ヨーロッパでは○.
アメリカでは×.
日本では・・・・,どうなるんでしょう.
急性冠症候群(ST上昇型心筋梗塞,非ST上昇型心筋梗塞,不安定狭心症)の患者さんに対して,ステント治療を行い,抗血小板薬2剤(アスピリン,チエノピリジン系)の投与を行うことは一般的な方針です.
そこに,新規抗凝固薬であるリバーロキサバンを追加処方することは,是か非かということが最近話題になっています.
(※リバーロキサバンは非弁膜症性心房細動の塞栓症発症予防に対して使用される薬です.)
この検討を行った,ATLAS ACS TIMI 51 trialの結果をもとに,ヨーロッパでは2013年3月に,リバーロキサバン2.5mg1日2回処方ができるようになりました.
しかし,アメリカでは同じtrialをもとに,US Food and Drug Administration: FDAはリバーロキサバンの急性冠症候群への適応拡大を認めませんでした.
同じ研究なのに解釈の問題で180度違う方針になっています.
興味深いです.
Mega et al. NEJM 2013 Rivaroxaban in patients with a recent acute coronary syndrome.
方法:
二重盲検,プラセボコントロール試験
リバーロキサバン2.5mg1日2回 vs リバーロキサバン5mg1日2回 vs プラセボ(偽薬)
一次エンドポイント:心血管死,心筋梗塞,脳卒中
二次エンドポイント:あらゆる原因の死亡,心筋梗塞,脳卒中,ステント血栓症
安全性エンドポイント:TIMI major bleeding (CABGに関連しない),TIMI minor bleeding,治療が必要なTIMI bleeding,頭蓋内出血,致命的出血
※TIMI major bleeding: 頭蓋内出血または重大な出血の徴候があり,Hbが5g/dl以下低下する,またはHctが15%以上下がる出血.
結果:
リバーロキサバン(2.5mgと5mgと合わせて)は一次エンドポイントで,有意に効果あり.
8.9% vs 10.7% (hazard ratio 0.84; 95%信頼区間 0.74 - 0.96; p=0.008)
ステント血栓症も減らします.
2.3% vs 2.9% (hazard ratio 0.69; 95%信頼区間 0.51 - 0.93; p=0.02)
しかし,出血が明らかに多いです.
TIMI major bleeding
2.1% vs 0.6% (hazard ratio 3.96; 95%信頼区間 2.46 - 6.38; p<0.001)
頭蓋内出血
0.6% vs 0.2% (hazard ratio 3.28; 95%信頼区間 1.28 - 8.42; p=0.009)
致命的な出血に差はありませんでした.
0.3% vs 0.2% (hazard ratio 1.19; 95%信頼区間 0.54 - 2.59; p=0.66)
以下がまとめの表です.
2段組みで見づらいですが.
アメリカでは×.
日本では・・・・,どうなるんでしょう.
急性冠症候群(ST上昇型心筋梗塞,非ST上昇型心筋梗塞,不安定狭心症)の患者さんに対して,ステント治療を行い,抗血小板薬2剤(アスピリン,チエノピリジン系)の投与を行うことは一般的な方針です.
そこに,新規抗凝固薬であるリバーロキサバンを追加処方することは,是か非かということが最近話題になっています.
(※リバーロキサバンは非弁膜症性心房細動の塞栓症発症予防に対して使用される薬です.)
この検討を行った,ATLAS ACS TIMI 51 trialの結果をもとに,ヨーロッパでは2013年3月に,リバーロキサバン2.5mg1日2回処方ができるようになりました.
しかし,アメリカでは同じtrialをもとに,US Food and Drug Administration: FDAはリバーロキサバンの急性冠症候群への適応拡大を認めませんでした.
同じ研究なのに解釈の問題で180度違う方針になっています.
興味深いです.
Mega et al. NEJM 2013 Rivaroxaban in patients with a recent acute coronary syndrome.
方法:
二重盲検,プラセボコントロール試験
リバーロキサバン2.5mg1日2回 vs リバーロキサバン5mg1日2回 vs プラセボ(偽薬)
一次エンドポイント:心血管死,心筋梗塞,脳卒中
二次エンドポイント:あらゆる原因の死亡,心筋梗塞,脳卒中,ステント血栓症
安全性エンドポイント:TIMI major bleeding (CABGに関連しない),TIMI minor bleeding,治療が必要なTIMI bleeding,頭蓋内出血,致命的出血
※TIMI major bleeding: 頭蓋内出血または重大な出血の徴候があり,Hbが5g/dl以下低下する,またはHctが15%以上下がる出血.
結果:
リバーロキサバン(2.5mgと5mgと合わせて)は一次エンドポイントで,有意に効果あり.
8.9% vs 10.7% (hazard ratio 0.84; 95%信頼区間 0.74 - 0.96; p=0.008)
ステント血栓症も減らします.
2.3% vs 2.9% (hazard ratio 0.69; 95%信頼区間 0.51 - 0.93; p=0.02)
しかし,出血が明らかに多いです.
TIMI major bleeding
2.1% vs 0.6% (hazard ratio 3.96; 95%信頼区間 2.46 - 6.38; p<0.001)
頭蓋内出血
0.6% vs 0.2% (hazard ratio 3.28; 95%信頼区間 1.28 - 8.42; p=0.009)
致命的な出血に差はありませんでした.
0.3% vs 0.2% (hazard ratio 1.19; 95%信頼区間 0.54 - 2.59; p=0.66)
以下がまとめの表です.
2段組みで見づらいですが.
結論:
急性冠症候群にリバーロキサバンを追加処方することは,心血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合エンドポイントを減らす.リバーロキサバンは出血を増やすが,致命的な出血は増やさない.
この結果で,
2013年3月ヨーロッパでは,リバーロキサバンの適応拡大がなされました(と思います).
しかし,先週金曜にFDAによる最終判断があり,アメリカでの適応拡大は認められませんでした.
それは,この研究から1000人以上の研究から撤退した患者データが不明であったということが理由でした.
それを再検討して,2度目の判断があり,やはり適応拡大ならずということでした.
非常に興味深いです.
リバーロキサバンはⅩa阻害薬で,血栓の増大を防ぐことに有効かもしれません.そういう意味では,血栓性病変部位に対してもいい影響があるのだろうと思います.
ただし,局所だけでなく全身の問題を考慮しなければなりません.
つまり出血.
アジア人は脳出血しやすいので,日本人の急性冠症候群患者にリバーロキサバンを追加処方するのは,個人的には危険の方が高いのではないかと思っています.
いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
返信削除大変勉強になります。
興味深いです。
ワルファリンはステント血栓症に効果を示すことができなかったようですが、新規抗凝固薬(Xa阻害薬)はステント血栓症にも有効なのでしょうか。
致命的な出血には差がなかったとのことですが、日本人ならやはり1回2.5mgを2回でしょうか(小さいのが10mgの錠剤なので0.25錠?新しい規格が必要そうです)。出血は恐ろしいです。そこでまた休薬すると血栓症のリスクが・・・。
難しいです。
出血のために休薬すると血栓症のリスクが・・・.
削除確かにその通りですね.
Ⅹa因子が,血管の炎症や浮腫,血管内膜増殖に関与することが示唆されていることから,Ⅹa因子阻害薬であるリバーロキサバン,アピキサバンは動脈硬化病変にも有効かもしれない.
ということだと思います.
コメントありがとうございます.