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脳卒中外来で考える生

75歳男性。

脳血管に狭いところがあり、経過をみさせて頂いています。

癌も患っていらっしゃいます。今は落ち着いていますが。

「もうね、あと2年生きられれば十分よ。先生。あんまり、欲かいたらいかん。孫が生まれてある程度成長して。それが見られたけん、よか。本当は、孫が成人するまでと思っとったけど、こがん病気(癌)もあるし。」

「こん病気になって、診てもらった先生には、ものすごく感謝しとるとよ。治療のたびに、毎回毎回、丁寧に説明してもらって。安心して、治療ば受けることのできた。だけん、その先生とか、家族のために、やれるだけのことはやる。けど、もうそれ以上は仕方なか。」

アメリカとか、ヨーロッパの主要な国とか、個人主義が強い人たちと、日本人は違います。

日本人は他者を気にします。

良きにつけ悪しきにつけ。

でも、それが日本人の宗教みたいなものかもしれないなぁ、と最近思います。

人のために頑張った自分にすがるというか、頼るというか。納得するというか。

ちょっと大げさですが。

「自分のためにする」、よりも、「人のためにする」、ほうが、自分の限界を広げることが出来る様な気がします。

自分が死ぬ時も、「人のために頑張ったなぁ」、と自己満足したほうが、すっきりあの世に行けそう。


・・・・・。


もう一点。

私は、自分の目標「世界基準の脳卒中診療を、長崎のどこででも受けることが出来る」を達成するためには、急性期診療を行う総合病院で働くしかありません。

若い人を育てるために。

そうしていると、この患者さんのような人を看取ることができません。

急性期診療を行う総合病院では、落ち着いたら、ほかの病院へ転院するか、自宅に帰ります。


医師の仕事。「生命の誕生をサポートする」、「生を維持する」、そして「死を見届ける」

自分が診させていただいた患者さんの看取りまでさせてもらいたい。

と思っていますが、それは当面できそうにありません。

欲かいたらいかん、ですね。

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