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薬剤溶出冠動脈ステント術後の抗血小板薬2剤。12カ月?30カ月?

薬剤溶出冠動脈ステント留置後12カ月経ったら、抗血小板薬は1剤にしましょう。

なぜなら出血のリスクが上がるから。

これまで、脳卒中診療医として、梅干しを3個いっぺんに口に入れたくらい、酸っぱくして言ってきました。

いや、3個は言い過ぎた。

いずれにせよ、そう言ってきました。

しかし、最近のNew England Journal of Medicineに、

「薬剤溶出冠動脈ステント留置後の抗血小板薬2剤は30カ月続けた方がいい。」

という論文が掲載されました。


この論文を読んだ感想は、

「アスピリンがダメなだけで、アスピリンとチエノピリジン系薬剤のタッグがいいというわけではないのでは?」

ということ。

つまり、

「チエノピリジン系薬剤(クロピドグレルまたはプラスグレル)単剤を12カ月以降も続ければいいのでは?」

ということ。

読まれた皆様、いかがでしょうか?

・・・・・


登録された患者さんは薬剤溶出冠動脈ステント留置後12カ月を大きな問題なく乗り越えた方。


つまり、薬剤溶出冠動脈ステント留置後12カ月間の間に、虚血性心疾患や中等度から重度の出血合併症がなく、また脳卒中もなかった人。

つまり、リスクが高い人はこの研究から除外されています。

これは、重要なポイントです。

5020人がアスピリン+チエノピリジン系薬剤。

4941人がアスピリン+プラセボ。



さらにもう一つのポイント。

登録された患者さんは、とにかく「でかい」

体重の平均が91.5kg。って、

こんな体重の人、日本人にはほとんどいません。

このことからも、この結果をそのまま日本人に当てはめるべきでないように思います。



結果:

ステント血栓症は、アスピリン+チエノピリジン系薬剤群の方が少なかった。
19人(0.4%)  vs 65 (1.4%), ハザード比 0.29 (0.17-0.48), p < 0.001

死亡、心筋梗塞、脳卒中(出血、虚血両方)は、アスピリン+チエノピリジン系薬剤群のほうが少なかった。
211 (4.3%) vs 285 (5.9%), ハザード比 0.71 (0.59-0.85), p < 0.001

特に、心筋梗塞が少なかった。
99 (2.1%) vs 198 (4.1%), ハザード比 0.47 (0.37-0.61), p <0.001


出血性、虚血性脳卒中は両群間で差はなかった。(表の赤四角で囲まれた部分)

GUSTO moderate出血(輸血が必要な出血)はアスピリン+チエノピリジン系薬剤群で多かったが、GUST severe出血(頭蓋内出血または治療を要する血行動態の悪化を伴う出血)は差がなかった。
ただし、GUSTO severe or moderate出血合わせると、やはりアスピリン+チエノピリジン系薬剤群で多かった。
119 (2.5%) vs 73 (1.6%), 95%信頼区間 1.0 (0.4 - 1.5), p = 0.001

BARC type 2, 3, or 5もアスピリン+チエノピリジン系薬剤群で多かった。
263 (5.6%) vs 137 (2.9%), 95%信頼区間 2.6 (1.8 - 3.5), p < 0.001


出血による死亡は
アスピリン+チエノピリジン系薬剤群:11人
アスピリン+プラセボ群:3人
p = 0.06

外傷による死は
アスピリン+チエノピリジン系薬剤群:7人
アスピリン+プラセボ群:2人
p = 0.07

おまけ:

なぜか、癌死はアスピリン+チエノピリジン系薬剤群で多かった。
31人 vs 14人, p = 0.02

癌が診断された人の割合は両群で差はありませんでした。

しかし、癌死が多かった。

もしかしたら、この研究に登録時に癌の併発率の差が両群間であったかもしれない?


ということで、

薬剤溶出冠動脈ステント留置術後にアスピリン+チエノピリジン系薬剤を12カ月を超えて使用することは、いいかもしれない。出血のリスクはあるけど。

ということでした。

しかし、

繰り返しになりますが、リスクが低い人での検討であることに注意が必要であります。

また、登録された患者さんが「でかい」ことも考慮すべきでしょう。

そして、この研究でも、WOEST studyと同様に、「アスピリン神話の崩壊」を読み解くことができるのかもしれません。
参考:心房細動患者に冠動脈ステント留置術が必要になったら。

意義深い論文でありますが、

アスピリン+チエノピリジン系薬剤 vs チエノピリジン系薬剤単剤 

の方が、より意義深い気がします。


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