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3月, 2019の投稿を表示しています

発症時間が不明でもMRI画像次第でtPA静注療法が可能に。

tPA静注療法は脳梗塞発症から4.5時間以内の患者に施行できる点滴治療です。 脳梗塞急性期治療だけでなく、脳梗塞患者の治療・ケア全体においても、大きな転換点となった治療です。 その適応が拡大というニュース。 脳卒中学会から、 静注血栓溶解(rt-PA)療法適正使用指針 第三版が発表されました。 日本脳卒中学会HPより その中で、 発症時間不明でも、画像次第では、tPA静注療法を行うことが検討可能になりました。 具体的に、どういうことかと言うと、 ------------------------------------ 例: 前日の21時に普段どおり就寝。 翌朝6時起床時から、すでに右麻痺あり。 (21時から6時の間に発症しているが、発症時間を断定することは不可能。つまり、「発症時間不明」) 8時に救急外来に来院。 8時15分、頭部MRI撮影。拡散強調画像(DWI)で高信号が出現しているが、FLAIRではまだ高信号になっていない。 (DWI +/FLAIR -) tPA静注療法施行を検討可能! という流れ。 ------------------------------------- 今までは、発症時間不明のときは、tPA静注療法が施行できませんでした。 しかし2018年に、WAKE-UP trial WAKE-UP trialのメインの結果。発症時間不明、発見から4.5時間以内の 患者を二重盲検でtPA群とplacebo群に分け、3ヶ月後予後を評価 tPA群がPlacebo群より3ヶ月後予後が良好、という結果に。 MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset Thomalla et al. NEJM 2018. からポジティブな結果が出て、世界各地で進んでいた同様の研究も、その結果をもとに、研究を中止したほどでした。 日本では、対照群はPlaceboではなかったものの、同様のTHAWS trialが国立循環器病研究センター中心に行われており、2018年7月に早期終了の運びとなりました。 そして、2019年3月21日から23日に開催された脳卒中学会を機に、tPA静注療法の拡大が発表されたというわ

九州で脳卒中を診る内科医は悩みながら日々診療してる

毎年、神経学会九州地方会が福岡で行われる3月に、 脳卒中診療を行う内科医があつまって、研究会を行っています。 今年は、九州の脳卒中診療の現状と課題を各県の先生方に話していただき、情報共有を行う形をとりました。 1. 各県とも、脳卒中診療が充実していない地域がある。 -- 県庁所在地から離れている、山間部(必然的に県境が多い)などでその傾向あり。 そこで発生した急性期脳卒中をどう診療するか。 ヘリコプター? 確かに、一つの方法だが、夜間や天候不良は運用できない。 そんなときは仕方ない、陸路で運ぶしかない。 2. 現状では、九州すべての地域で、均てん化された(どこの地域でも、同質の)脳卒中診療を提供できているとは到底言えない。 -- それならば集約化。 しかし、搬送手段の問題が生じる。 地域での足並みの揃い具合の問題もあり、各県ともに最も悩んでいる問題の一つ。 熊本や鹿児島は、組織的に、そして、現場の先生の継続的な努力で、現状の把握に取り組んでいました。 詰まった脳血管を再開通させるカテーテル治療。 集約化だけでは、カバーできない現実に、均てん化の要素も取り入れようとしている現状が見えてきました。 日本全国のデータ( RESCUE-Japan project )では、各県の脳血管内カテーテル治療の充実度の差を明らかにしたデータが提示されています。 しかし、各県の"中"での地域格差は示されていません。 九州から、各県内の脳卒中診療充実度の地域格差を出して、さらに地域に即した提言を行っていき、改善していくことは、住民の安心につながるはずです。 3. 脳卒中診療を行う内科医が、順調に増えているか、というとそうではない。これは各県で格差あり。 一部の県では危機的な状況にあります。 脳外科の先生方が頑張っているわけですが、脳外科の先生には手術を頑張ってほしい、と多くの人が思っていると思います。 脳梗塞の多くは手術が不要です。脳出血も手術になることは10−20%程度でしょう。 脳卒中診療は歴史的に脳神経外科の先生方が頑張ってきた歴史の上に成り立っています。 そろそろ内科、がんばらんばでしょう。 3. 基礎研究を脳卒中の領域で行っている内科医が限られている。 -- これは、脳卒中診療の忙しさが