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肺の病気を脳の医者が診断する

マニアックな話.

肺動静脈瘻という病気の診断は,脳の検査を行うことでなされることがあります.

肺動静脈瘻とは,肺の中で静脈と動脈がある程度の太さのままでくっついている病気です.ふつうは毛細血管になっているところで静脈と動脈がくっつきます.

肺動静脈瘻は,脳梗塞の一因になることがあります.

もし,足などの静脈に血栓ができたとします.それが,心臓まで流れて,心臓から肺に行きます.その血栓が肺の大きな血管に詰まると,急激に呼吸ができづらくなります.

肺塞栓症です.

しかし,小さな血栓だと毛細血管までいって,そこでトラップされて事なきを得ます.

もし肺動静脈瘻があったら.

小さな血の塊が肺の静脈から動脈の流れに乗っかって,脳などの臓器に流れてつまらせることがあります.

大変なことです.

診断
レントゲンでわかりにくいことがあります.




この経頭蓋ドプラという機会を使って,脳をみながら,肺動静脈瘻の診断ができます.100発100中です.だれでも簡単に診断できます.

その様子は,ここでうまくお示しできません.

すいません.

さて,本日はそのようにして診断した患者さんを,放射線科の先生にお願いして,コイル塞栓をしていただいております.



治療後,酸素状態が如実に改善しました.

明日,経食道心エコーをして,肺動静脈瘻の残存と心臓内シャントの評価を行う予定です.

肺動静脈瘻の治療に限らず,脳卒中診療は多業種,他の科の先生方の協力がないと成り立たちません.

チーム医療の実践.

チーム医療を円滑に行っていくことが,脳卒中治療成功の鍵です.

コメント

  1. なるほど。。。verytimely!

    つい先日、この疾患は呼吸器でなく何で脳外科か脳卒中医が診察するの?
    と質問されたばかりでした。
    今まで肺動静脈廔の患者さんには出会ったことがありませんでした。硬膜動静脈廔やCCFなら数回。
    こんなかな?って感じで答えてしまったので
    お勉強しなおし中でした。
    今回のわかりやすい説明、パクらせていただきます。m(__)m

    パクってなんぼ!ありがとうございます。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます.

      脳梗塞とか脳膿瘍とかの原因になります.
      脳膿瘍の患者は診たことありませんが,教科書には載っています.なんで膿瘍を形成するのかは知りません.

      誰か教えてください.

      質問があったらいつでもどうぞ.

      削除
    2. ありがとうございます。
      時間あったらよろしくデス。
      質問者さんにもちゃんとリベンジしときます(^_^;)

      今日も1日おつかれさまでした。

      削除
    3. おつかれさまでした.

      削除

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