スキップしてメイン コンテンツに移動

失語症患者さんの涙

失語症とは,「頭に浮かんだ言葉話せない,口までこない」という

"output"

の問題だけではなく,

「言葉や状況を理解できない」という

"input"

の問題もあります.

その程度は,人それぞれで,

output,input どちらもまったくだめな人もいれば,

inputはかなり良いが,少しダメで,outputはまったくだめ,

など,まちまちです.

60歳台の男性

脳梗塞で失語症と右麻痺があります.

当初は,"input"も"output"もどちらもまったくだめである「全失語」の状態でしたが,次第に改善し,"input"は6-7割までに改善していました.しかし,"output"は1割程度の改善.

会話の理解は,その場の雰囲気もあり,ある程度できるが,言葉を発することはほとんどできない状態.

難しい話は理解できないぐらい.

普段,私がベッドサイドに行っても,あまりコミュニケーションはできず,表情もほとんど変わりません.

脳梗塞の原因検索の途中で,肺癌らしきものが見つかりました.

リンパ節転移もありそうです.

家族には説明しました.

本人には,確定診断できておらず,詳しく説明すると理解が難しいだろうし,混乱するだけだろうから,「肺の病気を調べている」とだけ言っていました.

ただ,もともとヘビースモーカーなので,もとから癌のリスクは知っていて,現在もどうも理解しているようだ,とは家族の意見でした.


ある日,ベッドサイドにあるお孫さんの写真について,会話しました.

めちゃくちゃかわいい.二重がうらやましい

なんて,一重'sである私の家系からみたうらやまし話をしました.

ふふふっ,と相好を崩していらっしゃいました.


その感情の表出の後に,流涙.


何を思われたのでしょうか.

そんなことを直接ずけずけ聞けるほど,礼儀をわきまえていないことはないですし,解脱していないので,言葉なしに理解もできず,よくわかりませんでした.


どういうことが頭に浮かんだのでしょうか.

自分は脳梗塞で,もしかしたら癌で,孫がいて・・・・,そういう「生」について,考えたのでしょうか.

わかりません.

ときどき,思いませんか?

なんで,仕事してんだろう?

この仕事は私にとって,家族にとって,人にとって,意味があるのか?

なんで生きているのか?いつか死んでも,私の歴史は地球とか宇宙とかを中心に考えると,埃のかすのかすぐらいのもの.

言っておきますが,病んでないですよ.

そんなもん簡単に考えると,

生きているから,生きているし,

仕事があるから,生きてく上で金が必要だから,仕事をしてる.


ただ,人は脳みそが発達しちゃってるから,無駄なことを考えちゃうんです.しちゃうんです.

せっかく生きているから,よりよく生きよう.

せっかく仕事しているんだから,何か達成したい,たくさん稼ぎたい,多くの人に賞賛されたい.


で,医療を生業とするうえでも悩んでしまいます.

いや,悩むというか,考える,が近い.

人の病気を診る医師という仕事は意味があるのか?と.



病気になった人に寄り添うことが中心の「看護」は重要な気がします.

病んだ人は弱ってますから,支えが必要です.

ただ,人間は病気になる生き物です.病気で死ぬことが多い生き物です.他の生物とは違います.

病気になることで自然界から淘汰されています.

それを「治す」とか,「予防する」とかって,意味あるんだろうか.

所詮,人間は死ぬので,寿命を多少長くしたって,そのー,ものすごーく引いて考えると,あんまり意味ないんじゃないか.

と.

知ってます.人は病気が怖いです.その病気の予防,とか,治す,ということは求められています.

「ひと」から.

他の動物からは求められているのでしょうか?

地球からは求められているのでしょうか?


ただ,人間が他の生物と同じように繰り返すことがあります.

子孫を残すということ.


失語症患者さんの涙.

彼が何をかんがえたのかわかりません.失語の影響で,どれくらい,考えられているのかわかりません.





文章にすると,また難解な感じになりますが,時々こんなこと考えるのです.

いっときますが,宗教家でも,哲学者でもないので,それこたえきれません.いつも.

でも,まあ,よくわからんねぇ.

と思って,また仕事しています.医療してます.それでいいのだと思います.


寒くなるとおセンチになるから.




コメント

  1. おセンチになるね 寒くなると。
    年とると涙もろくもなるし。

    状況を想像してたらこっちが涙でそうに。

    深いねぇ。
    治してる・・・よりは、治す力を引き出す手助けをしているのでしょうかね。医療者って。

    いろいろブログも読むけど、
    なかなか会わないね、こんな目線のお医者さん。
    やっぱ、たてへいの前世は武者修行中のミャンマーの僧侶かもねぇ(笑)

    返信削除
    返信
    1. 医療者って,人の生き死にに直面する仕事なので,大概の医師が,なんかいろいろ考えていると思いますよ.
      こうやって,表に出さないだけ.

      表に出す私,露出狂の類.

      ではない.

      「水島ぁ!一緒に帰ろう」ってよく言われてた.

      コメントありがとうございます.

