常識だと思って行っていたことに、実はしっかりした根拠がない、
ということは、一般社会の中で意外とよくあることです。
例えば・・・、
って、すぐに思い浮かばなかったので、
多分、私は、「根拠の無い常識」にとらわれて生きているんだと思います。
医療の世界では、できるだけ、ちゃんとした根拠(エビデンス)に則った医療を行いましょう。
エビデンス・ベースド・メディスン。
と言われて、久しい訳です。
おそらく1990年台から特に強調されてきたのではないでしょうか。
「ワーファリン内服中の患者さんは、手術前1週間ぐらいから入院して、ワーファリンを中止し、ヘパリンブリッジ(術前数時間までヘパリン持続投与)しましょう。」
って言ってましたし、そうしてきました。
ガイドラインにもあります。
『循環器疾患に おける抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン2009
しかし、それは、強い根拠に則ったものではありませんでした。
今回読んだ論文は、今話題の論文。
Douketis et al. 2015 NEJM Perioperative Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation
ヘパリンブリッジの有用性は無いかもしれないこと、
むしろ出血が増えるかもしれないこと
を明らかにしました。
ランダム化比較試験。二重盲検、ヘパリン vs プラセボ
1次エンドポイント:
有効性:塞栓症(脳梗塞、一過性脳虚血発作、全身塞栓症)
安全性:大出血
2次エンドポイント
死亡、心筋梗塞、深部静脈血栓、肺塞栓、小出血
適格患者:18歳以上、発作性または持続性心房細動、心房粗動、3カ月以上PT-INR2-3でワルファリン調節されている、
さらに、CHADS2 score >=1 (C, うっ血性心不全、左室収縮不全; H, 高血圧; A, 75歳以上; D, 糖尿病; S, 脳梗塞または一過性脳虚血発作)
除外患者:機械弁、12週以内に塞栓症を起こした、6週以内に出血があった、Ccr < 30ml/min, 血小板10万以下、予定された手術が、心臓、脳、脊髄、の患者。
ここは注意すべきポイントです。出血リスク、塞栓リスクが高い患者は除外しています。
研究デザイン
手術5日前、ワルファリン中止。
手術3日前、Dalteparin 100IU/kg 開始。
手術24時間前、Dalteparin中止。
手術
手術当日夕方、ワルファリン再開
(塞栓または出血の) 低リスク手術は、手術12〜24時間後、Dalteparin再開。
(塞栓または出血の) 高リスク手術は、手術48〜72時間後、Dalteparin再開。
※低リスク手術
内視鏡手術(生検あり、または、なし)
心臓カテーテル(治療あり、または、なし)
歯科治療
皮膚科手術
白内障手術
他、1時間以内の手術
※高リスク手術
腹腔内の手術
胸郭内の手術
整形外科(大腿または膝)手術
腹部大動脈瘤手術や下肢バイパス術
前立腺摘出術や膀胱腫瘍手術
ペースメーカーやICD挿入
大腸ポリープ切除、腎生検、前立腺生検
他、1時間以上の手術
高リスク手術は、比較的納得できる手術であるものの、
低リスク手術は基本ワルファリン継続でもできるものばかりなので、「?」な感じです。
ただ、これは、今回の結果から考えると、この患者のわけかたは大きな問題ではなかったと考えられます。
なので、まずは結果から、
Reluts
ヘパリンブリッジ895人
ヘパリンブリッジなし918人
多変量解析の結果、以下のとおり
ヘパリンブリッジをしないことは、ヘパリンブリッジをすることに対して非劣性(差はない)。
出血は、大出血も小出血もヘパリンブリッジが多い。
高リスク群は、48〜72時間後にヘパリンを開始していますが、それで塞栓症が増えている可能性は低いようです。
少し遅く始めても出血のリスクが高いことは問題かもしれません。
この研究の限界
study limitation
塞栓症リスクが高いCHADS2 5または6がほとんどいない。
塞栓症リスクが高い手術患者は除外されている(頸動脈内膜剥離術、心臓手術、主要な腫瘍手術、脳や脊髄の手術)
塞栓症の発症率が低いが、これまでの研究と大きく変わりない。
だいたい1%。最近は0.4%ぐらい。
大出血が3.2%と言うのは、他の研究に比べて低い。
これは、出血のリスクを最小限にしたプロトコールだから。
最近は、新しい抗凝固薬がでてきたので、その評価はできていない。
しかし、ワルファリンは今でも多く処方されている抗凝固薬である。
この研究を読み解くに、
心臓や脳、脊髄などの手術以外は、5日前にワルファリンを中止して、手術日の夕方からワルファリンを再開するのがいい。ヘパリン無しで。
かもしれない。
基本的には、ガイドラインの改定を待つべきなので、あしからず。
「薬をやめる」という研究デザインはなかなかサポートが得られにくいものです。
薬をやめた方がいいという結果が出ると、お金にならないから。
もちろん、患者さんには利益となる可能性があります。
だからこの研究は、すごくまっとうな研究だと思います。
