生体弁の人が脳梗塞を発症して,あまりこれと言った原因がない人に抗凝固をすべきなのか,時々悩みます. この論文は,大動脈弁の生体弁術(Aortic valve replacement: AVR)後に開始したワルファリンをいつ中止したかで, ”塞栓症”,”出血合併症”,”心血管死” に影響があるか調べています. Longer Warfarin Tx Helps After Biologic Valve 方法 期間は1997年から2009年. デンマークのレジストリーからAVRを施行した4075人を検討しています. 特徴は,術前にワルファリンを内服していた684人と術後30日以内に心房細動が検出された1215人は除外されていること. つまり,心房細動の関与を可能な限り除外していることが,この検討により得られたデータの有意性を高めています. 心房細動があれば,塞栓症のリスクは高まりますので,純粋に生体弁だけのデータではなくなります. よく考えています. ワルファリンをやめた群と比べて, ”30-89日は続けている群” ”90-179日は続けている群” ”180-364日は続けている群” ”365-729日は続けている群” ”730日以降は続けている群” の ”脳卒中リスク”, ”塞栓症リスク” ”心血管死リスク” ”出血合併症リスク” を調べました. 脳卒中は最初の3か月はワルファリン継続群のほうが良かったです (Event rate 7.00(ワルファリン中止群) vs. 2.69(ワルファリン継続群); p=0.03) ですが,それ以降は有効ではなくて,むしろ2年以降まで使っていると,リスクが高まります (Event rate 1.61(ワルファリン中止群) vs. 2.45(ワルファリン継続群); p=0.06) これは出血リスクが高まることを反映しているのかもしれません. 全身塞栓症は6か月までワルファリン継続群が良い結果でした. 30-89日:(Event rate 13.07(ワルファリン中止群) vs. 3.97(ワルファリン継続群); p<0.00