      削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

NIHSSスコアの基本を再確認。

※付録 NIHSSスコア NIHSSスコアを作ったLyden先生がNIHSSスコアについて書いています。 NIHSSスコアを評価すると、ときどき、 「これ、何点にすべきですか?」 なんて、看護師や、研修医から聞かれて、 「まぁ、1点と2点の間って感じかな?」 と、ぼかしたり、 「思うとおりに評価していいよ。それが、大切だ!」 と、妙に「お前を信頼しているぜ」感を醸し出したりして、 その場を切り抜けていました。 それも、間違いだとは思いませんが、「もっとスッキリしたい」とみんな思っていたのだと思います。 で、このもやもや感を少しでも解消できるかと思って、 Lyden et al. Stroke. 2017;48:513-519 Using the National Institutes of Health Stroke Scale を読んでみましたが、 基本、NIHSSスコアが作られた歴史 的な話ばかりで、 スッキリせず。 期待がずれていたのは、こっちの問題です。 それでも、2つ再確認出来たことがありました。 NIHSSスコアを評価するときのルール すべての項目で、Score what you see, not what you think (診たものを評価する。検者が考えたものではない) すべての項目で、Score the first response, not the best response, except item 9 best language (最初の反応を評価する。ベストの反応ではない。でも、言語の評価はベストの反応で) すべての項目で、Do not coach (コーチしちゃだめ) 項目1aで、May be assessed casually while taking history (会話している間に評価可能でしょう) 項目2で、Only assess horizontal gaze (水平方向の眼球運動のみ評価) 項目5 and 6で、Count out loud and use your fingers to show the patient your count (声を出して数字をカウントし、患者の前で指を折ってカウントすることもす...

3度めの正直。日本神経学会専門医合格。

第40回神経専門医試験に合格しました。 合格をいただきました。 3度めの正直なのです。 第38回☓、第39回☓、で今回。 試験結果が出るまで、 「3度目の正直」:「2度あることは3度ある」=1:5 ぐらいの心境でした。 2回不合格だったことは、少しだけ恥ずかしいですが、仕方ありません。 それが、現実ですし、逆に、得られたことも大きかったです。 神経診察を基本からやり直すと、より深く、それぞれの診察の意味と、的確な総合的診断に結びつくことを理解することが出来ました。 疾患についても勉強しなおしました。 あたり前ののことですが、でもそのあたり前(基本)が重要なんですね。 多くの神経内科医は知っていることなのでしょうけど。 今回も試験当日は20分ずつ2部屋で面接試験がありました。1つ目の部屋では、診察の実技です。 面接官の先生はiPadを見ながら、どれを質問しようか考えていらっしゃいました。 おそらく、神経診察の到達目標みたいなのがあって、そのうちの1つか、2つを受験者にさせているのだと思います。 「右麻痺があって、複視がある人の診察をしてください。あっ、意識障害も有るということで」 横に座っている若いお兄ちゃんを診察させていただくことになります。 いつも(3回目なので)思うのは、この普通の人を、病気の人としてイメージしながら診察することの難しさです。 診察しても、麻痺の症状をしてくれるわけではありません。「ものが二重に見える」と訴えてくれるわけではありません。もちろん、意識清明です。 脳神経の2番から順に診察をしていくと、省くことができず、そのまま脳神経診察終了。 ベッドに寝かせて、運動の診察をして、チラッと試験管をみても、何もおっしゃらないので、そのまま感覚、協調運動の診察。チラっと試験管をみても、何もおっしゃらないので、そのまま腱反射、病的反射の診察。そこで、試験管から一言。 「あのー、意識障害もありましたよね」 「あっ。」 かるく、混乱して、最後まで意識障害の診察をせずに終わってしまいました。 やってしまった~と思いつつも、意識の診察を「わかりますか〜」なんて、質問したところで、 「ま、それはいいので」「意識障害があれば、髄膜刺激徴候も必ず診ますよね」 ...

ヘディングってたしかにガツーンて来る。そして、神経変性疾患になる、かも。

中学、高校とサッカーしてました。 ヘディングが一応武器でした。 背高い方だったし。 ヘディングでボールを跳ね返すとき、 結構「ガツーン」と来ます。 しばらくサッカーしてなくて、久しぶりにサッカーして、そのときになんとはなしにヘディングしたときの衝撃は びびります。 こんなことしてたんだ、俺。 って思うほどです。 私、今、幸せにも健康です。 将来的にも体的には元気だと思います。 でも、頭的には認知症になるかもしれない。 という論文。 The New England Journal of Medicine 元プロサッカー選手の神経変性疾患による死亡率が高い。 スコットランドの元プロサッカー選手7,676人と一般住民23,028人比較 後ろ向きコホート研究 一次エンドポイント:神経変性疾患死亡率 ※神経変性疾患:  原因が明らかでない認知症  アルツハイマー型認知症  アルツハイマー型以外の認知症  運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症など)  パーキンソン病 結論: 中央値18年の追跡で、いわゆる死亡診断書を見直してチェックしています。 すべての死亡は、 元プロサッカー選手 15.4%<一般住民 16.5% プロサッカー選手で、体は健康。 だから、一般人と比べて、70歳までの死亡は少ない。 でも、70歳を超えると、元プロサッカー選手の死亡率が高くなる。 なんでだろう。 死亡診断書に記載された直接死因は、 血管障害による死亡や肺癌死が少ない。 でも、神経変性疾患による死亡は高い。 ここらへんが関係ありそう。 (※ちなみに脳卒中死は差がありませんでした) 死亡診断書に記載された直接死因と、死亡に関連した原因をあわせてみると以下の表のとおりでした。 なんでこんな結果になったのか。 論文内では直接的には表現されていないけど、 次のサブ解析で、その意図は明らか。 ゴールキーパー vs フィールドプレイヤー ヘディングの頻度が大きく違う。 死亡は差はなかったが、 認知症薬処方率が、フィールドプレイヤーで多かった( OR:0.41、9...