脳血栓回収術をしていて、 血管の蛇行 (Tortuosity)ががあると、 「これは、カテーテルが上がりにくそうだ」 なんて、思うわけです。 上がりにくいだけではなくて、 1. 再開通(初回でのほぼor完全再開通)が得られにくい。 2. 術後の脳実質出血も多め。 という、国立循環器病研究センター 脳血管内科・脳神経内科 高下先生の論文。 目の付け所がすごい。 さすがです。さすがのStroke誌。 Koge et al. Stroke 2022 蛇行 (Tortuosity)の定義 イメージしやすいように補足しました。 頭蓋内、海綿静脈洞部の内頚動脈の蛇行 (Tortuosity) 頭蓋外、頸部内頚動脈の蛇行 (Tortuosity) 3パターン どっちも(頭蓋内、海綿静脈洞部 / 頭蓋外、頸部内頚動脈) 蛇行 (Tortuosity) First pass effect (FPE 最初の血栓回収でほぼor完全再開通 (TICI 2c or 3)) 少ない。 どっちも(頭蓋内、海綿静脈洞部 / 頭蓋外、頸部内頚動脈) 蛇行 (Tortuosity) 術後脳実質出血 多い 日本人の高齢の女性では、おそらくアジア以外の外国人に比べて蛇行が多いはずです。 地方で再開通療法をやっていると、都会よりも高齢者が多くて、予後が悪いなぁと思っています。 ただ、今回の検討では3ヶ月後の良好な予後、死亡には蛇行 (Tortuosity)は大きく関与していませんでした。全体的に高齢者が多かったからでしょうか(蛇行群 80歳、非蛇行群 77歳) また、蛇行 (Tortuosity)のある患者さんに対する血栓回収のやり方で (ステント回収only, 吸引only, ステントと吸引combined)で差はありませんでした。 分節型のステントがいいかも、と考察で引用されていました。 Kaneko et al. J Neurointerv Surg 2018 すばらしい論文でした。 勉強になりました
つまり、tPA静注療法やれるならやりましょう。 ということ。 久しぶりのブログ。 脳血栓回収療法前のtPA静注療法、必要ですか問題。 時間の無駄だから、 出血のリスクが上がるから、 脳血栓回収療法だけでよくない? 日本医大の鈴木先生が中心となって行った、SKIP trialでは非劣性示されず、 SKIP trial. Suzuki et al. JAMA 2021 ヨーロッパのOpen-label, 多施設、ランダム化比較試験でも非劣性は示せず、 MR CLEAN-NO IV trial. NEJM 2021 しかし、中国からの報告では非劣性が示され、 DEVT trial. JAMA 2021 DIRECT-MT trial. NEJM 2020 もう、どっちなんだい? という状況が続いていました。 今回は、SWIFT-DIRECT trial. ヨーロッパから。 SWIFT DIRECT trial Lancet 2022 非劣性マージンは12%。 やっぱり非劣性示せず。 ※ IV alteplase=tPA静注療法 ※ Thrombectomy=脳血栓回収療法 層別解析でも非劣性示せず。(図の通り) 症候性頭蓋内出血:差なし 5/201 (脳血栓回収療法のみ) vs. 7/202 (tPA + 脳血栓回収療法) 有効な再開通:脳血栓回収療法のみ群で少ない 91% vs. 96% (リスク差 -5.1%, 95% CI -10.2 - 0.0, p=0.047) tPA静注療法は禁忌がない限り、やったほうがいいでしょう。 ただ、いつもtPAをスキップするかどうか悩むのは、 虚血の範囲が大きい時。 大手術ってどこまでが大手術? ってこと。 5日前の人工関節置換術は大手術でしょうか? だれか教えてほしい。 脳血栓回収療法前のtPA静注療法どうするか問題は、次のDIRECT-SAFEで一旦終わり、だと思います。おそらく、そう大きな変わりはないと思います。 将来的にはアルテプラーゼの次世代薬、tenecteplaseでも同様のことが行われることになるでしょう。