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アジア人が多く含まれた脳出血急性期の研究。厳格降圧のエビデンスは出ず。

脳出血超急性期(発症4.5時間以内)患者の降圧療法
通常降圧 (140-179mmHg) vs 厳格降圧 (110-139mmHg)
500例 vs 500例

有益性のなさから早期終了。

両群で有効性に差がなかった。。。。

◆Trial design
ランダム化、多施設、オープンラベル。
降圧療法は、発症から4.5時間以内に治療が開始、24時間までは継続
特発性、テント上

◆対象:
発症4.5時間以内(当初は3時間以内)
18歳以上
Glasgow Coma Scale >= 5
血腫60cc以下。

◆除外:
ランダム化する前に140mmHg以下に下がった症例

◆降圧剤
ファーストライン:ニカルジピン静注
セカンドライン:Labetalol (未承認ならばジルチアゼム、Urapidil)

◆画像
来院時と24時間後単純CT(場所、容積、脳室内血腫の有無)

◆評価
1か月後電話。3か月後外来。
3か月後mRS 4 to 6
European Wuality of Life-5 Dimensions (EQ-5D) questionnaire

※safety outcome
GCS2以上またはNIHSS score 4以上の悪化。


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結果
アジア人:562人(56.2%)
日本人もたくさん登録されています。

(長崎人はおそらくゼロですが、たぶん、この結果を長崎人に当てはめてもいいでしょう。)

両群間で(通常降圧 vs 厳格降圧)、

来院時の
血圧(200mmHgぐらい)
重症度(NIHSS score 11ぐらい)
脳室内出血の有無(25%ぐらい)

など、差はなかった。

結果のまとめ

差なし。


厳格降圧
N=500
通常降圧
N=500
RR
(95%CI)
P value

mRS 4 to 6
186/481 
(38.7%)
181/480 
(37.7%)
1.04
(0.85-1.27)
0.72

血腫増大
85/450
(18.9%)
104/426
(24.4)
0.78
(0.58-1.03)
0.08

症状悪化
55
(11.0%)
40
(8.0%)
1.39
(0.92-2.09)
0.11

重篤な合併症
128
(25.6%)
100
(20.0%)
1.30
(1.00-1.69)
0.05

低血圧
6
(1.2%)
3
(0.6%)
1.96
(0.49-7.87)
0.34

死亡
33
(6.6%)
34
(6.8%)
0.99
(0.61-1.60)
0.97

7日以内の
腎合併症
9%
4%

0.002

※重篤なな合併症はたくさんありすぎて、挙げられません。
こちらをどうぞSupplementary material

あまり重要度高くないと思います。

Neurological decompensation (反応がない状態。重度の遷延性意識障害)が18例(厳格降圧) vs 9例(通常降圧)でした。

また、腎合併症も30日後には5例 vs 4例で、差がなくなっていました。
深く考えすぎる必要はないかもしれません。わかりません。

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降圧は重要ですが、厳格すぎる必要はないかもしれません。

しかし、一部の患者さんは降圧が重要かもしれません。
例えば、spot sign陽性の患者など。スポットライトはNo thanks

「脳出血の急性期の降圧治療は適当でいいよ。」
ということにはならない、というか、そんな考えは臨床医的にアウトな感じです。

何事も、考えることやめたらアウトです。

今後も、
「何が、この患者さんにとって良いことか?」
を考え続けないといけないと思います。

コメント

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