スキップしてメイン コンテンツに移動

脳卒中の一次予防ガイドライン AHA/ASA -Guidelines for the primary prevention of stroke

American Heart Association/American Stroke Associationから脳卒中の一次予防ガイドラインが新しく出ていましたので、おおまかにチェックしてみました。

前回は2011年。

結構最近。

あくまで、一次予防(その病気にならないように対処すること)です。
※二次予防:その病気になった後の、再発予防。

Guidelines For The Primary Prevention Of Stroke

新しいことは、

地中海料理を続けること (Class Ⅱb, Level of Evidence B)
血圧測定を継続すること( Class Ⅰ, Level of Evidence A)
公共の場所での喫煙を禁ずること、

でしょうか。

●食事
地中海料理は以前も取り上げました。
地中海で暮らすか.

エキストラヴァージンオリーブオイル、ナッツ(くるみ、アーモンド、ヘーゼルナッツ)、野菜、果物、whole grain (全粒穀物:精白処理されていないそのままのもの)、豆、魚、鶏肉、ちょっとの赤身肉と全脂肪製品・・・。

ナッツ類をもっと食べてもいいかもしれないですね。

しかし、おつまみのナッツは塩がふりかけられているので要注意です。

日本人は塩分摂取が多い民族です。
塩分は高血圧と関連し、血管自体への直接の悪影響もありますので、おつまみのナッツを食べるときは塩を払って、もしくは無塩のものが良いかもしれません。

●血圧

血圧管理をより良くするために、自宅血圧の測定を患者に求めることが、が重要であることが今回付け加えられました。Class Ⅰ, Level of Evidence A

また、prehypertension(収縮期血圧120-139mmHg, 拡張期血圧80-89mmHg)の患者に毎年、高血圧のスクリーニングをすることと、健康管理の是正をおこなうことも有効です(Class Ⅰ, Level of Evidence A)

血圧を下げることの重要性を認識することが、その患者に特有の特殊な治療をこうりょするよりも、より重要(Class Ⅰ, Level of Evidence A)。

要は、

「とにかく、まずは、血圧!」

ということ。

●心房細動
※和訳が違う可能性があるので、原文もご参照ください。

CHA2DS2-VASc スコア2以上の非弁膜症性心房細動にワルファリンPT-INR 2-3(Level of Evidence A)、ダビガトラン(Level of Evidence B)、アピキサバン(Level of Evidence B)、リバロキサバン(Level of Evidence B)。
  • For patients with nonvalvular Afib and a CHA2DS2-VASc score of 2 or more, anticoagulant therapy is recommended with either warfarin (INR, 2.0-3.0) (Level of Evidence A), dabigatran (Level of Evidence B), apixaban (Level of Evidence B) and rivaroxaban (Level of Evidence B).
CHA2DS2-VASc スコア0の非弁膜症性心房細動に、抗血栓療法を行わないのは理にかなう(Class Ⅱa, Level of Evidence B)。
  • For patients with nonvalvular Afib and a CHA2DS2-VASc score of 0, it is reasonable to omit antithrombotic therapy (Class IIa, Level of Evidence B).
CHA2DS2-VASc スコア1の非弁膜症性心房細動に、抗血栓療法は考えてもよい。抗血小板薬とか抗凝固薬とか(Class Ⅱb, Level of Evidence C)
  • For patients with nonvalvular atrial fibrillation, a CHA2DS2-VASc score of 1, and acceptably low risk for hemorrhagic complication, no antithrombotic therapy, anticoagulant therapy, or aspirin therapy may be considered (Class IIb, Level of Evidence C).
以下は2011年に記載がなかったものです。

僧帽弁狭窄症で、洞調律でも以前に塞栓症を起こしていれば、抗凝固療法も(ClassⅠ, Level of Evidence B)。
  • The use of anticoagulation in patients with mitral stenosis and a prior embolic event, even in sinus rhythm (Class I, Level of Evidence B).

