NEJMのMedicine and Societyは、医療のわかっていそうで、わかっていない部分の話を臨床現場のストーリーを通じて、私達に提示してくれます。
Lamas先生が自分の過去の経験を話されています。
Clonic Critical Illness
研修医最初の頃、私は80歳男性の肺炎患者さんを集中治療室で診療した。血圧は低く、呼吸はあえいでいる。
指導医と私は家族に話をした。
「"touch and go"(ぎりぎり)の状態です。」
家族:何でもしてください。彼は自動車整備をずっと続けてきた強い人です。
10日後、全身状態は落ち着いた。しかし、不穏状態であり、自分で呼吸はできなかった。
「管理を続けるならば、気管切開と栄養チューブが必要です」
家族はそれに同意した。質問はなかった。
彼は一命を取り留めた。
入院3週間後、Long-term acute care 病院が空いたので、急いで転院させた。
その後、彼とは会っていない。
別に、特別なストーリーではありません。でも、強く記憶に残っています。死の間際にいる人を助けた最初の経験だったから。そして、私にとって、この物語は終わっていません。今でも、私の心に影を落としています。
彼の意識は戻ったのか?
人工呼吸器を離脱できたのか?
家に帰った?
生きているのか?
そうでなければ、どこで死んだのか?
生命の危機を脱し、"Chronic Critical Illness"というぼんやりした定義(例えば、21日以上の人工呼吸器使用)の状態になる患者は5−10%存在する。
1年後約半数が死亡する。
1年後、12%以下の人しか家に帰って、活動できない。
そして、この状態にかかるコストは、とてつもなく膨大。
20億ドル。ざっくり2兆円。
トレーニング中の若い医師でこんなことを気にしている人はほとんどいないのではないでしょうか。
もちろん、集中治療は経過観察をする医療ではないので、仕方がない部分ではあります。
加えて、この20年でLong-term acute care病院が発展したことも、この状況(真実を知らないという事実)に拍車をかけている。
集中治療医は、このような患者を”作り出して”いるのです。
Long-term acute care (病院)やnursing homesは、このような患者をICUから見えなくしている。それも、またこの状態を知り得ない一つの理由でしょう。
この状態(Chronic Critical Illness)は、ひとつの疾患概念である。時々、よっぽど癌より予後が悪い。みんな癌のことは知っている。でも、この疾患(Chronic Critical Illness)を聞いたことがある人はいない。
レジデントの時に、急性期病院だけでなく、Long-term acute care病院などを研修することが良いかもしれないが、そのような病院が近くにあることが多くはなく、現実的に難しい場合が多い。
今後もこのような患者は増えていくことは、火を見るより明らかで、我々はその現実から目をそらすことはできない。
まさしくそのとおりだと思いました。
私も、この、私の眼の前にいる患者さんが、本当にどうなっていくのかを知らなかった。
それで、治療した、良くした、気になっていました。
それではいけないので、せめて3ヶ月後に外来でみさせていただくようにしました。来院できない方は、電話でご家族に状況をお聞きするようにしました。
でも、その方には、その先にも人生があります。
本当は、もっと長期的にみさせていただかないといけないのではないかと考えていますが、そうなると外来患者さんが2倍3倍と増えてしまうので、今のマンパワーでは難しい状況です。
急性期の緊急の治療は、「その血管を通す」ためにやっているわけでなく、「その血管を通すことによって、将来の状況をよくする」ためにやっているのですが、結局長期的に見ていくわけではないので、本当にその治療がよかったかわからないことが多いのです。
それが、事実です。
それを変える努力が必要ですが、まずは、真実を知らないという事実を認識することが大事なのかもしれません。
そして、自分もそうだし、自分が教えさせていただいている若い先生にも伝えないといけません。
「今日は、◯人、急患をさばいたぜー」
って、臆面もなく患者さんに対してモノ扱い発言をしちゃう若い先生を、”作らないように”しなくてはなりませんね。
Lamas先生が自分の過去の経験を話されています。
Clonic Critical Illness
研修医最初の頃、私は80歳男性の肺炎患者さんを集中治療室で診療した。血圧は低く、呼吸はあえいでいる。
指導医と私は家族に話をした。
「"touch and go"(ぎりぎり)の状態です。」
家族:何でもしてください。彼は自動車整備をずっと続けてきた強い人です。
10日後、全身状態は落ち着いた。しかし、不穏状態であり、自分で呼吸はできなかった。
「管理を続けるならば、気管切開と栄養チューブが必要です」
家族はそれに同意した。質問はなかった。
彼は一命を取り留めた。
入院3週間後、Long-term acute care 病院が空いたので、急いで転院させた。
その後、彼とは会っていない。
別に、特別なストーリーではありません。でも、強く記憶に残っています。死の間際にいる人を助けた最初の経験だったから。そして、私にとって、この物語は終わっていません。今でも、私の心に影を落としています。
彼の意識は戻ったのか?
人工呼吸器を離脱できたのか?
家に帰った?
生きているのか?
そうでなければ、どこで死んだのか?
生命の危機を脱し、"Chronic Critical Illness"というぼんやりした定義(例えば、21日以上の人工呼吸器使用)の状態になる患者は5−10%存在する。
1年後約半数が死亡する。
1年後、12%以下の人しか家に帰って、活動できない。
そして、この状態にかかるコストは、とてつもなく膨大。
20億ドル。ざっくり2兆円。
トレーニング中の若い医師でこんなことを気にしている人はほとんどいないのではないでしょうか。
もちろん、集中治療は経過観察をする医療ではないので、仕方がない部分ではあります。
加えて、この20年でLong-term acute care病院が発展したことも、この状況(真実を知らないという事実)に拍車をかけている。
集中治療医は、このような患者を”作り出して”いるのです。
Long-term acute care (病院)やnursing homesは、このような患者をICUから見えなくしている。それも、またこの状態を知り得ない一つの理由でしょう。
この状態(Chronic Critical Illness)は、ひとつの疾患概念である。時々、よっぽど癌より予後が悪い。みんな癌のことは知っている。でも、この疾患(Chronic Critical Illness)を聞いたことがある人はいない。
レジデントの時に、急性期病院だけでなく、Long-term acute care病院などを研修することが良いかもしれないが、そのような病院が近くにあることが多くはなく、現実的に難しい場合が多い。
今後もこのような患者は増えていくことは、火を見るより明らかで、我々はその現実から目をそらすことはできない。
まさしくそのとおりだと思いました。
私も、この、私の眼の前にいる患者さんが、本当にどうなっていくのかを知らなかった。
それで、治療した、良くした、気になっていました。
それではいけないので、せめて3ヶ月後に外来でみさせていただくようにしました。来院できない方は、電話でご家族に状況をお聞きするようにしました。
でも、その方には、その先にも人生があります。
本当は、もっと長期的にみさせていただかないといけないのではないかと考えていますが、そうなると外来患者さんが2倍3倍と増えてしまうので、今のマンパワーでは難しい状況です。
急性期の緊急の治療は、「その血管を通す」ためにやっているわけでなく、「その血管を通すことによって、将来の状況をよくする」ためにやっているのですが、結局長期的に見ていくわけではないので、本当にその治療がよかったかわからないことが多いのです。
それが、事実です。
それを変える努力が必要ですが、まずは、真実を知らないという事実を認識することが大事なのかもしれません。
そして、自分もそうだし、自分が教えさせていただいている若い先生にも伝えないといけません。
「今日は、◯人、急患をさばいたぜー」
って、臆面もなく患者さんに対してモノ扱い発言をしちゃう若い先生を、”作らないように”しなくてはなりませんね。
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