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Drip, Ship and Retrieve.うまくいったらよいですが...

日曜日のサザエさんが終わるころ,

風呂に入って,シャワーを浴び始めた,まさにその時,

iPhoneのモニターに「救急外来」.

とりあえず,髪と,重要なところだけ洗って,

出発.


4月下旬なのに,寒の戻りで,寒い寒い.

さて,今回は,Drip, Ship and Retrieve対応です.


Drip (tPA点滴治療)

Ship (救急搬送)

and

Retrieve (血管内カテーテル治療)

搬送された地域の病院でtPA点滴治療を開始し(Drip),高次脳卒中病院に転送(Ship),そして閉塞血管により,血管内カテーテル治療を検討(Retrieve).

ということです.

偉そうに言ってますが,実は当院初です.

Drip and Shipもいままでお一人だけでございます.

島から一人.

今回も脳神経外科血管内治療グループと脳卒中内科医でコラボ治療しました.

来院時から心不全があったので,内科の私は,今回は外回りで,点滴の調節を行いました.

うまくいったらいいのですが,特に急性期の緊急の治療は,いつもうまくいくわけはなく,今回は再開通が得られませんでした.

無念.

後の経過は,内科で診させていただいています.


さて,このDrip, Ship and Retrieve.

国土の広いアメリカでは有用です.

近くに,高次脳卒中対応病院がない地域がたくさんあります.

そして,ヘリ搬送は昼夜問わず行われています.

アメリカでは,どのくらいやっているのでしょうか?

2012年にStrokeに掲載された,アメリカの"Drip and Ship paradigm"の現状です.

Tekle et al. Stroke 2012 Drip-and-ship thrombolytic treatment paradigm among acute ischemic stroke patients in the United States.

血栓溶解療法(tPA静注療法)を受けた急性期脳梗塞患者22,243人のうち,

Drip and Ship: 4,474人(17%)

Drip, Ship and Retrieve: 314人/4,474人(7%)
※搬送された病院で,tPA+血管内カテーテル治療を受けた患者:2,651/22,243人(12%)

ポイント:
teaching hoipital (おそらく大学病院みたいなところ)に搬送された患者の割合

Drip and Shipでteaching hospitalへ81%

vs

 最初に搬送された病院ですべて治療した患者のうち,それがteaching hopitalだったのは61%

この差がポイント.

Drip and Ship群と最初に搬送された病院ですべて治療群を多変量解析で比較して,Drip and Ship群に顕著だったのは,

日常生活活動(Home/self-care)自立が多い: 

unadjusted: オッズ比, 1.239; 95%CI, 1.061–1.447; p=0.0067

adjusted: オッズ比, 1.198; 95%CI, 1.019 –1.409; p=0.0286

病院内死亡は少ないかもしれない

unadjusted: オッズ比, 0.737; 95%CI, 0.555–0.979; p=0.0354

adjusted: オッズ比, 0.773; 95%CI, 0.576–1.037; p=0.0861

この結果は,先のポイントで示した通り,

teaching hospitalで診療を続けているか否かが関与しているのかもしれない.

ということでした.

teaching hospitalで働く者としては,

「もっと気合をいれんば」

と思う結果です.


また,

「意外と,Drip, Ship and Retrieve,少ないな」

というのも率直な印象です.

Cleveland Clinicでは,年間何件かやっていました.

それを,アメリカ全土で考えると,でも,まぁ,そんなもんでしょうか.

日本では,どのくらいやっているのでしょう.

今後,増えていく治療パターンです.

しっかり対応したいと思います.

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