ということは、一般社会の中で意外とよくあることです。
例えば・・・、
って、すぐに思い浮かばなかったので、
多分、私は、「根拠の無い常識」にとらわれて生きているんだと思います。
医療の世界では、できるだけ、ちゃんとした根拠(エビデンス)に則った医療を行いましょう。
エビデンス・ベースド・メディスン。
と言われて、久しい訳です。
おそらく1990年台から特に強調されてきたのではないでしょうか。
「ワーファリン内服中の患者さんは、手術前1週間ぐらいから入院して、ワーファリンを中止し、ヘパリンブリッジ(術前数時間までヘパリン持続投与)しましょう。」
って言ってましたし、そうしてきました。
ガイドラインにもあります。
『循環器疾患に おける抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン2009
しかし、それは、強い根拠に則ったものではありませんでした。
今回読んだ論文は、今話題の論文。
Douketis et al. 2015 NEJM Perioperative Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation
ヘパリンブリッジの有用性は無いかもしれないこと、
むしろ出血が増えるかもしれないこと
を明らかにしました。
ランダム化比較試験。二重盲検、ヘパリン vs プラセボ
1次エンドポイント:
有効性:塞栓症(脳梗塞、一過性脳虚血発作、全身塞栓症)
安全性:大出血
2次エンドポイント
死亡、心筋梗塞、深部静脈血栓、肺塞栓、小出血
適格患者:18歳以上、発作性または持続性心房細動、心房粗動、3カ月以上PT-INR2-3でワルファリン調節されている、
さらに、CHADS2 score >=1 (C, うっ血性心不全、左室収縮不全; H, 高血圧; A, 75歳以上; D, 糖尿病; S, 脳梗塞または一過性脳虚血発作)
除外患者:機械弁、12週以内に塞栓症を起こした、6週以内に出血があった、Ccr < 30ml/min, 血小板10万以下、予定された手術が、心臓、脳、脊髄、の患者。
ここは注意すべきポイントです。出血リスク、塞栓リスクが高い患者は除外しています。
研究デザイン
手術5日前、ワルファリン中止。
手術3日前、Dalteparin 100IU/kg 開始。
手術24時間前、Dalteparin中止。
手術
手術当日夕方、ワルファリン再開
(塞栓または出血の) 低リスク手術は、手術12〜24時間後、Dalteparin再開。
(塞栓または出血の) 高リスク手術は、手術48〜72時間後、Dalteparin再開。
※低リスク手術
内視鏡手術(生検あり、または、なし)
心臓カテーテル(治療あり、または、なし)
歯科治療
皮膚科手術
白内障手術
他、1時間以内の手術
※高リスク手術
腹腔内の手術
胸郭内の手術
整形外科(大腿または膝)手術
腹部大動脈瘤手術や下肢バイパス術
前立腺摘出術や膀胱腫瘍手術
ペースメーカーやICD挿入
大腸ポリープ切除、腎生検、前立腺生検
他、1時間以上の手術
高リスク手術は、比較的納得できる手術であるものの、
低リスク手術は基本ワルファリン継続でもできるものばかりなので、「?」な感じです。
ただ、これは、今回の結果から考えると、この患者のわけかたは大きな問題ではなかったと考えられます。
なので、まずは結果から、
Reluts
ヘパリンブリッジ895人
ヘパリンブリッジなし918人
多変量解析の結果、以下のとおり
ヘパリンブリッジをしないことは、ヘパリンブリッジをすることに対して非劣性(差はない)。
出血は、大出血も小出血もヘパリンブリッジが多い。
高リスク群は、48〜72時間後にヘパリンを開始していますが、それで塞栓症が増えている可能性は低いようです。
少し遅く始めても出血のリスクが高いことは問題かもしれません。
この研究の限界
study limitation
塞栓症リスクが高いCHADS2 5または6がほとんどいない。
塞栓症リスクが高い手術患者は除外されている(頸動脈内膜剥離術、心臓手術、主要な腫瘍手術、脳や脊髄の手術)
塞栓症の発症率が低いが、これまでの研究と大きく変わりない。
だいたい1%。最近は0.4%ぐらい。
大出血が3.2%と言うのは、他の研究に比べて低い。
これは、出血のリスクを最小限にしたプロトコールだから。
最近は、新しい抗凝固薬がでてきたので、その評価はできていない。
しかし、ワルファリンは今でも多く処方されている抗凝固薬である。
この研究を読み解くに、
心臓や脳、脊髄などの手術以外は、5日前にワルファリンを中止して、手術日の夕方からワルファリンを再開するのがいい。ヘパリン無しで。
かもしれない。
基本的には、ガイドラインの改定を待つべきなので、あしからず。
「薬をやめる」という研究デザインはなかなかサポートが得られにくいものです。
薬をやめた方がいいという結果が出ると、お金にならないから。
もちろん、患者さんには利益となる可能性があります。
だからこの研究は、すごくまっとうな研究だと思います。
コメント
コメントを投稿