僧帽弁狭窄症と左房内血栓の患者に抗凝固療法(ClassⅠ, Level of Evidence B)。
  • The use of anticoagulation in patients with mitral stenosis and left atrial thrombus (Class I, Level of Evidence B).
心臓の症候性弾性線維腫、1cm以上の無症候性弾性線維腫は手術(ClassⅠ, Level of Evidence C)。
  • Surgical intervention is recommended for symptomatic fibroelastomas and for fibroelastomas that are >1 cm or appear mobile, even if asymptomatic (Class I, Level of Evidence C).
生体弁による大動脈弁、僧帽弁置換術後のアスピリンは考慮される(ClassⅡa, Level of Evidence C)。
  • Aspirin is reasonable after aortic or mitral valve replacement with a bioprosthesis (Class IIa, Level of Evidence C).
生体弁による大動脈弁、僧帽弁置換術後3カ月はワルファリンPT-INR 2-3(ClassⅡa, Level of Evidence C)。
  • It is reasonable to give warfarin to achieve an INR of 2.0-3.0 during the first 3 months after aortic or mitral valve replacement with a bioprosthesis (Class IIa, Level of Evidence C).
以前取り上げました

心房細動がない、以前に塞栓症を起こしていない心不全患者に、抗血小板薬や抗凝固薬は考慮される。(ClassⅡa, Level of Evidence A)。
  • Anticoagulants or antiplatelet agents are reasonable for patients with heart failure who do not have atrial fibrillation or a previous thromboembolic event (Class IIa, Level of Evidence A).
以前取り上げました

もう一つ、ちょっとどうかと思ったのが、以下の文章でした。
機械弁の形式がわからなかったので訳していません。

bi-leaflet機械弁やsingle-tilting-disk prosthesesの大動脈弁機械弁患者はワルファリンPT-INR 2-3と低用量アスピリン (Class I, Level of Evidence B)。

大動脈弁機械弁患者でリスクが有る人(心房細動、塞栓症の既往、心収縮が悪い、過凝固状態)はワルファリンPT-INR 2.5-3.5と低用量アスピリン(Class I, Level of Evidence B)。

僧帽弁機械弁はワルファリンPT-INR 2.5-3.5と低用量アスピリン (Class I, Level of Evidence B)。
  • Treatment with warfarin (target INR, 2.0-3.0) and low-dose aspirin after aortic valve replacement with bi-leaflet mechanical or current-generation, single-tilting-disk prostheses in patients with no risk factors (Class I, Level of Evidence B). Warfarin (target INR, 2.5-3.5) and low-dose aspirin are indicated in patients with mechanical aortic valve replacement and risk factors (Class I, Level of Evidence B). Warfarin (target INR, 2.5-3.5) and low-dose aspirin are indicated after mitral valve replacement with any mechanical valve (Class I, Level of Evidence B).
機械弁患者に抗凝固療法は当たり前。

抗血小板薬追加のところは引用文献がなかった(The addition of low-dose aspirin to warfarin is recommended for all patients with mechanical valves (ClassⅡa, Level of Evidence C))ので、今後勉強してみます。

ちなみに日本のガイドラインではクラスⅡbに記載があります
(適切な抗凝固療法中であっても明らかな血栓塞栓症を発症した患者に対するアスピリン、またはジピリダモールの併用。)

などなど。

他にも糖尿病管理、脂質管理のこと。無症候性内頸動脈狭窄や、片頭痛についても記載があったので、機会があったら取り上げてみます。

コメント

このブログの人気の投稿

NIHSSスコアの基本を再確認。

※付録 NIHSSスコア NIHSSスコアを作ったLyden先生がNIHSSスコアについて書いています。 NIHSSスコアを評価すると、ときどき、 「これ、何点にすべきですか?」 なんて、看護師や、研修医から聞かれて、 「まぁ、1点と2点の間って感じかな?」 と、ぼかしたり、 「思うとおりに評価していいよ。それが、大切だ!」 と、妙に「お前を信頼しているぜ」感を醸し出したりして、 その場を切り抜けていました。 それも、間違いだとは思いませんが、「もっとスッキリしたい」とみんな思っていたのだと思います。 で、このもやもや感を少しでも解消できるかと思って、 Lyden et al. Stroke. 2017;48:513-519 Using the National Institutes of Health Stroke Scale を読んでみましたが、 基本、NIHSSスコアが作られた歴史 的な話ばかりで、 スッキリせず。 期待がずれていたのは、こっちの問題です。 それでも、2つ再確認出来たことがありました。 NIHSSスコアを評価するときのルール すべての項目で、Score what you see, not what you think (診たものを評価する。検者が考えたものではない) すべての項目で、Score the first response, not the best response, except item 9 best language (最初の反応を評価する。ベストの反応ではない。でも、言語の評価はベストの反応で) すべての項目で、Do not coach (コーチしちゃだめ) 項目1aで、May be assessed casually while taking history (会話している間に評価可能でしょう) 項目2で、Only assess horizontal gaze (水平方向の眼球運動のみ評価) 項目5 and 6で、Count out loud and use your fingers to show the patient your count (声を出して数字をカウントし、患者の前で指を折ってカウントすることもす

