外の理由で、tPAを受けられなかった人やその家族が、
「どうして、その治療ができなかったのですか?」
とお聞きになられることを時々経験します。
特に院内発症の患者さんで。
私達は、常に、脳梗塞超急性期治療の適応を考慮して、行動しなければなりません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、脳卒中専門医は、そのスピードアップに気を配らなければなりません。
2013年にJournal of the American Medical Association: JAMAという雑誌に掲載された論文。
Savar et al. JAMA 2013 Time to Treatment With Intravenous Tissue Plasminogen Activator and Outcome From Acute Ischemic Stroke
tPA静注療法のより早い投与が、やっぱり前から言われていたように、より良い効果と、より少ない合併症につながる。
この論文以降、さらにtPA静注療法の早期開始が注目されているような気がします。
アメリカ。
国単位でtPA静注療法を早く行うシステムが、「来院-治療開始」時間を短縮する、予後(効果)を改善する。
Fonarow G, et al JAMA 2014; 311: 1632-1640. "Door-to-needle times for tissue plasminogen activator administration and clinical outcomes in acute ischemic stroke before and after a quality improvement initiative"
primary outcome: 「来院-治療開始」時間60分以内を50%以上に。
脳梗塞患者対応、10のこと。を使って、診療を行う。
1: 救急隊も脳卒中発見を頑張る。
2: 素早い評価と脳卒中チームへコール。
3: 1回のコールですべての脳卒中診療チームが活動を開始する。画像解析も。
4: 特別な脳卒中対応マニュアルやその冊子などを使う。
5: 画像を急ぐ。
6: 血液検査を急ぐ。
7: 可能性が高い患者の時は、前もってtPAを溶かしとく。
8: tPAスタートは救急外来か画像診断エリアで。
9: チーム医療!
10: 来院-治療開始時間をすぐにアナウンスする。
"2"と"3"はアメリカらしいです。
最初に対応するのはナースか救急のドクターであることが多いので。
日本のほとんどは、最初から脳神経内科か脳神経外科が対応しています。
"7"はデータが揃ってから、素早くということ。
データが揃う前に溶かしてしまい、実は適応がなかったとなると、20万円ぐらいの損失になります。
はい、一度か二度あります。
ごめんなさい。
面白いのは"10"です。
確かに、陸上とか、水泳とか、タイムが指標であるスポーツは、ゴールした時に「◯分☓秒〜〜!!」って、可愛いマネージャーが教えてくれます。
そのタイムが次の目標になります。
早速、次から当院でもやってみよう。
脇道にそれました。内容をみてみます。
tPA対応そこそこの2003年から2009年:27319人
vs
tPA対応10のことを使った2010年から2013年:43859人
来院-治療開始時間:77分 vs 67分、p<0.001
来院-治療開始時間<60分:26.5 % vs 41.3%, p<0.001
来院-治療開始時間<60分、それぞれの期間最後の方:29.6% vs 53.3%, p<0.001
入院中死亡:9.93% vs 8.25%, 調整オッズ比 0.89 (0.83-0.94), p< 0.001
自宅退院: 37.6% vs 42.7%, 調整オッズ比 1.14 (1.09-1.19), p< 0.001
退院時自立 42.2% vs 45.4%, 調整オッズ比 1.03 (0.97-1.10), p=0.31
36時間以内症候性脳内出血:5.68% vs 4.68%, 調整オッズ比0.83 (0.76-0.91) , p< 0.001
そして、興味深いことに、
「tPA対応10のこと、を使ってがんばろー」っとやった期間は、
”tPA治療をしていない脳梗塞患者”や
”脳出血患者”
の予後も改善していた。
=全体的なクオリティーが上がる
ってこと。
=急いだからといって、ミスが増えたり、合併症が増えたりするわけではない
ってこと。
来院-tPA治療開始時間は60分以内にしましょう。
というのが、American Heart Association/American Stroke Associationの提言です。
しかし、まだ、それでも半数近くは60分以内に開始できていません。
日本は、全体的にもっと早いです。
当院の去年の8月までのデータでも、60分以内60%でした。
看護研究をやっていて、今ではもっと早くなっています。
そして、近々、
救急外来近くにMRI室が堂々オープン(実は前からあって、諸事情あり、緊急では使えなかったんですけど)
するので、もっと早くなります。
現在、MRI室まで、エレベータ2回乗り換え、ヘアピンカーブ3回曲がって、地下室まで行っています。
日本の医療のほうが、tPA静注療法においては優れている、かもしれません。
日本の看護師が優秀、ってことのほうが正しいかもしれません。
4月は週2人くらいの割合でtPA行ってましたね。
返信削除来院から治療開始までほぼ60分以内。現在80%台です。
研究の事もあり最近はちょくちょく「こないだのtPA〇〇分でしたよ!」とスタッフが教えてくれます。頑張ってくれてますよね。
やる気が違う。
ポスター効果もなかなかですな☆
脳卒中診療の全体的なクオリティー向上にも繋がっているとは。
これからもみんなでがんばっていきしょ。
即効果が出そうな、かわいいマネージャーは先生チョイスでお任せします笑
コメントありがとうございます。
削除看護師が積極的にやってくれるとどんどん診療のクオリティーが上がります。医師の場合はそうもいかないことが多いです。
マネージャーは南ちゃんに決まってます。
南ちゃんかぁ
返信削除かなりのハイクオリティですね
「Tちゃん頑張って♥」と言ってもらえたら・・・・・50分の壁は突破できる・・・かも。笑
南ちゃんをさがせ!せんばやね。