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新専門医制度と介護報酬引き下げと。

先日、大学が、厚生労働省から講師を招いて、新専門医制度の概要について講演を開催し、聴講して参りました。

専門医:その診療科において高度な知識、技量、経験を持つ医師。

各学会が認定しているのが現状ですが、

今後は、日本専門医機構が一括して管理していく、

ということになるそうです。

講演の内容は、

おそらく、厚労省が準備したスライドなので、しかたがないのでしょうが、

字が小さくて、ほとんど見えない。

というのが最初に感じたこと。

お上が考えることは、狡猾であると、ドラマによって刷り込まれている私には、

「わざと、アタマが悪い人には理解できんようにしとるとじゃなかろうか?」

と疑ったり、疑わなかったり。

それはいいとして、

平成32年から新専門医の認定が始まるということを初めて知りました。

募集は平成28年から。

・・・・・・・・

その前に、

介護報酬引き下げについて。

最近ニュースで見ました。

細かいことは、わかりませんが、大きな目標は、

介護、看取りを在宅へ

それによる医療費(福祉費でいいのか)削減。

これが目標らしいです。

患者さんを自宅に帰す。
入院患者を減らす。
医療費削減。

療養型病床群が将来廃止になるのも、
これまで療養型病床群施設に入院していた、
純粋に医療だけで入院していたわけでない(ちょっと最近食欲が無いから、体調が悪いから、入院など)、
患者さんを自宅でケアすることが目標だと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

新専門医制度の目標は、

結局のところ、

医師の偏在をなくす、診療科における医師数の偏りをなくす。

ことのように、私は聞き取りました(もらったプリントにも書いていました)。

なぜ新専門医制度により医師の偏在がなくなると考えているかというと、

「総合診療専門医」

なるものを新しく作り、その先生たちが地方に散らばるから。

総合診療専門医とは、家庭医とかGeneral practitionerとか言ったりします。

いろいろな病気を持っている一人の患者さんを、広い知識を持っている総合診療専門医が診療する。

介護保険報酬引き下げ、療養型病床消失にともなって、自宅に帰った患者さんを総合診療専門医が診療する。

と、こういうこと。でしょう。

確かに必要なシステムだと私も思います。

私が考える問題点は2つ。

本当に、総合診療専門医がどどーんと増えるか。

本当に、総合診療専門医が認定されたら、地方で働いてくれるのか?

実はアメリカでは総合診療専門医general practitionerのなり手が減ってきています。
総合内科医.今,アメリカでは・・・.

総合診療専門医が必要なことは事実だと思います。

ただ、 先を行っているアメリカで、総合診療専門医(general physician)が減りつつある状況ですから、日本も同様に、最初は総合診療専門医が増えても、そのうち減ってくる可能性があると思います。

総合診療専門医。

必要ですが、本当に担い手となる若者に魅力あるものになるのでしょうか。

その魅力を伝える現在の総合診療医が多くはありません。

新専門医による総合診療医は
「広く浅く」知識、技術を広げていく。

わけですけど、

私、個人的には、「広く浅く」に魅力を感じません。

「深く、ちょっと広く」

が、いい塩梅と思っています。

最初は、専門を志し、ある程度の専門性を有したところで、方向を少し転換し、総合診療専門医の取得を目指す。

こういうシステムが出来れば、総合診療専門医の数は増え、さらにもともと地域で働いている医師ならば、そこからわざわざリスクを背負って、都会に出ることはないような気がします。

総合診療専門医が増え、

その医師が地域で働く。


現実的には、われわれ、専門医にとって、途中から総合診療専門医になる医師が増えると、局地的、短期的には、困難がある(途中でその専門グループから抜けちゃう)かもしれませんが、
長期的には、地域に専門性のある総合診療専門医がいることによって、外来全般やそこまで困難でない処置を、総合病院でする必要がなくなるというメリットも有るような気がします。


とにかく、日本の医療のターニングポイント感を実感する、今日このごろです。

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