3度めの正直。日本神経学会専門医合格。

第40回神経専門医試験に合格しました。 合格をいただきました。 3度めの正直なのです。 第38回☓、第39回☓、で今回。 試験結果が出るまで、 「3度目の正直」:「2度あることは3度ある」=1:5 ぐらいの心境でした。 2回不合格だったことは、少しだけ恥ずかしいですが、仕方ありません。 それが、現実ですし、逆に、得られたことも大きかったです。 神経診察を基本からやり直すと、より深く、それぞれの診察の意味と、的確な総合的診断に結びつくことを理解することが出来ました。 疾患についても勉強しなおしました。 あたり前ののことですが、でもそのあたり前(基本)が重要なんですね。 多くの神経内科医は知っていることなのでしょうけど。 今回も試験当日は20分ずつ2部屋で面接試験がありました。1つ目の部屋では、診察の実技です。 面接官の先生はiPadを見ながら、どれを質問しようか考えていらっしゃいました。 おそらく、神経診察の到達目標みたいなのがあって、そのうちの1つか、2つを受験者にさせているのだと思います。 「右麻痺があって、複視がある人の診察をしてください。あっ、意識障害も有るということで」 横に座っている若いお兄ちゃんを診察させていただくことになります。 いつも(3回目なので)思うのは、この普通の人を、病気の人としてイメージしながら診察することの難しさです。 診察しても、麻痺の症状をしてくれるわけではありません。「ものが二重に見える」と訴えてくれるわけではありません。もちろん、意識清明です。 脳神経の2番から順に診察をしていくと、省くことができず、そのまま脳神経診察終了。 ベッドに寝かせて、運動の診察をして、チラッと試験管をみても、何もおっしゃらないので、そのまま感覚、協調運動の診察。チラっと試験管をみても、何もおっしゃらないので、そのまま腱反射、病的反射の診察。そこで、試験管から一言。 「あのー、意識障害もありましたよね」 「あっ。」 かるく、混乱して、最後まで意識障害の診察をせずに終わってしまいました。 やってしまった~と思いつつも、意識の診察を「わかりますか〜」なんて、質問したところで、 「ま、それはいいので」「意識障害があれば、髄膜刺激徴候も必ず診ますよね」

足モミモミポンプ.あれ,意味あるの?

足の静脈にできる血栓.深部静脈血栓症. これが,流れて肺の血管に詰まると, 肺塞栓症. 命にかかわる病気です. 救急で入院すると,看護師に聞かれます. 「フットポンプつけますか?」 また,その書類ももろもろあります. これがフットポンプです. これで静脈血栓を予防します. これって,意味あるんですか? 意味あります.手術後の患者さんに. これまで20以上のランダム化比較試験があり,手術後にフットポンプをつけることは,明らかに静脈血栓の発生率を減らします. じゃぁ,他の状態では? 例えば・・・, 脳卒中. 麻痺があったら,静脈血栓は出来やすいです.静脈の流れが悪くなるから. これまで,急性期脳卒中における,この足モミモミフットポンプの有効性を調べたの研究は2つぐらいしかなくて,しかも有効性を見出すことができませんでした. でも,やっぱり,フットポンプつけています. 良さそうだから. ということで,それを調べている今回の論文. CLOTS (Clots in Legs Or sTockings after Stroke) trial Lancet 2013 CLOTS Trial Collaboratrion. Effectiveness of intermittent pneumatic compression in reduction of risk of deep vein thrombosis in patients who have had a stroke (CLOTS 3): a multicentre randomised controlled trial 多施設ランダム化比較試験です. 対象患者: 急性期脳卒中 .トイレまで自分で歩いていけない人. インターネット登録すると,足モミモミフットポンプグループと,しないグループに分けられます. この2つのグループで Primary outcome: 30日以内の深部静脈血栓(大腿,膝窩静脈) Secondary outcome: 30日以内の死亡,深部静脈血栓(大腿,膝窩,下腿の静脈),肺塞栓,足モミモミフットポンプの合併症(傷,転倒) 結果 Primary outcome 足モミモ